■ 神奈川新英研2月例会
2016年2月
神奈川新英研2月例会報告
2016年2月13日(土)横浜市技能文化会館 会議室701
●近況、最近取り組んでいること
- 学校全体としてグループ学習を推進するということなので、私もなるべくやるようにしています。
●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど
- 我が校はリーダー(班長)的な立場に立てる生徒が少なく、グループ活動はなかなか理想的に機能しません
●高校実践報告:「訳読+αの授業を目指して」
寺澤 薫さん(中央大学附属横浜高等学校)
はじめに
- レポーターから:ここ数年、私が試行錯誤をしながら授業で取り組んできたことを紹介します。外国語教育や国際理解教育に特化しているわけでもなく、特段顕著な進学実績を挙げているわけでもない学校で、受験対策が学習の動機づけの多くを占める生徒たちを相手にした授業でどこまでできるのか。日ごろの授業の一端を紹介し、改善の可能性を皆さんと共有できたらと思います。
報告
(1)音読について
- ①音読は大切なので、目的を伝えて継続するべき。
ただし飽きさせないよう、ペアやレベル設定をするなど変化を持たせて。 - ②意味と音声を一致させるような音読をさせる。例えば、リテリングで生徒を追い込む、音読をした後に内容を引き出す多様な質問をして答えさせるなど。 知らない人にgraphic organizerを使いながら、内容を説明させるような活動を入れ込む。
- ③目的を変えて音読をさせる。
- (a)文法や構文を意識しながらアウトプットを見据えての音読
- (b)物語などはデリバリー(気持ち、目線)に焦点を当てて音読=「朗読」
- (c)発音をparrotingさせる音読:発音、プロソディ
(2)訳読でない本文解説
- ①高度な文章を読む場合は訳読が必要
- ②視聴覚教材を活用する
- ③音読活動をもっと活用する。( )内の日本語を英語にする活動なども、解説にあたる。
- ④パラグラフに分けて発表させたり、音読させたり、post-readingでdebateをさせたりする。
- ⑤背景知識を利用すると、解説を薄くできるのでは、解説は重要なことのみ絞ってやる。
- ⑥100パーセント説明して理解させる必要はないし、実際には生徒の身にはつかない。
(3)グループ・ペアの活用
- ①少しでも異なるメッセージの出てくる活動にする
- ②Pre-reading: (a)タイトルだけでどんな内容かをguessさせる。 (b)写真を見てどのような質問が考えられるか、グループで質問をできるだけ多く書き出す
- ③Post-reading
- (a)rewriteをパートごとにグループで最初から書かせて発表する。
- (b)話の続きを考えさせて発表させる。
- (c)自分の意見としてペアやグループで発表させる
- (d)Questionsを考えさせる
- ④日本語も活用する:内容について意見交換をして、グループでそれをまとめて発表、あるいは掲示することは論理的思考に役立つ。日本語と英語で意見を書かせると良い。
(4)内容をさらに深めるには
- Debateの活用{例}「今回も戦地に赴き危険な仕事をするのか」VS「日本にいて平和の為の報道をするのか」
- ①本文の内容(例:意見文、物語など)に応じて扱いを変化させた方が楽しいと思う。
- ②Pulitzer prizeを取った他の写真を見せてそれについて知っていること知りたいことを話し合う
●参加者の感想
