■ 神奈川新英研11月例会
2015年11月
2015年11月21日(土) 大倉山記念館 第4集会室
●近況,最近取り組んでいること
- 発問の工夫
- 授業内での生徒とのコミュニケーションのとりかた
●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど
- 生徒が眠くならない、興味が持てる授業の行い方
●高校実践報告:「授業実践8年目現在大切にしていること」
青木智行さん(神奈川県立菅高校)
私事ですが、会報担当・和田@京都は、例会に参加したのは数年ぶり。2008~2010年まで同僚だった青木さんの実践報告を伺うことが出来たのは大きな歓びでした。教員になられて8年目の青木さんが自己研修を続けてこられたお話は大変興味深かったです。これからのますますのご活躍を楽しみにしています。
1. はじめに
- レポーターから:◎リズムと発音指導(ぐるぐると歌指導)、学習プロセス(Input-Intake-Output)、埼玉の長谷川博之先生から学んだこと
- 青木さん:趣味はウクレレ、特技はソフトテニス。短期留学はカナダのトロント。
- 興味・関心・学んできたこと
- 1) NLP(神経言語プログラミング:NLPはアメリカ発祥で実践的な心理学。心理的に起こる身体の変化を扱うもの。ニューコードNLPを学んだ。自分の拠り所になるものが欲しかった。前任校で大変だった。授業が成立せず、教室に行きたくない。自信をつけて教室に行きたい。NLPで学んだのは「自分の中で自信のある体験を思い出せるように練習しておき、手を触るなどのジェスチャーを決めて練習する。」という手法。青木さんは得意のソフトテニスで活躍したときのことを思い出すようにしたそうです。
- 2) ALMACREATIONSの思考ツール:マインドマップ(心で思うことを目に見えるように画用紙などに樹形図で提示する手法。授業案の流れをマインドマップで作ったり、生徒にクラス目標を描かせたり、緑の羽根募金・エコキャップ運動などの意義をまとめさせたりしている)、フォトリーディング(読書術)、フューチャーマッピング(将来の計画)、エンパシーライティング(共感をキーワードにして文を作る→履歴書、企画書、ダイレクトメールなど)
- 3) Language Learning Bootcamp:99日間コーチについてもらう。英語の授業の相談に乗ってもらったりした。最初はネイティブと同じレベルになろうという気持ちが抜けなかったが、最後は自分の劣等感がなくなった。最終日に45分間英語で話し続けるのが課題で、その時の気持ちは「ストレスがなくなった」というもので、自信を持ってコミュニケーションがとれるようになった。
- 4) Landmark Forum:Language Learning Bootcampのコーチが勧めてくれた。人生が変わった! 自分の持てる力が100%、120%出せるようになった。責任を持って取り組めるようになった。素の自分が出せるようになった。
- 5) TOSSの向山さんの門下の長谷川博之さんの本『生徒に「私はできる! 」と思わせる超・積極的指導法』。「誰でも訓練すれば質の高い授業ができる。」
- 6) 靜哲人『英語授業の心・技・体』に「ぐるぐる」(円になっている生徒の中に入ってぐるぐる周りながら教員がthやf/vの発音などをチェックする)が載っている。
2. 授業
★いま大切にしていること5つ
- 学習プロセスを組み立てる:input(単語、リズム、文法、本文理解)→intake(音読、ぐるぐる、音読筆写)→output(英作文、retelling、skit)
- 発問を工夫し、理解を深める:理解(事実、文章の論理構成、登場人物、心情)→思考(推測、主観的意見)
- 発音・リズムにもこだわる:音楽(warm-up、発音リズムの練習)、ぐるぐる(一人一人チェックし、記憶に定着させる)
- 自分の言葉として英語を使わせる:EIYOW活動(Express In Your Own Words)、Please tell us more!(課題分1文+α)
- 生徒指導、授業で育てる、自己肯定感を育てる:
「ぐるぐる」:「マル!」と直接教員が成果を褒めると、生徒は嬉しくて叫んだりジャンプしたり、おとなしい子は拳を握りしめたり…。出来なかった子は舌打ちしたり、座り込んだりする。一周まわって、その間に練習して本気で取り組んで「マル!」と言われて飛び上がる!
「グラウンドルール」:生徒が授業ルールを作る。生徒からことばを引き出して責任を持たせる。コミットさせる。
「ノート発言」:全員に書かせてから、個別に答えさせる。
3. 質疑応答
- 青木さん:関係詞の継続用法は説明せずに使わせてみた。She went to Nara, where she happened to see Mr. Green.
