■ 神奈川新英研 春の1日研修会

2015年5月
<< '09年'10年'11年'12年'13年'14年'15年'16年'17年'18年 >>
2月3月4月5月6月7月9月10月11月12月

 新年度にむけて、新たな授業づくりの計画をたてはじめていらっしゃることと思います。今年度の研修会では、『英語教育神話の解体―今なぜこの教科書か』を昨年出版された成城大学名誉教授の中村敬先生に長野県・白馬村から来ていただき、ご講演をお願いすることができました。中学・高校の実践報告も魅力的なものを用意しました。これからの授業づくりのためのヒントをたくさんおみやげに持ち帰って下さい。

●中学実践報告:「話せて、遊べて、基本が身につく、そんな授業を
         創造しよう! ~生徒の学びを育てる~」

安野寿美さん(江戸川区立篠崎第二中学校)

1. はじめに

  • レポーターから:新出単語の導入、教科書本文の理解の仕方、文法の理解と定着など、ごく普通の授業ですが、その中で生徒の学びを育てていくにはどうしたら いいのか、皆さんで体験しながら考えていきませんか。文化のかおりがする授業を目指しています!
  • 江戸川区は毎年異動していく教員が多く、新規採用者が大量に働く地域ですが、この1、2年はほぼ落ち着いた環境で安心して学習ができるようになってきました。2、3年生は「東京方式少人数習熟度別授業(2学級3展開)」を先取りし、必ず二学年以上を受け持たなければなりません。中心になる先生の指導案に沿い、どのクラスも同じ授業が求められる状況です。でも、ほんの少しでも自分なりの工夫を取り入れた授業を創造していきたいと思っています。

2. 授業

  • 教材:New Horizon English Course 2からUnit2-3 A Trip to New Zealand の Reading for Communication です。
  • 文法理解と定着
    • ①「マオリ語神経衰弱」でマオリ語に親しもう!
       2007年に東京国立博物館で「マオリ 楽園の神々」という展覧会をやっていました。そこでもらったしおりのようなカードを元に作った神経衰弱ゲームです。 絵柄と語が一致したら、People call it ○○. とターゲットセンテンスを言い、その一組のカードをもらいます。一組1ポイントです。その時まで殆ど授業に参加しなかった男子生徒がこのゲームだけは参加してくれました。マオリ語の音の響きが面白かったようです。
    • ②New Zealand Quiz 柏村みね子さん(東京・中)によるクイズで、重宝しています。普段は、この後に「マオリ語神経衰弱」へと進みます。
      1.The capital of New Zealand is…
        A Auckland
        B Sydney
        C Wellington
        D Christ Church
      2.The national bird is…
        A Albatross
        B Kiwi
        C Penguin
        D Hawk
      3.Most New Zealanders…
        A eat wild weed
        B don't use an umbrella when it rains
        C eat dinner at four p.m.
        D never eat pork
      4.In Maori, "Waka" means…
        A young
        B Prince
        C dance
        D canoe
  • 新出単語の導入
    •  ①パパイヤジュース
      松本涼一さん(福島・中)から教えて頂いた単語練習ゲームで、課の新出語を25個選んで予め覚えてしまうという試みです。4回同じテストをするうちに覚えてしまうらしく、生徒から好評です。
    •  ②Little Words
      クロスワードよりも簡単なワードゲームです。~ingなどの語尾や(6)内の字数から見当をつけることができます。
  • 教科書本文の理解  廣橋智美さん(東京・中)は「単語は筋トレ」と言って、生徒の単語練習を励ましていると聞きました。この「筋トレ」という言葉は生徒たちに響くようです。単語の練習が十分に行われていると、ピクチャーから導くオーラルイントロダクションも難しくはありません。オーラルイントロダクションの後、日本語と英語でQ&A、TFクエスチョンなどをして糸山京子さん(福岡・中)から学んだABCD Reading へとつなげます。
    A
    Look at that mountainマウンテン. It looks like Mt. Fuji, but it's not. It's Mt. Egmontマウント・エグモント. It's Mt. Fuji in the movieムーヴィー The Last Samurai. It's about 2,500トゥサウザント ファイヴ meters high.
    B
    Look at that mountain. It looks like Mt. Fuji, but it's not. It's Mt. Egmont. It's Mt. Fuji in the movie The Last Samurai. It's about 2,500 meters high.
    C
    Look at the(山). It looks (ように)Mt. Fuji, but it's not. It's Mt. Egmont. It's Mt. Fuji in the(映画)The Last Samurai. It's about 2,500(メートル)high
    D
    Look at(あの山). It(ように見える)Mt. Fuji, but it's not. It's Mt. Egmont. It's Mt. Fuji (映画の中で)The Last Samurai. It's about 2,500(メートルの高さ)
    E
    Look at(あの山). It(富士山のように見える), but it's not. It's Mt. Egmont. It's Mt. Fuji(『ラストサムライ』という映画の中で). It's(約メートルの高さ )
    F
    あの山を見て下さい。あれは富士山のように見えますが、違います。あれはエグモント山です。映画『ラストサムライ』では富士山でした。約2500mの高さです。