- 実際に活動し、取り組ませていただくことによって、どれだけの効果があるのかということ、英文のレベルについてもう少し検討する余地があるのではないかということなど、改めて考えさせられました。たいへん有意義なレポートだったと思います。ありがとうございました。
- 訳読中心の高校での+α、面白かったです。がんじがらめにされている中、必死の変革っていう感じですね。目指されているリテリングの方向性は正しいと思います。ただ、キーワードはもっともっともっと絞って、写真をもっと多くしてみてはどうでしょう。キーワードからではなく、写真から英語を発するようにしたいな。何か、その方がダイナミックで、チャレンジングっていう気がするんですけど。
- 訳読+αの工夫を色々と試みている姿勢がまず素晴らしいと思いました。題材を深めて、生徒の心を動かす場面を作っていこうとする視点が大切だと思います。沢田さんは、川を必死に渡ろうとしていた親子をその後、訪ねたとか、あの写真の中の男の子が成人になって日本に来た …というエピソードもありましたね。オレンジのワークショップの話を伺って、総合学習で、「もし世界が100人の村だったら」のワークショップをやって、とても盛り上がったことを思い出しました。
- 中学高校ともに教科書の英文の量が増え、難易度も増しているようです。このような傾向の中で、すべて訳読式の授業という流れからどのように脱却を図っていくかについて参加者の皆さんで考えることができる貴重な機会となりました。付箋を使ってアイディアを共有できたのがよかったですね。もっともっと議論を深めたかったところです。
- レポーターの感想:今回,印象に残ったキーワードは「言葉と意味が一致する」と「たがやす」でした。機械的にドリルで身につけた言葉は上滑りします。そうではなく,まずは,ストーリーの背景や内容を生徒に考えさせ,知的好奇心を高め,生徒が「それを英語で学びたい,言いたい」と思わせるまで「たがやした」ところで英語を導入することが大切なのだと思いました。習った英語も,ただ無機的な音読活動で表層的に言葉を暗記させるのではなく,グループなどの力学も利用しながら,「知ったことを伝えたい」「それについての意見を述べたい。」と思わせて,生徒の心からの言葉を導き出すのが大切なのだと思いました。
自分の授業実践についてこんなに多くの先生方から建設的な意見をもらえるなんて,大変貴重な経験になりました。ありがとうございました。
●小学校実践報告:「小学校英語への提案~協同的な外国語活動で子どもたちの マルチ能力を引き出そう~」
町田淳子さん(小学校テーマ別英語教育研究会)
はじめに
- レポーターから:これまで、20年来積み重ねてきた国際理解教育に根ざしたテーマ別英語活動では、英語を学ぶプロセスで、どの子も自尊感情をもって、学習活動に参加できるよう様々な工夫をこらしてきました。今回はその中から「協同的な学び」をとりあげ、その具体的な活動例を紹介しつつ、教科化を急ぐ文科省の構想に対する、オルタナティブな学びを提案したいと思います。
報告
- 英語を学ぶプロセスで、どの子も自尊感情をもって学習活動に参加できるよう工夫されたテーマ別英語活動の発表でした。今回は「協同的な学び」をとりあげ、その具体的な活動例を紹介しつつ、教科化を急ぐ文科省の構想に対するオルタナティブな学びを提案するものでした。
- 最初に、「国際理解教育のためのテーマ別英語活動を創造する手順」の紹介がありました。
※大変システマティックなものです。実に有用な手引きです。
STEP 1 テーマ設定
●国際理解教育としての5分野からのテーマ選び
STEP 2 ねらいと具体的な目標の設定
●三角形のブレーンストーミングで決定 導入可能な英語表現の収集
どんなAttitudes? どんなKnowledge? どんなSkills?