- 青木さん:現在完了を教えるときに単文になりがち。文脈のないインプットをしていると神奈川大学の教員免許講習会で指摘を受けた。
- Q:「ぐるぐる」(円になっている生徒の中に入ってぐるぐる周りながら教員がthやf/vの発音などをチェックする)について詳しく。
A:ぐるぐるについては賛否がある。小中高大で出来ると靜哲人さんが言われている。教員の課題設定次第。生徒は順番を待っている間に練習している。跳び箱や鉄棒の練習をしているイメージ。靜哲人さんの著書『英語授業の心・技・愛』(2014)ではクラスを半分に分け、半分は別課題をさせておくという方法が紹介されている。 - Q:ぐるぐるを否定する生徒の意見を教えて欲しい。
A:「発音できない」「文が覚えられない」「立っていて疲れる」「時間設定が長いor短い」など。不得意なことをさせられて嫌になってしまう生徒がいるので、warm-up(in this wayなどの短いフレーズ練習)しておいてから取り組ませている。
●参加者の感想
- レポーターの感想:英語を通して生徒に何を考えてもらうか、授業を通して自分ができる役割という面を改めて考える機会となりました。生徒のアンケート結果に対しての今後の対応を皆さんからアドバイスをいただき助かりました。生徒と直接話をしてみようと思います。また、小先生班活動等、工夫できるか考えてみます。絵を3つ描いて、story tellingというのもいいですね。
- 先取の姿勢がすばらしい。「ぐるぐる」を実践し、高校教員でありながら小・中が中心のTOSSにまでアンテナを張るとは!「追実践してもすぐに飽きて、また別のことにトライしている自分がいる」とやや自嘲気味に言っていましたが、それでいいと思います。追実践して飽きた後に自分の中に消えずに残っているものこそが糧になるのかと考えるからです。そうしたものが積み上がり、組み合わさり、やがて化学変化を起こしたとき、初めて自分独自の実践が生まれるのではないでしょうか。
- 「グランドルール」で生徒が授業ルールを作って、自分のことばに責任を持たせるというところが、とても良いと思いました。まねしたいです。
- 「授業での活動を通して生徒の自己肯定感を育てる=最大の生徒指導」だと最近とみに実感します。
- 会報担当・和田から:靜さんの本で学ばれた「ぐるぐる」の成果として、生徒がthやf/vの発音など舌や唇を意識して発音しているということで、青木さんの丁寧な授業作りが形になっていると思いました。さらに生徒が自己肯定感を高めているというのが素晴らしい!
- 1)関係詞の非制限用法の説明ですが、先行詞の質の違いを提示することをお薦めします。制限用法の先行詞は「どんな?どの?が気になる」、非制限用法の先行詞は「どんな?どの?が気にならない=特定できる=多くの場合は固有名詞(人名/地名)、所有格のついている名詞my brotherなど」と対比説明します。
- 2)不自然な英文はネイティブの先生と協力してリライトしてほしい。
These clever ideas support their success. Why don't you look for some yourself?という本文があったが、someと前文のthese clever ideasのつながりが遠い気がした。
We can attribute their success to these clever ideas. Why don't you look for some yourself?のようにするか、Their success can be attributed to these clever ideas. Why don't you look for some yourself?としたらどうかと思った。
私の語感が合っているかはわからないが、こういうようなことを考えながら、自然な英文の流れを大切にして欲しい。
- 1)関係詞の非制限用法の説明ですが、先行詞の質の違いを提示することをお薦めします。制限用法の先行詞は「どんな?どの?が気になる」、非制限用法の先行詞は「どんな?どの?が気にならない=特定できる=多くの場合は固有名詞(人名/地名)、所有格のついている名詞my brotherなど」と対比説明します。
●中学実践報告:「『なるほど!』と読みとる学習を良い教材で
―Gorillas and Humansを中心に―」
竹島さち子さん(大妻中学高等学校)
1. はじめに
- レポーターから:勤務校では中2、中3で週1回、英語読解の時間があります。使用している教科書ではない、他の中学や高1の教科書などを元に教材プリントを作成しています。内容が良いので、生徒は考え、感じながら英語を読むことができます。班で学び合う場面を見たり、生徒の感想をクラスでシェアしたりするのも楽しい時間です。今、特に扱いたい教材である Gorillas and Humans を中心に紹介したいと思います。
2. 授業
- 「読解」授業
・ 週4時間の英語授業を担当する教員とは別に、週1時間「読解」の授業を受け持つ教員がいて、何をやるかは学年裁量になっているそうです。発表者自身は現在、中学3年生を対象にプリント教材を持ち込み、2時間扱いで進めているとのことです。 - 「読解」の基本的な進め方
〈1時間目〉
- ①辞書で調べずに、友だちや先生にも聞かず、分からないところは推測しながら自分一人でともかく最後まで読み進める。
- ②その後、机を合わせ、3、4人の班になり、「ああだ、こうだ」言いながら内容を確認し合う。先生に聞くのもOK。
〈2時間目〉- ①全体で内容や読み方を確認しながら、設問プリントの答えを確認し合う。また、よく使う単語や語句、文法の確認もする。
- ②最後にクラス全体で、考えたことや感じたことを共有する時間を持つ。
- 発表者からの問い
- 英語の授業での「読みとり」の必要性、実施方法
- 今、必要な教材とは?
