■ 東京新英研5月例会

2006年5月
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2月3月5月9月
 5月20日(土)は小美濃 博さんをお招きして、例会が行われました。『1時間の授業をみる』をテーマにミニレポート6編・メインレポート1編が報告されました。参加者は16名。

ミニレポート報告

・柏村レポート・・・
『多様な背景を持つ生徒との授業』、各学年に20名前後の帰国子女を受け入れ、少人数授業を実施している現在の職場での授業を『発展クラスの1時間』と『基礎クラスの1時間』を比較分析して報告。「日本人のための外国語教育か、帰国性のための第二言語保持教育か?」『習熟度別は誰のため?』など、重要な問題提起もあった。
・細澤レポート・・・
「周りの人の話を聞こう」をテーマに自己紹介と他己紹介。自分の好きなことばを加えることで、発表もぐんと盛り上がった。
・小塩レポート・・・
普段の授業は復習と繰り返しを大切にしている。生徒の生活が見える題材を取り入れた(過去形)ワークシートでクラスリサーチをするなどの工夫を試みている。
・福島レポート・・・
『クラスの友だちとお互いのいいところを言い合おう』とYou are ~. の文で自己表現した取り組み。5人の友だちと会話をして、そのほめことばの中から3つを選んで英文で表現します。
・早乙女レポート・・・
学年の先生方の生活から現在完了の継続の導入をしました。
・岩崎レポート・・・
宿題に出した5日分の日記(生徒の作品)の紹介。また、その表現に使える日常生活動詞をまとめた練習用プリントも紹介。

<メインレポート>


『心をやわらかくする授業』

小美濃博さん
 『毎日公開授業をしています』と語り始めた小美濃さん。「『こうかい』は悔やむほうの後悔です」と続いた。同僚から「悔やむ誠実さがある人は教師をつづけられる」 と言われ心が救われたというエピソードを話してくれた。参加者も同様に心が救われた思いがした。小美濃さんの授業ビデオを見ながら、例会は進められました。
 あいさつの後、黒板に英語のことわざを1つ紹介した。
 Make haste slowly
 この日の朝、合唱コンクールの練習にやってきた生徒たちに向けてのメッセージである。「何か目標に向かって急いじゃうと、失敗も出てきちゃうから、あせらないで下さい。ね、合唱祭もね、あまりあせらないで」「はい、じゃあね、ゆっくりやりましょう」と不規則動詞の変化が書かれたスケッチブックを取り出し、一緒に発音練習をする。
 朝一番の英語の授業。それでも、生徒たちはしっかり声を出す。その活動が終わると「はい、ありがとうございます」とやさしく小美濃さんは生徒に声をかけた。生徒たちにとって、とてもcomfortable な時間が流れているのが伝わってくる。小美濃さんの授業には、随所に生徒たちへのあたたかいメッセージが散りばめられている。
 その後は、不規則動詞を覚えるカードゲーム(グループ)。本文の復習読み(ペア)。単語発音練習。本文音読練習。受動態の表現を覚える(ペア)。など、1時間の授業の中で数種類の活動が展開されているが、流れはゆったりとしている。そこには、生徒の状況をしっかり把握し、「待つ」姿勢が一貫して感じられた。
 参加者の中から「小美濃さんは生徒に余り接近しない。すこし距離をおいているように感じられるのですが」と言う質問が出された。それに対して小美濃さんは、「私は背が高くて近づくとかなり威圧感があると思うんです。」と意外な答えが返ってきた。
 生徒との距離についてあまり考えたことがなかった。物理的な距離・そして心的な距離。どちらもお互いにとって安心できる距離があるはずだ。ハッとした瞬間だった。
 このゆったりとしたペースとスペースの中で、生徒たちの感性が育まれ、自分の思いを安心して口にしたくなるのだと思う。

参加者の感想

  • 小美濃先生のあたたかく、時間がゆったりと流れている盛りだくさんの実践にたくさん学ぶことができました。ペアワーク、集中力、生徒の自発的かつ意欲的な活動がふんだんにあふれているのが印象的でした。小美濃さんが活動の合間、合間に生徒に言う「ありがとうございました」には参りました。小美濃先生、とても素敵に輝いています。
  • 小美濃先生のレポート、生徒との人間関係の指導はよかったと思います。私が現役の頃、グループで残して関係代名詞の指導、およびスピーチの指導をするゆとりがありました。しかし、昭和50年代、非行のため毎日会議で追われ、放課後はまったく指導できなかったときはくやしさでいっぱいでした。現在も同じようなことを聞きます。主語+動詞のパターン、そして関係代名詞など、異なる文化を持つ人々(欧米)の考え方を英語を通して学ぶことは重要です。ぜひ今後もがんばってください。

(連絡先:平野寿美)
(2006年9月13日)