神奈川支部7月例会(2024年)
■7月例会(オンライン)報告
(文責:和田さつき)
2024年7月14日(日)午後3時~5時30分、オンライン(Zoom)、参加者19名。
1) 中学校実践報告:「5ラウンドシステムの課題 ~1ヶ月実践の後に〜」
榎本美津子さん(横浜市立永田中学校)
レポーターから: 非常勤として、1ヶ月着任した中学校英語科1学年は、今5ラウンドシステムを実践していました。5ラウンドシステムとは何か。どんな点で戸惑いそして克服を試みたか。着任後いかに引き継ぎ、退任に向け次につなげたかを実際使った資料とともに紹介します。
課題の概要として「英文基礎の確立」「ライティングの基本」「遅れがちの生徒への手立て」「定期テストへの対策」「5ラウンドシステム資料の活用」などがあげられます。
自分が退任するときの生徒達は何人もとてもこの学習指導に満足して感謝の気持ちを述べてくれたのでこれで良かったのかなと感じています。
例会でのメモ
■榎本さん: 5ラウンドシステムについては、だいぶ前に「すごいスピードで学習していく、2~3ヶ月でUnit 1に戻る、それを5回繰り返す学習法だ」と説明されて、「それやるんですか?」と訊いたら「しなくて大丈夫ですよ、今は」と言われた。そのあと、本や雑誌を読んだ。昨年8月下旬に欠員が出た。5ラウンドシステムは「文法や自己表現は一切ない!」
●Kさん: 5ラウンドシステム独特のテストがあるのか? 目指す目的は? システム化した途端に面白さや本質がなくなることがあるが、それは感じましたか?
■榎本さん: テストの形式は聞いていなかった。一回目のテストは30分リスニングのみ。自分はライティングを入れた。「リテリングやディスカッションできるトップを作りたい」 中高一貫校で出来たのを公立校にひろげた。やってみたら「どこに成果があるんだろう?」というかんじ。
3ラウンドで20回音読(25分)カナフリ付き対訳ワークシート。
「単語や文を覚えよう小テスト」(20分)、振りかえり(3分)。
1日1ページ、Unit 5 Part 2までやった。8~9月までの授業予定(13時間)を配った。
小テストをしたら I’m Eri. のピリオドを落としていたので「ピリオドつけてね」と言ったら、9月時点で中1のクラスの半分がピリオドを知らなかった。
学習習慣のない生徒にはキツイ。補助教材2冊が高額。生徒には負担が大きい。書く活動を半分入れて折衷でやってみた。生徒は楽しくて良かったという感想。
●MさんのChat: 光村図書は完全に「5ラウンドシステム」で多分きめ細かなワークシートが完備されているようです。テキストの後ろはリテルを行うイラスト集ともなっていますね。この丁寧さが教員を引き付けているようですが、「あてがいぶち」の危険さもともなっていますね。
https://www.mitsumura-tosho.co.jp/webmaga/jugyou/round
●HさんChat: 今度、本家本元の先生を講師として呼んでみることも面白いかも。十分に可能です。
●Nさん: 新カリになってから、単語のつづりが出来ない生徒が増えたと感じている。「リテリングが出来る人を作りたい」というのは京都も同じで中学校で即興性を育てよと指導主事に言われるそう。
●SさんChat: 横浜市立南中学校は2013年(平成24年)に横浜市立南高校附属中学校となりました。神奈川県立では2009年に中高一貫校(中等教育学校)が2校(相模原と平塚)できました。6年制独特の課題があるようです。
先日来年の中学校教科書展示会で国語の教科書をみました。英語のretellingに近いような教材は見なかったです。討論ができるようになるには相手の話がきちんと聞けて、自分の意見につながるような考える時間が必要だと思います。南高校で始めた* 5-Roundを中学に下げて教えるのには無理があるように思えます。
■榎本さん: 生徒を観察する力が必要だと思った。
●HRさん: 5ラウンドシステムによって発音は良くなるかもしれないが…。
横浜市のサイトで横浜市民からの声と回答を読んでみました。
参加者の感想
- レポーターの感想 久々の発表でしかも慣れていないzoomだったのでとても緊張しました。ありがとうございました。