- いわゆる英語力がこのような読解授業でも養われるか。
- Gorillas and Humansを読んだ生徒の感想
- ゴリラが胸を叩くのは相手を威嚇するためとばかり思っていたけど、コミュニケーションを取るためでもあると知って驚きました。
- I learned that gorillas have a smart way to stop fighting.
- We should use more peaceful means and our world will be very peaceful without wars and acts of terrorism.
- It is wrong to control others with force because frustration remains and another problem may happen.
- Smaller gorillas are important existence.
- 子どもゴリラや雌ゴリラがけんかをしている強いゴリラの近くに行って、じっと見つめることでけんかを止めたりと、とっても平和でやさしい動物だと思いました。
- We can learn the importance of ties from them. We humans often use dirty ways. For example, war, bombs, etc. They are not good ways. But gorillas don't use those ways. They always have pure hearts. That's the most important for us.
●参加者の感想
- 授業の種類が異なっていることもあり、工夫がされたアクティビティーなどが多く見られ、とても参考になりました。それに対する生徒の心情も聞くことができて良かったです。
- 「教材のチカラ」ですよね。優れたリーディング題材を集めたアーカイブスがあればいいのになと思います。
- 協同学習の中で多読的な活動を行う楽しさ、効果を実証していただき、大変参考になりました。生徒の英語力の高さにも関心しました。近いうちに自分もチャレンジしてみたいと思います。先生の発表スタイルもリラックスできて受けやすいと感じました。ありがとうございました。
- 多分野に渡っての読み物教材を取り入れて、生徒がゆったりと仲間と協同で読み進めていくスタイルがいいなと思いました。竹島さんの読みとりの実践報告を伺っていつも関心するのが、発問の視点が工夫されていることです。やはり、先生の感性の豊かさがにじみ出ていると思いました。また丁寧に生徒にアンケートをとって、次に活かそうとしている姿 勢も素晴らしいです。なかなか公立の中学校の週4時間では難しいところもありますが、教科書の中の読み物教材も今回の扱い方を参考に工夫できると思いました。
- うーん、面白い。個人読みの後、3、4人組で内容を確認し合うときに生徒が交わす言葉が最高!「ゴリラってどう数える?1匹?1頭?」「チェストビーティングってドラミングのこと?」「うほうほ?胸連打?」「フラストレーションを思い 出す?」「もれなく箇条書きにしなさいってあるけど、もれなくって何?」「closerって抑え投手?」などなど。竹島さんの読解の授業を初めて知ったのは2010年の大分大会だったけど、益々実践に深みが出てきたような。きっと彼女自身が読解を好きだからだな、これは。Gorillas and Humansの読解後に生徒が書いた感想で「これは、すごい! こうつながるか!?」と思ったのをひとつ。We should use more peaceful means and our world will be very peaceful without wars and acts of terrorism.
- Gingerbread Manは私が子どもの時に姉が兄の友人にクリスマスプレゼントとして絵本をもらったので思い出深い物語でした。Gorillas and Humansは教科書の英文だそうですが、以下が最後の締めになっています。
教授:(ゴリラ同士がケンカになった場合、止めるのはメスか年少のゴリラで、アイコンタクトを使って近づいていくと、ケンカして怒っていた2頭のゴリラはお互い離れていく。大きなゴリラがケンカを止めるために力を使うと、イライラ感が残り、別のケンカが起こりかねないという内容の後…) Smaller gorillas do not use force. As a result, the angry gorillas stop fighting without frustration. We humans use force to control others. Some countries use great military and economic force to stop fights between countries. However, using force does not solve the problems at all.
インタビュアー:That may be a lesson we learn from gorillas. …という英文で、「軍事力や経済制裁」で他国をコントロールしようとする今の世界を見事に指し示していていることに驚くと共に、「力を使っても問題は解決しない」という英文に感銘を受けました。3人組で読み取りをした御蔭で英文の内容が深く理解できました。教材の選び方は大切だということを教えていただきました。ありがとうございました。
●日時: |
2015年11月21日(土) 午後3:30~7:00 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 高校レポート [担当:萩原] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 高校レポート [担当:棚谷] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
大倉山記念館 第4集会室 (Tel. 045-544-1881) (東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分 改札口を右に出て右折、急坂上る) より大きな地図で 大倉山記念館までのルート を表示
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●高校 実践報告: |
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●中学校 実践報告: |
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2000円)で割引適用] |
●問い合わせ: | 萩原一郎 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
(2015年11月10日掲載/12月8日更新)