神奈川・埼玉・東京合同例会(2023年10月)
秋のアフタヌーン・ミーティング
テーマ:外国語の学びをリアルなものにするには
―児童・生徒を主人公とする異文化理解・交流をどうすすめるか
●日時:2023年10月7日(土)午後2時から午後5時まで
●場所:法政大学(市ヶ谷キャンパス・大内山校舎Y405教室)および、オンライン。
会場参加18人、オンライン参加25人=43人
●講演「デジタル時代の異文化交流と外国語教育」坂本旬さん(法政大学キャリアデザイン学部)
坂本さんは"協同的学び"や"メディアリテラシー"についての著者であり、また「ユネスコスクール」の アドバイザーやiEARNの理事でもある。テキストブックから学ぶだけでは不十分で、communication からcollaborationに発展させることが大切であると考える。異文化交流もイベントのみでは本当の力 はつかない。
探求学習(Inquiry Based Learning)で問いを立てて情報を収集し、分析する力をつけ、行動に結 びつくことが求められている。多くの国が家庭では端末を使えないことも多いので学びには不適であり、 あくまでも学校でdocumentary movieを作り,それをvideo letterとして交換する活動を勧めてい る。2011年に東日本大震災の時に励まされた小学生が2016年のNepalの地震の時にはネパール にvideoletter「届け!僕たちのエール」を送っている。Turkey・USA(小学校), Nepal, Indonesiaと交流。Cambodia 訪問研修。最初はICTの機器の使い方が分からない生徒も,探求のプロセスを入れ ると次第に興味が深まり,映像の取り方なども上手になってくる。イベントで苦労(努力)することが端末 の扱いの上達につながる。今年の夏は8日間Thailandの泰日工業大学(日本語コースがある)にゼ ミの学生を連れて行き、最後の3日間に現地で8班に分かれて映像ビデオを協働制作した。タイ人と中 国からの留学生も日本語で作ってタイ語の字幕を入れた映像ビデオを作った。テーマは"キャリア"で、キャリア教育の授業がない現地の学生の職業観と日本人のそれとの相違が出ていて興味深かった。映 像制作で基本スキルも身につき、オンライン映像交流サイトOATubeの利用などで同期型・非同期型交 流を組み合わせることが大事。まとめとして、globalcompetenceは重要な視点であり、デジタルESD の可能性を活かして、交流から協働へ、体験の言語化でメッセージをもった映像を作ることでこの能力 をつけることができる。
*OECD(Pisa)のGlobal Competenceとは,
「地域社会、グローバル社会そして異文化に関わる問題を考察し、他者の視点や世界観を理解し、そ の価値を認め、異文化の人々とオープンに、かつ適切に効果的なコミュニケーションをとり、共同体としてのグローバル社会の繁栄と持続可能な発展のために行動を起こす能力である。」
●「お互いを知り、自然や文化を伝え合う交流学習」矢野淳一さん(伊豆の国市立大仁北小学校)
2021年に、「日韓教職員交流プログラム」(韓国ユネスコ協力)で釜山市のイ・ミヒ先生3年生のク ラスと伊豆市の2年生のクラスで交流を始め、今年で3年目になる。
My favorite fruits Top3など「I like…」と画用紙に書いたものを見せ、Zoomで紹介し合った。 交流の前にはグループで相談して3つを決め、グループ内でも練習して、楽しく交流できた。2年生は 「生活科」があり、野菜の栽培をして「食べるのはどこ?」と調べる学習がある。落花生は理解しにくい内 容と思い、実際に育てて観察した。韓国には「生活科」がないので興味を持って見ていた。落花生の花が 9月に地面に落ちて突き刺さり、生育していく8日に何者かに食べられた。ハクビシンの足跡があった。 「ハクビシンは木に登れる」「ジャンプする」「強いにおいが苦手」など祖父母から聞いて、木酢液をかけ て予防した。これらを韓国に伝えた。手紙をもらい、日本からも手紙を送った。タブレットでハングルも覚 えて自分の名前やあいさつをハングルであらわした。冬にはクリスマスカードを手作りで。年賀状2023 年にも。韓国からPadletで送ってくれたものを日本語に翻訳して紹介。2年生の最後に振り返り。2月 韓国の修了式時にお別れのテレビ会議をした。参加者から一番良かった経験は何だったかの質問に、 矢野さんは「子どもたちがランキングをつけるときに相談したり、発表の練習をしたりした時が楽しかっ たようだ」と答えていた。