3. 映画を使って

  • ・ ニュージーランドつながりで『クジラの島の少女』をみせるのもいいかも知れません。この映画は、消えゆくマオリの伝統に対する危機意識を強く感じさせます。

<参加者の感想>

  • 単語を4回同じテストで覚えさせる、いいアイディアだなと思いました。また先生が実際やって下さった、番号のところを順番に読むものもすぐ授業で取り入れられそうです。ありがとうございました。
  • 音読(シャドゥイングも含む)レッスンは、私も得意とする分野ですが、パパイヤジュースゲームや神経衰弱のやり方は早速取り入れたい授業方法です。
  • 音読プリント、7Little Words、パパイヤジュースゲームは参考になりました。自分も授業でとりいれてみたいと思います。
  • テンポ良い元気の出る安野さんの授業に惹き付けられました。
  • 生徒に飽きさせない音読活動をするためにはどうすれば・・・??悩んでいたところにアイディアをいただき、ありがとうございました。Reading Task A→Fを真似て実践したいと思います。他にもアクティビティーヒントがたくさん・・・創造的な授業の取り組み、"話せて、遊べて、基本が身につく"理想的な取り組み、素晴らしいです。
  • 安野先生の人柄が授業にもあらわれ、生徒も自然に楽しく英語を勉強できるのではないでしょうか。
  • Q&Aなどもしっかりやったほうがよかったようですね。単語の導入の仕方など、質問をしていただいて、よくわかりました。十分に興味を持っていただけるように、また改良していきたいと思いました。
  • まずテンポよくのりのよい話術に引き込まれました。いくつかのアクティビティを早速まねしてみたいと思います。
  • さまざまなパーツに分けて授業準備されていて、おそらく生徒はそれぞれのアクティビティに熱中しているのだろうと思いました。
  • 中高連携に向けて、私も実践を見せることができるよう、もっと面白い授業作りをしようと思いました。
  • 単語テストが印象的です。似た形で実践したいです。
  • とても参考になりました。ありがとうございます。さっそく来週から試してみます。
  • 段階を踏みながらの暗誦がとても良いなと思いました。やってみようと思います。

●高校実践報告:「伝統的な高校英語授業を変えるためのレシピ」

萩原一郎さん(神奈川県立鶴見高校)

1. はじめに

  • レポーターから:現任校に異動してきて教員生活初めての共通進度、共通テスト。その中でどう自分のカラーを出そうとしてきたのか。実際に授業で使用したいくつかのワークシートを使いながら、ワークショップ形式で紹介していきます。学年最後に位置づけたスピーチ大会、英語暗唱発表大会の映像も見ていただきます。

2. 報告

  • レポートは城郷高校での2009年から2014年の6年間について述べています。
  • 新しい学校では初めてのことが多くあった。その中で最大のものは「統一進度、統一テスト」だった。また、習熟度別クラスの授業も初めてであり、それらを進めていく中で同僚とどう共同していくかということを学んだ。そして同僚と協力する中で、1年次の3月に「学年スピーチ発表会」を、2年次の3月に「2学年英語暗唱発表会」をそれぞれ体育館で開催した。この中で一番苦労したのは、一人ひとりのスピーチ原稿の添削だった。
  • また、3年の必修選択「発展英語」では「速読+精読+多読」指導で、生徒の読解力がどれだけ伸びるかを検証した。多読は東京の諌山先生の実践が参考になった。
  • 萩原氏の目標は「生徒とつくる英語の授業であり、「国民の5%を目標として英語で英語の授業を行う(中学、高校とも)」(平泉渉氏が主張している)のではなく、100%の生徒を対象に授業をすることを目標にし、協同学習(ペア、グループ学習)、自己表現(creative writing)をさせる等の実践であった。
  • また、「英語通信」「授業ノート」等で生徒との双方向性を追求したし、遅れている生徒への放課後補習「がんばり教室」なども行った。
  • 8年越しで希望していた新採用教員の指導を2年続けて経験しこれは「天職だ」と再認識したが、実に難しいことだ思った。
  • 学校での英語教育は、民間での目的とちがって①英語「教育」+②「英語」教育である。「英語」教育は英語を話す、聞く、読む(コミュニケーション能力)、書く力(+文法)をバランスよく身に着けることだと思う。