- 1ヶ月間だけの講師という講師という立場でありながら、非常に豊かな実践で感銘を受けました。お休みになっていた先生が復帰されてからの大きなヒントになったのではないかと思います。しんどい高校で働く者としても参考になり参考になり、また共感もしました。
- なかなか実際の5ラウンドシステム授業の様子や生徒の反応が聞けなかったので、とても勉強になりました。榎本さんが、自分なりの見立てから書くことなども入れながら実践を行ったのが成功の原因ですね。でも若い人たちは言われたらそのままやらないといけない(他の方法もわからないし)と思ってしまって結局「どつぼにはまる」ということはありそうです。生徒の不安を少し解消するのに、学期内での5ラウンド(例えば1学期はLesson1~3。2学期は4~7、3学期は8~9とか)にするだけでもよさそうにも思えました。
- 5Round制には、教科書全体を繰り返すものの他に、単元ごとに繰り返すものもありますよね。どちらにしても、ただ形式だけ真似るのではなく、生徒が飽きないようにする、理解が深まるようにすることを大切にして取り組むことが大事なのではないかと思いました。
- 5roundは神奈川例会で一度横浜南高校の実践を聴いたことがあります。教科書一冊をまるごと5回ずつ小出しに扱うということだと思います。リスニング、語彙、文法、内容理解、自己表現などとテーマを絞れば優れた実践だと思っていました。十数年経った今の教科書では内容的に面白くないものを5回ずつ小出しにする必要があるのか疑問を感じました。目前の生徒の実態(英語学習歴)がバラバラな小学校から、いきなり中1生に対して実施するのは無謀ではないかと感じます。榎本さんがたった1ヶ月でも自分の生徒の状況をみて、アレンジしたのは良かったと思います。書くことを希望する生徒が多いならば、リスニングを30分テストするのが良い方法とは思いませんでした。
- 5ラウンドは、生徒にとって静かにchallengingっぽいが、creativityからは遠いような? 最終目標だというディスカッションの映像があったら拝見したい。
- 5ROUNDについて学ぶことができてよかったです。わかりやすいお話をありがとうございました。そのようにスキルの獲得に重きを置いた指導だと力がつきそうですね。気になったのは、自己表現とどう結びつけるのかなという点でした。
2) 高校実践報告:「持続可能な社会の創り手の育成を目指して」
山本孝次さん(愛知県立刈谷北高等学校)
レポーターから: 「持続可能な社会の創り手」を育むことが教育の大きな目標であることが改訂学習指導要領の前文に明記されている。しかし、私たちは持続可能な社会の創り手育成を目標とした授業が行えているでしょうか。本発表では、教科書の内容を活かして膨らませながらつくるSDGsトピックのSoft CLILの授業にて、持続可能な社会の創り手育成を試みる実践を報告いたします。
例会でのメモ
■山本さん: 気づく(ジブンゴト化する)のが少ない。SDGsに関するレッスンは確かに増えている。
① 課題を自分事とする
例)温暖化 極端な気象現象の増加と種の絶滅=他人事ではない
② 課題解決方法を安易なものにしない
例)プラスチックのゴミ削減 マイバック、マイボトルだけではダメ。マイクロプラスチック。
実行を促す活動
①「わたしの行動宣言」
②他の人の行動を促す Co2 節電ポスターを作る。再生エネルギー由来の電力会社と契約するように保護者に促す。電力会社に促す。
おわりに「グレタさんのスピーチ」。
●Kさん: 考える手立てがないと考えられない(科学者によって説が違う)。
戦争の問題は中学校で「かわいそうな象」の小学生レベル。高校生らしいレベルとは? 日本から海外に行った留学生が、原爆投下が是とされても反論できない状態。
■山本さん: 温暖化については、国連のこと、パリ協定の温度設定が変わったことも知らない。
●Kさん: フェアトレードについて、中学教科書で解決策は「知ること」「フェアトレード商品を買うこと」となっているが、田舎にはフェアトレード商品売っていない!
山本さんは(環境問題を解決するために)実際に何をしているのですか?
