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■ 豊かな自己表現の力をどうつけるか

5つのテーマ

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自己表現は意欲を引き出す魔法のツール

北川 慎一(きたわが しんいち 埼玉・県立本庄北高校)

1.書き続けることの素晴らしさ

 初めて新英研で『自己表現』の実践を知り、実際に自分の授業に活かすようになって26年経ちました。その中で自己表現のもつ魅力と可能性にすっかり取りつかれてしまいました。その間に教えた生徒は問題を抱えた遅れがちな生徒から大学進学を目指す比較的学力が高いといわれる生徒まで様々でした。しかしどの学校でも自己表現は大きなちからを発揮しました。授業がうまくいかない時でも、自己表現が生徒と私をつなぐものとなり、救われました。
 「世界一の学力」と言われるフィンランドの教育は次の5つの力を大切にしていると言われます。①発想力・②論理力・③表現力・④批判的思考力・⑤コミュニケーション力。
 これらの力は自己表現によってまさに身につけることのできるものなのです。
 自己表現は①表現の定着、②発信型の英語、③自己表現が良質の読み取り教材、という意義を持っています。これからそれらを踏まえた実践をいくつか紹介したいと思います。

2.だれにでもできる"One Word"自己表現

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〈資料1〉

〈資料1〉
 「英語の授業に自己表現を」というと何かすごく大変そうに聞こえますが、そんなことはありません。どんな低学力の生徒でも和英辞書があればできます。私の授業は英語の歌で始まります。そのプリントの中にも自己表現の課題を設けることができます。たとえばBette Midlerの"The Rose"。その歌詞の中に'Some say love, it is a river'とう表現があります。これを使って「'Some say love, it is (   )'.の(   )に英語を入れなさい」という課題を出します〈資料1〉
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〈資料2〉

〈資料2〉
この時に注意したいのはすぐに英語で書かせないことです。まず、日本語で書かせる欄をつくります。そしてそれを、辞書を使って英語にさせます。この手順を踏むことによって、生徒は書く内容についてじっくり考えられます。教師の側も生徒が何を書きたかったのかが添削しやすくなります。添削にはALTの力を借りたいものです。そして、生徒の作った英語をまとめて教科通信に載せます〈資料2〉
 これが、生徒の関心を引く素晴らしい教材になります。次の時間は友達の英文の読み取りとなります。

3.「5行詩」で自己表現を

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〈資料3〉

〈資料3〉
 5行詩作りの実践も誰でもできる自己表現です。文法的なことが定着していない生徒でも、5行詩ならできます。書き方について説明〈資料3〉した後に、提出用プリントを配布して1時間かけて辞書を使いながら英詩を書かせました。
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〈資料4〉

〈資料4〉
意外に5行詩の形式にこだわらないで自由に書いている生徒が多くて、楽しかったです。イラストを描かせることも忘れずに。恥ずかしいようならペンネームででも〈資料4〉。生徒の手を借りて詩集に製本して全生徒・担任に配布しました。いつか良い思い出として眺める日が来るでしょう。

4.教科書の感想を英語で表現しよう

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〈資料5〉

〈資料5〉
 教科書の内容について英語で感想を書かせることは、教材の深い読み取りにつながるとともに、友達と英文読み取りの交流ができます。簡単でもよいので、『ここは』という単元では感想を英語で書かせて、プリントにして友達の感想を読み取らせるとよいかと思います。〈資料5〉はマザーテレサの話しが出てきた時のものです。

5.友達の英語を読んでの感想を英語で書こう

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〈資料6〉

〈資料6〉
 〈資料6〉は友達の"I was born to (   )"というOne Word 自己表現を読んでの感想を、日本語と英語で書かせたものです。ここでは共感的読み取りと自己表現が一体となっています。自己表現にはそのような可能性があります。

6.世界につながる自己表現

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〈資料7〉

〈資料7〉
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〈資料8〉

〈資料8〉
 修学旅行で広島や長崎を生徒達が訪れる時、かならず行うのが"Love & Peace Message"の取組みです。外国の人々に話しかけて、自分たちの平和宣言〈資料7〉を渡し、練習しておいた会話表現を使ってメッセージをもらってくるというものです〈資料8〉
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〈資料9〉

〈資料9〉
いただいたメッセージは内容の深い、生きた読み取り教材になります。そしてメッセージをいただいた方にお礼の返事を書きます〈資料9〉。あるアメリカの方が『平和を守るためには軍隊は必要だ』という内容のメッセージを書いてくれたので、そのことに賛成・反対の自分の考えを英語で書かせ、日本の高校生の考えということでアメリカに送りました。インターネットが発達した現在では、外国の方との交流もそれほど難しくはないと思います。

7.自己表現はどんな生徒でもできる

 「うちの生徒に自己表現は無理」「時間がない」という声をよく聞きますが、肩に力をいれずにまず「One Word自己表現」からでも始めてみると、きっとその魅力と可能性のとりこになってしまうと思います。何より生徒の意欲を引き出すよろこびを教師が味わうことが必ずできます。