●学習指導要領の理念の視点からたてる目標
(地球市民として生きる力を育む)
●コミュニケーションに焦点をあてた目標
STEP 3 素材探し
●Authenticなものを活用する
STEP 4 活動案の設定・作成
●参加型学習・協力的学習・問題解決型・批判的思考・マルチ能力を活かす学習を実現するためにWORD GAME・ACTION GAME・WRITING・SONG&CHANT・PROJECTをバランス良く配置する
STEP 5 導入する英語表現の確認
●自然で必然性のある表現
●自己肯定感を高める自己表現やテーマから生まれるメッセージ↓
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STEP 6 全体の流れを整える
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↓●導入
●自分に結びつける
●テーマを深める
●他の人々、社会、世界と結びつける
●まとめる/創造する
●発表する
●ふりかえる - 次に、人権教育と異文化理解の観点から「学校〈School〉」に焦点を当て、八王子市立小和田小学校の3年生を対象にした授業が紹介されました。
- ここでは、その4時間目に絞ってまとめます。この時間、子どもたちは4枚の写真を見て、共通することを考えます。4枚の写真の①絨毯を編む女の子 ②難民となって避難している少年 ③巨大ゴミ捨て場で働く女の子 ④うつむいて街角を歩く少年 に共通するのは、「学校に行っていない」ということです。→I cannot go to school. 次に、学校に行けない子どもたちの気持ちを想像します。→I want to study. 続いて、学校で何か新しいことを学ぶとしたら何がいいかを考えます。→畑をつくる/木のぼり/お手玉を作る/火のおこし方/苦しい国に手紙を書く/川で泳ぐ/昔のくらし/ダンス/バレーボール/サッカーなど、実に多様! 最後に、グループでなぜそれがいいのか話し合い、グループで一つのアイデアに絞ります。→We want to study ○○ at school.
- 自分が考えることに重なる形で英文がリンクします。グループで話し合うことに重なる形で英文が乗っかります。つまり、母語による思考に根ざしながら英語が口をついて出てくるような感覚に子どもたちはイクスポウズされることになります。「自前の英語」による自己表現です。 ※うーん、この「協同的な学び」はそんじょそこらにある協同授業を超えています。深くて広いです。
●参加者の感想
- 小学校の外国語活動の理想と現実の一部が見えたような気がして、たいへん興味深かったです。
- ねらいが明確で、方法も子どもの成長に合わせていて、学べる子どもがうらやましいと思いました。
- 本日は飛び入りで参加させていただきありがとうございました。35名のクラス人数ですが、理解の点で児童の力の差が出てしまっています。「どうしても日本語で理解したい!」と思う児童が多く、楽しんではいますが「親しむ」ことはできていないように思います。親しめる外国語活動に取り組んでいきたいと思います。
- これまでに中学や高校での協同授業に興味を覚えたことは一度もありません。「ああ、教え合いね」って感じ。し・か・し、町田先生の協同授業は教え合いに加えて「広くて深い!」町田さんが助言したという軽井沢の中学校での協同授業のことを是非とも知りたい。
- 常に世界に目を向けるという視点の中から一つの表現を引き出すところは、素晴らしいと思いました。発達段階にそぐわないゲームのためのゲームで終わらせずに、子どもが言ってみたいと思うことを発話させる場面づくりが、大切だと思いました。
- 後半の小学英語の先生の発表からは,一語一語を大切にしていて,とても多くを学ばせてもらいました。たとえば,I want to study. という文を引きだすために,学校に行けない世界の子供たちの写真を何枚も見せて,そういう子供たちの願いを子供たちに考えさせていました。What do they need? という文を引きだすために,難民の子供たちの写真を見せて,私たちが問いかけるべき言葉を子供たちに考えさせていました。そうやって,生徒の心を動かして,彼らが世界と結びつきたい,と思ったときの言葉を大事にしなければいけない,と改めて強く思いました。教育って奥が深い。この小学英語の実践をradical(根っこの)と言っていた先生もいて,その通りだと思いました。
- 導入から発表まで綿密に計画された授業について紹介していただきました。授業内のどのステップにも工夫が見られ、英語を通して世界を見つめることができるようになっており、感嘆しました。別のテーマについても是非授業を見てみたいと思います。
●日時: |
2016年2月13日(土) 午後3:30~7:00 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 中学校レポート [担当:萩原] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 高校レポート [担当:棚谷] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
★会場がいつもと異なりますのでご注意を! 横浜市技能文化会館 7階 会議室701 〒231-8575 横浜市中区万代町2丁目4番地7 TEL 045-681-6551 関内駅徒歩5分(関内駅南口の改札を出て右へ進んで下さい) |
●高校 実践報告: |
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●小学校 実践報告: |
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2000円)で割引適用] |
●問い合わせ: | 萩原一郎 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
(2016年2月4日掲載/3月19日更新)