■ 神奈川新英研12月例会
2015年12月
2015年12月12日(土)大倉山記念館 第一集会室
●近況、最近取り組んでいること
- 単語練習→文で練習することへの移行
- 教員採用試験対策
- 英語表現Ⅰでのspeakingとgrammarの両立方法は?
●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど
- ペア、グループ活動で男女混合にならないこと。男子同士、女子同士でより一層コミュニケーションが図れるなら、それでもいいのか? やはり、クラス全体で誰とでもコミュニケーションさせるべきなのか?
- 教科書以外に多くの英文を読んでほしいと思っているが、生徒が興味を持つ教材は何か、またそれをどのように活用すべきかということ。
- 40人全員の個別指導ができないこと。2単位で効率よく個別にみられる工夫は何か
●中学実践報告:「インド:ニューデリー日本人学校での濃密すぎる3年間」
川口朗さん(横浜市立旭北中学校)
- レポーターから:視聴覚教材のフル活用:スピーチ・IF紙芝居・夏休み英文日記・そして歌の実践~オリジナル歌詞付き動画・歌詞カードで英語嫌いをゼロに!~こんなに盛りだくさんにできるかどうかわかりませんが、自分に渇を入れる意味でも、あえてこんな感じにしておこうと思います。
- 川口さんは2012年4月から3年間、ニューデリーの日本人学校で教え、今年3月31日に帰国しました。ふんだんなパワーポイントの写真とともに生徒のさまざまな活動や英語の授業、教職員との交流などを紹介していただきました。冒頭、「インドに進出している日本企業は?」というクイズが出され、参加者が順番に答えていきました。航空産業、自動車メーカー、通信産業、重化学工業といくらでも出てきて、改めて大企業のインド進出と、それに伴う社員子弟の教育機関のニーズが高いことを知らされました。
- 日本人学校は外装・内装、電気設備を含め、すべて現地の日本人企業が建てたものであり、学校そのものが公立ではなく、私立であるということです。そして、校種は幼稚園、小学校と中学校。ニューデリーの場合は4階建ての校舎を校種別にほぼ階ごとに区切って使っています。入学してくる生徒は大部分がニューデリー駐在の公務員と日本企業に働く親の子女です。親の勤務が、数年後に日本に戻る場合、別の国に転勤になる場合、日本→外国の場合と考えられる ので、日本人学校中学卒業後の進路を選ぶ際に色々悩むようです。中には最初から日本人学校でなくアメリカンスクールに入る子弟もいるそうです。
- 日本人の教員と、現地採用の教職員が一緒に働いています。中学校は4クラスで、英語教員は川口さん一人で3学年を教えるので教材準備の面など大変だったそうです。生徒たちの英語力はかなり高かったので、教科書を補充するためにオーセンティックな音声教材(時事ニュースなど)や、新聞広告の英語表現などを多用したと言います。英語の歌は日本にいたときと同様、「○月の歌」として授業で扱っていて、自作の歌詞付き動画を流しながら歌い、その教材は帰国した今年度も中学で使い、人気の曲が共通しているとのこと。
- また、学校行事としてJapan DayやIndia Dayをもうけ、ニューデリーの現地小中学校の生徒・児童たちとさまざまな文化交流を行っていて、花びらをモザイクのように床に敷き詰めて大きな装飾物を作ったり、両国の料理に親しんだりなど多彩な活動をして楽しそうでした。運動会では小中合同で行われ、目玉の種目と言えば、全校で行われる創作ダンスということでした。昨年はインドで大人気を博した映画'Om Shanty Om'にヒントを得て作られたダンスで、ヒップホップの混じったインド舞踊という感じで、生徒たちの大熱演が見られました。群舞を成功させるコツとして、グラウンドに細かく方眼の線を引き、立ち位置や動線を決めていったそうです。まるでインドミュージカルを見ているようで、「音楽に国境はない」という趣でした。
●参加者の感想
- インドの背景を知ることができ興味深かったです。今日聞いたことは知らないことばかりでした。
- 3年間ご家族もともにインドの生活をなされた、大変恵まれたご体験ができ、うらやましく感じました。
- 日本人学校がどのようなものなのか、今回のレポートで初めて詳細に知りました。授業の内容がハイレベルなことに驚きました。日本のイベント(夏祭りなど)、インドのイベントのどちらも取り入れていることが素晴らしいと感じました。このような経験をされておられる方のお話を聞いたのは初めてだったので、非常に有意義な時間でした。
- 川口朗さんのインド、ニューデリーの様子は映像があり、よくわかりました。日本人学校の1年で1/3が入れ替わる中で、1年勝負の授業に忙しかったようですが、ニュース、映画、新聞、スポーツ、歌、ポスターetc. あらゆる教材を取り入れて、本人が楽しみながら実践していることがうらやましい限りです。日本に戻っても、生徒は大きく[多少]違ってもテキストの内外から楽しみながらできる授業をつくって下さい。
●高校実践報告:多読で英語の基礎体力をつける~2年間で20冊以上の本を読む~」
諫山 和可さん(大妻高等学校・前都立小山台高等学校)
1. はじめに
- レポーターから:多読の必要性はわかっていても、限られた授業の中で指導する時間を見つけるのは難しいです。そこで週末を利用して家庭学習を利用することを考えました。幅広く易しい英文をたくさん読むことは速読、Listeningの回路をつくっていくことにもつながります。
- ねらい
- 1)教養・・・英語文化の背景(シェイクスピア、聖書、ギリシャ神話、英米文学)、日本の文学、現代を知る、人生を知る
