『学習指導要領』及び大学入試に対する意見(2021年)
Ⅲ.入学者選抜試験(入試)における外国語について
(1) 共通テストへの民間試験導入が実施寸前に至った原因を分析し、公開することを要望する。
首相官邸主導で始まった専門家不在の共通テストへの民間試験導入は中止になった。なぜ技術的にも理念的にも無理の多いものが、ずさんな計画のまま実施寸前まで行ってしまったのかを、正確に後世に伝えて繰り返さないようにすることが重要な責務と言える。その原因についての詳細な記録作成と公表を求める。
改善協は、学校教育機関が外部検定試験等を児童生徒の英語力の測定に使うことに反対してきた。大学入試共通テストへの民間試験導入にも反対し、過去3年間にわたって、この問題は別紙で特別にアピールしてきた。私たちは、大学入試にもリスニング、スピーキングの要素が考慮されるべきであると主張しているが、民間試験導入がその適切な方法であるとは考えない。大学入試センターなどが充分な人員、機関、予算をかけて、大規模に取り組むべき課題であり、内容も形も外部任せにして構わないかのような安易な認識は間違っている。
(2) CEFRの複言語主義を参考にした入試における言語の多様化を提案する。
共通テストに関する騒動は、英語入試の改革の話題に終始した感がある。しかし、本来は、外国語入試の改革であるべきであった。真にCEFRを重視するなら、その複言語主義の理念を受け入れるはずであり、対象言語の多様化及び英語の相対化は必然である。ところが、今回の入試改革におけるCEFRへの関心は能力のグリッド分けの道具としてでしかなかった。何のために外国語を学ぶのかという原点から考え直し、その理念と矛盾のない入試制度を作らなければならない。
(3) その他、大学以外の入試について
- ア)中学校入試のための外国語(英語)教育が小学生に行われていることへの懸念
小学校での教科化以降、中学校入試に英語を入れる学校が増えている。2021年度は、東京の私学181校のうち、142校が英語を試験科目にしていた。これは「五つの提言」で「中学校における入学者選抜における英語の扱いについて、引き続き慎重な検討が必要であるとの指摘」と言及されたことが、まさに現実化している。
- イ)東京都立高等学校入学者選抜への実質上民間試験導入への懸念
大学入試では様々な問題点が明らかとなり、中止になった。東京都のスピーキングテストでも問題点の多くは、同じであり、むしろ止めない理由はないと言える。