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文科省への要望書


 8月3日(日)の新英研京都大会の総会で採択された文科省への要望書を、8月13日に、文科省初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室長へ提出しました。

「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」に関する要望書

文科省への書簡


2014年8月13日

文部科学省初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室長殿

新英語教育研究会

 ご多忙中大変失礼いたします。
 本研究会は、科学的な外国語教育の確立をめざして活動を行っている小学校から大学までの外国語の教員からなる全国組織です。
 本研究会は2014年8月3日の全国大会の総会で、貴省の「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」に対して同封の「要望書」を決定しました。よろしくご検討くださるようお願いします。

連絡先: 奈良 勝行           
 〒187-0042 小平市仲町116-19


 なお、本研究会のホームページは以下です。ご覧いただければ幸いです。
 http://www.shin-eiken.com/

「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」に関する要望書

平成26年8月3日
下村博文文部科学大臣殿

新英語教育研究会 

 平成25年12月、文部科学省は「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」を発表しました。
 私たち新英語教育研究会は1959年に発足した小学校から大学に至るまでの教師からなる民間外国語教育研究団体の全国的組織です。私たちは、日本の英語教育を発展させる観点から今回の計画について多大な関心を寄せております。
 今回の計画では、小学校における英語教育の3~4年生からの実施および教科化、中学校において授業の英語での実施、高校における言語活動の高度化(発表、討論、交渉等)など現場の教員・生徒にとってはそぐわない点を多く含んでおります。したがって、本会は以下の各項目について見解を述べ、実施する政策に反映していただきたくお願い申し上げます。


  1. 小学校英語の実施学年の低学年化と正規教科化について
     小学校の教育現場では英語科の教員免許のない教師が担当しています。日常の授業で少しでも英語の興味を持たせようと担当教師がさまざまに工夫しながら指導していますが、現場からは「うまく展開できない」などの声が多く寄せられています。計画における英語教育の教科化、専科教員やALTのさらなる活用などの方針をだしております。条件の整わない中でのこの方針は小学校教員への負担だけでなく小学生の知的発達に負の影響を及ぼすと考えられるので、撤回していただきたい。
  2. 中・高等学校における英語による英語授業の実施について
     昨年4月から高校では「授業は英語で行うことを基本とする」の方針が実施され、生徒から「先生が何を言っているのかわからない!」といった声が多く寄せられています。こうした高校での検証も経ないまま、中学校においても「授業は英語によることを基本とする」方針を実施したらその傾向が増えるのではないかと心配します。「ベネッセ」調査では中学生がもっともわからないと回答しているのが「英文法」で、78.6%にも達しています。英文の基礎構造もわからないまま、教師が英語で説明を行っていったら「英語がわからない」、「英語が嫌い」がますます増えるばかりかと危惧します。また、高等学校においては「授業を英語で行うとともに言語活動を高度化」との方針が示されております。母語を外国語学習から排除するのは理論的にかつ実践的に誤りだと考えられるので、これらの方針は中止していただきたい。
  3. 生徒および教員に対する数値目標の設定について
     中学校の卒業時点で英語学力「CEFR(注)A1~A2程度(英検3級~準2級程度)」、高等学校卒業時点で「CEFR B1~B2程度(英検2級~準1級、iBT57点程度以上」の達成を目指すとしています。全教員について「英検準1級、TOEFL iBT 80点程度等以上」の獲得を目指すとしています。これらの教育の場に競争主義を持ち込む数値目標の設定は撤回していただきたい。(注:Common European Framework of Reference for Languages)
  4. 大学入試や卒業認定におけるTOEFLなどの検定試験の活用について
     TOEFLは、アメリカの一NPOであるETS(Educational Testing Service)が運営しており、非英語圏の出身者が主に北米の大学等に入学する際の判定の一つとして使われているものです。国民教育として外国語学習の目的や理念への配慮もなく安易にそれを大学入試等に使っていいものでしょうか? たとえば、学習指導要領が求める単語数は中高で3,000語ですが、TOEFLには10000語水準を超える難解な単語が頻出します。外部試験の導入自体が1割のエリートつまり「グローバル人材」の育成と、残り9割の生徒の「切り捨て」につながるものであり、この方針は撤回すべきです。
  5. 2020年度東京オリンピック・パラリンピックと改革計画について
     「グロ-バル人材」の育成を目指すなら、まず基本に徹した教育を行い、時間をかけて言語距離の大きい英語の「聞く・話す・読む・書く」の4技能を養い、学力を向上させていくべきです。オリンピック自体は大切なスポーツイベントですが、英語教育をこのスポーツイベントに合わせて年次計画を立てる必要はないと考えます。オリンピック実施のためでなく英語教育の本来の目標に沿って十分な予算・人員を充当するべく施策を講じていただきたい。 


[資料]

  1. 教育への公費支出の対国内総生産(GDP)の割合と国家予算に占める割合

     日本は、対GDPはOECD37か国中30位、対国家予算は同32か国中32位。
    (出典) 図表でみる教育 2012:OECD インディケータ

    国 別 対GDP割合(%) 国家予算に占める割合(%)
    日本 3.6  8.9
     OECD平均  5.4 13.0
    アメリカ 5.3 13.1
    英国 5.3 11.3
    フランス 5.8 10.4
    ドイツ 4.5 10.5
    カナダ 4.8 12.3
    イタリー 4.5  9.0
    韓国 4.9 15.3
    ロシア 4.7 (不明)
  2. 「英語は他教科より難しい!」
    (問い)「〇〇の授業がどの程度分かりますか?」
    (出典)平成15年度小・中学校教育課程実施状況調査(国立教育政策研究所)
    分からない割合は中学2年で増加し、上昇幅はどの教科より大きく、3年になると他の教科は多少改善するが、英語の割合はさらに増加し、3割近い生徒が「分からない」と感じている。

      国語 社会 数学 理科 英語
    多い ほと
    んど
    多い ほと
    んど
    多い ほと
    んど
    多い ほと
    んど
    多い ほと
    んど
     1年  8.7 20.2 20.1 15.1 20.5
     7.0  1.7 15.2  5.0 14.7  5.4 11.6  3.5 13.8  6.7
     2年  12.6 20.8 24.1 18.0 26.2
    10.0  2.6 15.3  5.5 16.9 7.2 13.4  4.6 16.9  9.3
     3年  10.7 19.4 22.1 12.4 28.3
     8.5  2.2 14.7  4.7 15.7  6.4  9.5  2.9 18.7  9.6

     (注)「多い」:分からないことが多い、
        「ほとんど」:ほとんど分からない

  3. ベネッセ「第1回中学英語基本調査」(2009年1月)
    (1)英語学習でつまずきやすいポイント(生徒調査) (%)
    1. 文法が難しい              78.6
    2. 英語のテストで思うような点数がとれない 2.7
    3. 英語の文を書くのが難しい        72.0
    4. 英語を聞き取るのが難しい        65.8
    5. 単語を覚えるのが難しい         62.9
    (2)「あなたは英語が得意ですか?」
    • 「英語が苦手(嫌い)」の生徒はおよそ6割に達している。



文科省発表の資料



(2014年8月15日掲載)

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