<参加者の感想>

  • 「意味のかたまりシート」を取り入れたい。単語をバラバラに覚えても使えないので。
  • 今日は萩原さんの発表を聞きたいと思ってきたのですが、急用で途中からとなり、途中入場で失礼しました。先生のおっしゃるoral introや英語で進めるペアワーク、音読、summary writing / reproductionなど私も実践していることで重なることが多く、大変勇気づけられました。今後とも色々教えて下さい。
  • 通読は私がやっていない方法である。全て終了したら「通読しなさい」程度しか実践していない。英語表現をさせる手立てを参考にしたい。
  • 色々と授業の中で使えそうなアイディア、ありがとうございます。
  • エリート対象ではなく、国民教育としての英語教育に真摯に取り組まれている姿勢に感銘を受けました。
  • 萩原先生 お疲れ様でした。発表に間に合わず、レジメを拝見しました。授業を変えるための5つのレシピは中学校でも同じだ!!と思いました。「授業にもっと音読を」と考えていたところでした。
  • 中学3年以降、初見のもののreading、特に量に慣れさせることを、ここ最近模索していました。先生の今日のお話は、大変参考になりました。他社の教科書などを使った通読シート、weekend readingなど、やってみようと思います。ありがとうございました。通読プリントを始め、あらゆる活動が勉強になりました。
  • 7.英語表現での工夫、がとても参考になりました。(とても個人的に)
  • 私も少人数習熟度でペア(主の)先生からの文法と問題演習はむなしいと考えていました。帯学習がひとつの解決法だ☆とピカッときました!!ほかにもいろいろありました!とってもとってもありがとうございました!Respectがとってもいい。
  • 「同僚問題」私の勤務先でも大変困っています。個人的に相談等させていただけると嬉しいです。
  • ・元私立高校教師で県立高校で働くことを希望しています。おそらくかなわない希望だとあきらめていますが、中学~高校の上手な接続をテーマに日々研修に望んでおります。先生の工夫が随所に見られる実践例、できるところを応用して中学にも取り入れたいと思いました。(『英語教育』も拝読しております)
  • ごぶさたしております。今日は聴講できず残念でした。例会、今年は参加できそうです。
  • オーラルイントロダクションのまねをしたいです。
  • ものすごく参考になりました。来て本当に良かったです。
  • 「通読シート」やfirst reading, second reading のワークシートがとても参考になりました。文法に関しても、生徒の気づきを促す方法(不定詞と動名詞など)が新鮮でした。


●日時: 2015年5月10日(日) 9:30~17:00
●会場: ★会場がいつもと異なりますのでご注意を!
横浜市技能文化会館 大研修室802(8階) TEL 045-681-6551
〒231-8575 横浜市中区万代町2丁目4番地7
  関内駅徒歩5分(関内駅南口の改札を出て右へ進んで下さい)

より大きな地図で 横浜市技能文化会館 を表示
●日程:
9:30~10:00
受付・事務連絡
10:00~11:30
高校レポート:「伝統的な高校英語授業を変えるためのレシピ」
    萩原一郎さん(神奈川県立鶴見高校)
現任校に異動してきて教員生活初めての共通進度、共通テスト。その中でどう自分のカラーを出そうとしてきたのか。実際に授業で使用したいくつかのワークシートを使いながら、ワークショップ形式で紹介していきます。学年最後に位置づけたスピーチ大会、英語暗唱発表大会の映像も見ていただきます。
11:30~12:30
 昼食
12:30~14:00
中学レポート:「今年の英語の授業をどうしよう?話せて、遊べて、基本が身につく、そんな授業を創造しよう!」
    安野寿美さん(江戸川区立篠崎第二中学校)
新出単語の導入、教科書本文の理解の仕方、文法の理解と定着など、ごく普通の授業ですが、その中で生徒の学びを育てていくにはどうしたらいいのか、皆さんで体験しながら考えていきませんか。文化のかおりがする授業を目指しています!
14:10~16:30
講演「実作で示す英語教育再生案」
   中村 敬さん(成城大学名誉教授)

 現在安倍内閣が進める英語教育改革は、亡国の改悪案です。それを批判するのは簡単ですが、批判(言説)だけでは実効性はありません。そこで、改革の根本原理を実作で提示したいと考えて出版したのが『英語教育神話の解体――今なぜこの教科書か』(三元社)です。私はこの著作を遺言のつもりで書きました。今なぜこの教科書かをじっくり語りたいと思います。
16:30~
事務連絡・片づけ
17:00
終了
17:15~
懇親会
*当日参加可。懇親会はどなたでも参加できます。
中村敬(なかむら・けい)さん紹介
 1932年、愛知県生まれ。1955年、南山大学英語学・英文学科卒業。1966年~1967年、 英国政府奨学生(British Council Scholar)としてロンドン大学留学。1980~1981年、 ウェールズにおける言語問題調査。成城大学名誉教授。 著書に『イギリスのうた』(研究社)、『私説英語教育論』(研究社)、『英語はどんな言語か』(三省堂)、『外国語教育とイデオロギー』(近代文藝社)、『幻の英語教材』(共著三元社)、『なぜ、英語が問題なのか』(三元社)など。 中学校英語教科書NEW CROWN ENGLISH SERIES(三省堂)(1978~1993年 代表著作者)、高校英語教科書FIRST ENGLISH SERIES(三省堂)(1988年~1995年 代表著作者)。  (2014年5月現在)
●会場費: 2,000円(支部会員1,000円 学生500円)
●問い合わせ: 萩原一郎 クリックするとメーラが開きます。
●ダウンロード: PDFファイル 神奈川新英研 春の1日研修会 チラシ(PDFファイル)

PAGE TOP

(2015年4月26日掲載/6月16日更新)