『学習指導要領』及び大学入試に対する意見(2020年)

2024年6月6日

Ⅳ.望ましい『学習指導要領』について

 そもそも『学習指導要領』は教員のための一つの指針として位置づけ、その内容を概要にとどめ、教員や教科書その他の教材などを規制することのないようにすべきである。『学習指導要領』には、「総則」や各教科・科目の各学年の「目標」「内容」などに詳細な指示があるが、これはすべきではない。「五つの提言」は「学習指導要領では、小・中・高を通して1.各学校段階の学びを円滑に接続させる、2.『英語を使って何ができるようになるか』という観点から一貫した教育目標(4技能に係る具体的な指標の形式の目標を含む)を示す(資料参照)(具体的な学習到達目標は各学校が設定)」としている。それを受けて、「答申」も「領域別の目標を含む一貫した教育目標を学習指導要領に設定」と記している。「学習到達目標」の設定については上述のように一律に現場に持ち込むべきものではなく、各学校や教員に委ねるべきである。
 指導内容とその指導時期・指導方法についてはいくつかの考え方があり、これを特定せず、教員が自主性・創造性を生かすことができるようにすべきである。これは、『学習指導要領』を概要にとどめない限り実現が極めて困難である。なお、中央教育審議会の「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善について(答申)」(2008年1月17日、以下「前答申」)は「各学校は、大綱的な基準であるこの学習指導要領に従い、地域や学校の実態、子どもたちの心身の発達の段階や特性を十分考慮して適切な教育課程を編成し、創意工夫を生かした特色ある教育活動が展開可能な裁量と責任を有している」と述べている。大いに「現場重視」であるべきである。さらに、教育再生実行会議が「第七次提言これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、教師の在り方について」(以下、「第七次提言」)で「国は、学習指導要領の改訂の検討に当たり、加速する社会の変化に合わせて、学校現場が適時に教育の在り方を見直し、地域の特色や新たな発想に基づく創意に富んだ教育活動を展開できるようにする観点から、指導方法を画一的、限定的に定めることとならないよう、地方公共団体や学校への示し方を工夫する」と述べている。今回、「答申」が「学習指導要領等は、教育の内容及び方法についての必要かつ合理的な事項を示す大綱的基準」と記述している。これらに私たちは賛成の立場である。
 ところが、「答申」は「学習指導要領等の枠組みの見直し」で「教育課程全体や各教科等の学びを通じて『何ができるようになるのか』という観点から、育成を目指す資質・能力を整理する必要がある。その上で、整理された資質・能力を育成するために『何を学ぶか』という、必要な指導内容等を検討し、その内容を『どのように学ぶか』という、子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要がある」として、「カリキュラム・マネジメント」、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を取り入れている。従来に増して、「縛り」を強めている。一方、「指導法を一定の型にはめ、教育の質の改善のための取組が、狭い意味での授業の方法や技術の改善に終始するのではないかといった懸念」にも触れている。ところが後述のように、中学校や高等学校において特定の「指導方法」を強制している。誠に遺憾なことである。

2024年6月6日知2020

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