●「"触れる""出会う"ことから学びをつくる―オーストラリア語学研修、韓国からの生徒訪問からの 学び」松倉紗野香さん(埼玉県立伊奈学園中学校)
伊奈学園中学校は埼玉県唯一の県立中学校(一学年80名で2クラス)英語は週5時間。
- 中三の夏休みにオーストリア語学研修(希望制で30名) 2023年度は7/21~8/1にゴールドコーストへ。ホストファミリーと過ごす時間がたっぷりあって、大 学キャンパスツアーなど、盛りだくさん。2日間オールイングリッシュの日々。学校で生徒は、「多様な国・ 地域出身の生徒」と交わり、「あちこちで議論や意見を言い合う雰囲気」にふれる。皆が同じ作業を揃っ てしていることがなく、教室がシーンとなることがなかったとの感想。
- 2021年からオンラインで日韓交流
- 同じ英語の教科書を読み、筆箱の中身を紹介し合う。
- 韓国から生徒が伊奈中を訪れて一日を過ごし、中三の数・英の授業に参加
- Padletで自己紹介スライドを共有
- 翻訳アプリを使い、ドラマや歌手の話題で盛り上がった。
- 今度は私たちが韓国の学校に行きたい、韓国で会いたいという気持ちになったと感想。
●「教科書で学んだ内容に関連して、生徒が話題を選び、作った調べ学習(発表スライド)を題材とした 国際交流」赤松敦子さん(山口県立高森高等学校)
授業で扱った内容に関する調べ学習のまとめとして,生徒が自分の感想と読んでくれる人へのメッセ ージを入れたスライドを作成し,それを外国の学校に送って感想を送ってもらう。あるいは外国の生徒が 同じテーマで自分の国のことに関して作ったレポートやスライドを送ってもらうことを基本にした実践。教 科書の内容と国際交流がつながりやすくなるのではないかと始めた昨年度の高校1年生の実践でし た。
特別進学コース1年生。1学級約30人を習熟度で半分(15人)にしたクラス。
教科書はLandmark English Communication Ⅰ(啓林館)
*授業中でのZoomでの交流は,学校では許可が出ていないので,放課後に希望者だけでZoomで の交流を実施している(この報告には含まれていない)台湾・インド・トルコ(9月から)との国際交流が ある。できるだけ教科書で取り上げた話題に関連しているテーマを年間計画で立てた。
- 4人で9つの班を作る。
- 自己紹介文に否定的・批判的な意見・無礼な表現・からかうような表現は書かないようにすること。
- 個人のメールアドレス・SNSアカウント・個人の写真は載せないこと (写真は本人とは分からないくらいか加工してあるものは可)
- スライドは1つに3文(15words)以上、タイトルと出典を入れて6枚のスライドを作成する。
- スライドの1枚には写真・地図などを入れる。GoogleClassroom/Padlet/PowerPointを使用
Let’sChatwithStudentsfrom Taiwan | 日本の料理を外国の人に紹介する作文 台湾の学校に自己紹介文と共に送付 台湾の学校から返信が来る |
Lesson2HistoryofCurry | 和食の一つを選び、歴史や作り方を紹介する作文 →インドの学校へ送付 →インドの生徒からインド料理紹介文が届く |
Lesson3MySchoolLife (schooluniforms) | MySchoolLife紹介作文とビデオ(風景)制作 制服・行事・学校生活など50words以上で作文 →トルコに・インドに送る →トルコから名所と文化紹介文が届く →カナダから学校紹介文が届く |
Lesson6Gesture? | →日本の身振り手振りの意味を作文する。 |
Lesson7平和教育? | →USAから平和のメッセージが届く→USAに返事を送る |
Lesson8AIと教育? | →日本の教育に貢献した人を調べ作文する |
Lesson10国際交流? | クウェートにクリスマスカードや年賀状を送る →クウェートから自己紹介文が届く |
普段から英語のニュースを読ませ、その感想を書くことを課題にし、また教科書に関連するものであれ ば、例えばアメリカのいじめに関する政府のサイトを検索して英文を読み取り、またいじめをなくす工夫を 作文させている。これらを頻繁に行っていることで、自分で考え、調べ、読み取り、作文する力の素地がで きていることがこの活動の支えになっているのであろう。
(まとめ【講演・高校報告】関口昭男、【小学校報告】棚谷孝子、【中学報告】泉康夫)