- 2)直読直解 ・・・Listeningへの回路をつくる。
- 3)語感を養う
2. 作品
- 1)物語形式の読み物を基本とし、5W1Hの流れを読み取っていく。論文調は扱わない。 2)レベルは原則として教科書より数段易しい。(読みを生徒の大きな負担にしない ⇒速く読めるようになる。10~30分で読めるもの
- 人気の高い作品:赤毛のアン、ロミオとジュリエット、シャーロック・ホームズ、80日間世界一周、ブラック・ジャック、火垂るの墓(多い時は2年間で22冊46作品を読了した学年もあった)
- ※作品一覧
- 1) 1年次
- The Fireflies' Grave(三友社)【平和】
- Mischief of Gods(山口書店)【ギリシャ神話】
- Past Promises (山口書店)【旧約聖書】
- Pleasant Stories of Today(山口書店)【易しくて長い英文】絶版
- Amusing Short Stories (山口書店)【易しくて長い英文】絶版
- Grace Darling (Oxford University Press)(灯台守の少女が父親と共に座礁船の人々を助け、民間伝承のヒロインになった)
- Twist of Fate(山口書店)【シェイクスピア】
- Little Fox of Gon (山口書店)【日本の有名な昔話の英語版】
- The Red-headed League(文英堂)【シャーロック・ホームズ】
- O. Henry's Best Stories (山口書店)【オーヘンリーの有名な作品】
- Visas for 6,000 Lives(三友社)【杉原千畝】
- Nausica of the Valley of the Wind(三友社)【風の谷のナウシカ】
- Ann of Green Gables(Penguin)【赤毛のアン】
- The Phantom of Opera(Oxford University Press)【オペラ座の怪人】
- The Canterville Ghost(同上)【幽霊話のコメディ】
- The Queen's Necklace(文英堂)【アルセーヌ・ルパンシリーズ】
- The Death of Karen Silkwood (Oxford University Press)【原発事故】
- 2) 2年次
- New Yorkers(Oxford University Press)【オー・ヘンリ―作品集】
- The Return of Sherlock Holmes (同上)
- Round the World in 80 Days(同上)
- The Picture of Dorian Gray(同上)
- The Adventure of Huckleberry Finn( Penguin)【アメリカ文学】
- Alice in Wonderland (同上)
- Prince of Egypt (同上)【旧約聖書】
- A Christmas Carol(同上)【イギリス文学】
- Billy Elliot(同上)【映画リトルダンサーの小説】
- The Search of the Miracle Sound- The Story of Jin Chang Hyun(三友社)在日韓国人のバイオリン製作者・陳昌鉉の話、韓国で話題に
- Kwaidan(山口書店)【ラフカディオハーン】
- Beyond "Silent Spring"(三友社)【環境問題の先駆者、現在の原発問題につながる】
- The Gift of Magi and other stories(山口書店)【オー・ヘンリー】
- I Won't Get Up-The story of Rosa Parks(山口書店)【アメリカの黒人差別問題】
- Robin Hood (Compass Publishing)【イギリス文学】
- Black Jack(三友社)【手塚治虫英語版】
- New Cosmos Reading(三友社)【旧課程Readingの教科書】より
( The Unknown Child of the Titanic, Imagine, Hana's Suitcase, I have a dream, English and Philippinos, The Galapagos Island, The Girl with a White Flag
- 1) 1年次
3.指導方法
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- 1)自宅学習を基本とし、土日(長期休業中も)利用し、一定量(1回に10ページ程度)を継続(2年以上)して読ませる。
- 2)木曜日に、質問プリント(10ページで10問、話の流れを問う)を渡し、月曜日に回収する。
※質問プリントの例(サイズはB5版)The Merchant of Venice
提出日: 月 日 Class No, Name
p.24 なぜShylock はAntonioに復讐しようとしていたのですか。
p26 Bassanio はなぜお金が必要だったのですか。
p28 Basssnioのお金を用立てるのになぜAntonio は憎んでいるShylockにお金を借りにいったのですか。
p30 なぜAntonio はShylockにお金を返せなくなったのですか。
p.32 Bassanioはどうして Shylockが Antonioに貸した2倍のお金を払えるほどのお金をもっていたのですか。 - 3)お互いに感想を読み合うことで、作品の理解を深める。
