■ 神奈川新英研2月特別例会報告

2010年2月
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 2月20日は特別例会としました。大倉山記念館に36名参加。

●実践報告(高校):「Let's Enjoy Active English!! Part 3 ~世界を"読み""解く"高3リーディング~」

和田玲さん(私立順天中学・高等学校)
 神奈川支部では2008年7月以来、2回目の和田玲さんの実践報告です。前回は音読中心でした。今回は読解で、高校授業レベルから東大入試の要約問題、1500語レベルの早慶入試レベルまで、生徒をいかに手引きしていくか、ワークショップをしながら分かりやすく提示してくださいました。
 生徒にスモールステップを踏ませながら「知りたい」という意欲を形成させつつ、年間ではエコロジー・カーに始まり、エネルギー資源問題(2009年7月7日の環境サミット)、資源をめぐって起こる戦争(アフガニスタンのペシャワール会・中村哲医師、ロシアとチェチェン)、戦争による難民と貧困の実状とその支援(グラミン銀行のユヌス氏)へとつなげていくという、見事な構成。和田玲さんの手法は進学校のみならず多くの学校で追実践できると思います。(会報担当者)

<レポーターから>

 僕は毎年高校3年生の授業を担当している。これまで培ってきた受験指導を『これ見よ』と生徒に披露する。そこそこウケは良かったりする。長文をさばく鮮やかなテクニック! 切れ味のいい文法解説! 眠気を吹き飛ばす爆笑ギャグ!?(ウソ) 早慶だって何のその! 受験生はみんなついてこい!と言わんばかりの気合いのこもりようだ。しかし、一方でそんな自分にむなしさを感じ始めていたりする。この虚無感は一体何だろう? 夢を追う若者たちの熱い眼差しの前に、やがて哀しき俺がいる…。こんな矛盾は、果たして僕だけのものだろうか? 『高3リーディング』、いつしかこれは僕の大きな課題となっていた。『読む』とは、一体何でしょう? 我々高校教員は、そこに一つの回答を見出さなければならない気がします。かつてある先生に『高3のリーディングではどんな指導をなさっていますか?』と尋ねたところ、『高3はもう予備校(状態)だよ』と答えました。でも、本当にそれで良いのでしょうか? 東大や早慶に導けば、高3リーディングは役目を果たしたことになるのでしょうか?

(問題提起:和田さんにとって「英語リーディング」とは何ですか?)
・ リーディング力向上のための必須要件:語彙力、文法力、構文把握力、文章理解力(パラグラフ理解)→予備校はこの力の養成に終始している。しかし、高3の「英語リーディング」では英文を心に残すことを考えたい。
(和田さんが考える「大学が求める2つの力」とは)
・ハード面では「文献を読みこなす力」(そういう人間に育てられているか…?)、「コミュニケーション能力」(一応…、そうかな?)、ソフト面では「世界への関心」(早稲田大学では資本主義論、民主主義論、慶應大学では南北問題を入試問題で問うており、和田さんは重視している)。
(和田さんの「英語リーディング」の定義とは)
・読むとは「世界を知ること」に他ならない。読むとは「個人の能動的な活動」である。授業では「生徒が読みたくなる工夫」が必要。・ 和田さんが「英語リーディング」に託す夢:大切なのは読んで何かを感じること、そして関心・意見を持つことではないか。「読む→知る→関心・意見を持つ→行動したくなる」という流れが、学問への憧れ、生徒の夢の培養になる。

<参加者の感想>


  • 今まで、3年間を見通した教え方をしていなかったな、と反省しました。世界を"読み""解く"リーディングの授業を心がけていきたいと思います。教師自身が日頃から世界に目を向けて世の中のことについて見識を広めたり、深めたりしておかなければいけないと感じました。
  • 生徒が目を輝かせながら勉強している様子が浮かんできました。先生の授業を受ける生徒は、英語力だけでなく、社会科や国語の現代文の力もおのずとついていっていると思います。
  • 教師自身がまず「教育哲学」を持つこと。それを「軸」に、常に問題意識(curiosity)を持ち、常に学んでいくこと、単眼(アリ)でなく、複眼(ハチ)思考、それだけではだめで、「情」(empathy)「意」(will)そして「体」(action)も必要だ。つまり、"人間力"を私たちが高める努力を常にすることですね。その過程で生徒たちを"independent and active learner"に育てるために何が必要でそれをどう育てていくか、というのは自ら生み出されていくのだと思う。

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(2010年2月2日掲載/11月3日更新)