■山本さん: 気候変動や温室効果ガスの問題について知らないまま大人になる人を少なくする。
●Hさん: 新英研では「平和・環境・人権」がある。
参加者の感想
- ありがとうございました。確かに社会が複雑化していて温暖化一つにしてもなかなか簡単に解決できない所もあるので高校時代に深く切り込んで考えるのも大切ですね。
- 実践が聞けるかと思っていましたが、少しお話が抽象的だったのが残念です、環境教育や平和教育は本当に本当に大切で、英語教育を通してそういった内容にそういった内容にどうアプローチするかは私自身も常にテーマとして持っています。次回はぜひ具体的な実践を聞かせていただきたいです。
- 教科書をていねいに分析したことはとても大切なことだと思いました。自分の印象もそれほどずれていないのだとわかりました。SDGs授業をアップグレードする方法について、これからもっとアイディアが出し合えるといいなあと感じました。
- レポートの時間が少し余りましたので、実際の活動例をもう少し紹介してくれたらよいと思いました。
- SDGsの17のテーマが高校13冊の教科書にいくつ、どのように出ているかを分析したレポートでした。小中校とSDGsという言葉は教科書には必ず出てきていますが、その中身がthinkからactionに行くまでには不十分だということには同感です。教科書の教材は新しいものは少なく、4,5年前の事実がいいところです。インターネットの発達した現代では、生徒も関心があればもっと新しい事実や現象、対応に関心を抱くと思います。教員自身がアンテナをはり、生徒の興味を引き出し、発信するまでの教材を開発するべきだと思います。時間が無く、読書ができない今の教員には酷ですが、そうあって欲しいと思います。20年後を見据えた教育をするには今が大事です。
- 何か、執念みたいなものを感じた。でも、「行動」に手が届く授業となるとむずかしいんだろうなと思いました。慶応高校の倉本さんの写真から入る、生徒が質問したくなる授業が重なりました。
近況をお知らせ下さい
- 今年度は横浜市立永田中学校で個別支援級でサポート非常勤しています。全国大会は用事があり講演のみオンラインで聞かせていただきます。
- 高校2年生を担当しています。同僚と共同できるのでありがたいです。夏休みの宿題に、サーロー節子さんのスピーチを読ませるよう準備しています。1年生の1年生の秋に、核兵器禁止条約について学習したので、それと関連づけるつもりです。他教科、総合的な探求の時間、ホームルームと関連付けながら、豊かな英語教育を実現できればと願いつつ。
- 久しぶりに神奈川例会に参加させていただきました。おもしろかったです、ありがとうございました!
- 生徒の自由英作文を効率的かつ効果的に指導する方法を探っている最中です。
- 水金2日の高校の授業担当です。専任の教員とのコミュニケーションをとる時間が少なく、すれ違ったり,誤解を生んだりしています。生徒には極力中身の濃い授業をしたいと準備の時間をとっています。
- 翻訳三昧
授業などに関して困っていること
- 新学習指導要領導入後の生徒たちがしんどくなりました。基礎基本からやり直さなければならない状況です。
- 自分に合った勉強の仕方を選べるように、学習ストラテジーを教える必要があるのかなあ。勉強をしない生徒の中には、勉強の仕方を知らない生徒もいる。
今後の例会で取り上げてほしいテーマ、話を聞きたい講師・レポーターなど
- 予定が合えばまた覗きにきます。参加させていただきありがとうございました。
- (英語教育に)使ってみました生成AI―おススメの活用法―
- 語彙指導
- 5ラウンドシステムの考案者?(てっきり金谷さんだと思い込んでいました)から直接お話を聞いて議論してみるのはとても興味深いです。神奈川ででも良いですが、合同例会でというのもありかなと思いました。ご本人がいやとおっしゃったり、5ラウンドを認めるような会になりそうでいや、とかいうことがないようにしないといけませんが。
- 5 ROUNDの上手な方の授業をみたいです。今日萩原先生が推薦された方でもいいと思います。
オンラインですので、ぜひご参加ください。
お申し込みはメールでください。
●日時:
2024年7月14日(日)午後3:00~5:30
3:00 ~ 入室開始
3:10 ~ 3:55 中学校レポート
3:55 ~ 4:10 質疑応答
4:20 ~ 5:05 高校レポート
5:05 ~ 5:20 質疑応答
5:20 ~ 5:30 事務連絡・アンケート記入
●実施方法
オンライン
●参加条件:
神奈川支部会員、事務局が参加を認めた方
●参加申し込み:
会報担当・和田にメールを下さい。 URL、IDとパスコードを送ります。●内容
中学校実践報告:
「5ラウンドシステムの課題 ~1ヶ月実践の後に〜」
榎本美津子さん(横浜市立永田中学校)
非常勤として、1ヶ月着任した中学校英語科1学年は、今5ラウンドシステムを実践していました。5ラウンドシステムとは何か。どんな点で戸惑いそして克服を試みたか。着任後いかに引き継ぎ、退任に向け次につなげたかを実際使った資料とともに紹介します。
課題の概要として「英文基礎の確立」「ライティングの基本」「遅れがちの生徒への手立て」「定期テストへの対策」「5ラウンドシステム資料の活用」などがあげられます。
自分が退任するときの生徒達は何人もとてもこの学習指導に満足して感謝の気持ちを述べてくれたのでこれで良かったのかなと感じています。
高校実践報告:
「持続可能な社会の創り手の育成を目指して」
山本孝次さん(愛知県立刈谷北高等学校)
「持続可能な社会の創り手」を育むことが教育の大きな目標であることが改訂学習指導要領の前文に明記されている。しかし、私たちは持続可能な社会の創り手育成を目標とした授業が行えているでしょうか。本発表では、教科書の内容を活かして膨らませながらつくるSDGsトピックのSoft CLILの授業にて、持続可能な社会の創り手育成を試みる実践を報告いたします。