- 4)教師が生徒の読了を簡単にできるシステムをとる。
- 5)教科書に入っている、本課以外の読み物教材も利用する。
授業の種類が異なっていることもあり、工夫がされたアクティビティーなどが多く見られ、とても参考になりました。それに対する生徒の心情も聞くことができて良かったです。
4.評価
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- 1)定期考査で1~2割程度出題。易しい問題。
- 2)提出した質問プリント
5.生徒の感想
- 最初は慣れなかったが、続けているうちに長文に対して抵抗感がなくなった。
- 英語で有名な話に触れることができるのはいいことだし、知らないで終わってしまう話が知れてよかった。
- 意外と日本語でもきちんと読んでいない有名な話もあって、内容が確認できました。
- 「沈黙の春」は教養にもなった。
- 評論もほしい。
- 訳や文法の解説がほしい。
- もう少し難しくしてレベルを上げてほしい。
6.今後の課題
- 作品の発掘(易しくて内容のある作品)
- 使用場面における分類・・・「英語文化の背景、日本文学、現代を知る、人生を知る」のカテゴリー
7.まとめ
- 最初、ある生徒は自力だけで解けないから友人と協力してやったりしていたようだが、次第に一人でやりきる生徒が増えて行ったようです。生徒の感想のいくつかは英文で書いたものがあり、また作品ごとにしっかり読んでいることがわかる感想文が多く、生徒が楽しんで読んでいる様子がうかがえた。作品を発掘するには教師が沢山の作品を読むことが必要であり、生徒向けに質問を考えることも時間を要する作業になる。それを20年近くやってこられた諌山さんに頭が下がる思いでした。センター試験で80%、リスニングでも8割以上とる実力は一朝一夕には身に付かないはずで、統一単語テスト以上に多読の効果があったはずである。(関口記)
●参加者の感想
- 生徒の読み書き能力を上げるには、教師も覚悟を決めて、かなりしんどい思いをしなければいけないと思っていました。諌山先生の力量がすばらしいので、真似できるとは思えませんが、長年の実践のなかでつかまれた「簡単にできるシステム」については参考にさせていただきます。
- 週末宿題、長期休日を利用しての多読に取り組む中で、何よりも学習者側が数多く肯定的にとらえていることに、この実践はある意味、効果的なのかと感じました。ご本人から直接いろいろうかがえてたいへんありがたかったです。
- 私の大学でも「多読のススメ」のようにやさしい英文をたくさん読むことが推薦されていますが、今回のレポートでその意義や効果を改めて認識できました。中学校でもうまく実践できないだろうかと思いました。都立・県立(神奈川)でも実践法が違うことを実感しました。
- 具体的な方法を示していただき、まずはこのまま実践していきたいと思います。生徒のレベルに合わせた本を選び、やさしいと生徒が感じるレベルの英文をたくさん読む機会を与えたいと思います。ありがとうございました。
- 週末をはさんでQAシートを宿題として与えるという仕掛けがうまいと思いました。取り入れたいと思います。
- 諌山さん「楽しい多読で力をつける」at 小山台高校(2年間で20冊!進学重点校の一つでの実践)OC中心のテキストで不足している量へのとりくみは中学2~3年以降は必要だと思う。易しい語彙でも10ページ読んだという自信が大切。テキストにないおもしろい話を2~3冊入れて読ませたい。
●日時: |
2015年12月12日(土) 午後3:30~7:00 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 中学校レポート [担当:日比] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 高校レポート [担当:萩原] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
大倉山記念館 第1集会室 (Tel. 045-544-1881) (東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分 改札口を右に出て右折、急坂上る) |
●中学校 実践報告: |
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●高校 実践報告: |
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2000円)で割引適用] |
●問い合わせ: | 萩原一郎 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
- ■2月例会 2月13日(土)横浜市技能文化会館 会議室701
- 高校:寺澤 薫さん(中央大学附属横浜中学校・高校)
小学校:町田 淳子さん(小学校テーマ別英語教育研究会) - ■3月例会 3月12日(土)
- 中学:加藤 智行さん(東京都八王子盲学校)
高校:今田健蔵さん(神奈川県立相原高校) - ■4月例会 4月9日(土)
- 高校:森崎さん(神奈川県立元石川高校)
- ■5月研修会 5月8日(日)
- 中学:榎本美津子さん(横浜市立中和田中学校)
- ■6月例会 6月18日(土)
- 中学:大柿未来(みく)さん(平塚市立山城中学校)
- ■7月例会 7月9日(土)
(2015年12月7日掲載/2016年2月8日更新)