■ 神奈川新英研4月例会

2011年4月
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■近況報告

  • 辞書指導。映画で生の英語を。
  • 教科書から離れて、映像と長文を総合する実践をしています。今年度は前期だけ週4になったことで時間に余裕ができ、もっけの幸いです。
  • 英単語トレーニングを授業開始時に「写し」→「テスト」(短期記憶の訓練と称して)
  • ビジュアルをどのように活用するか。TV、PC、モニターなど、恵まれた教室なので以下にそれを活用するか。
  • 今年は(非常勤講師で)18コマ(高1、高3)と80分授業3コマ(中1、中2、高1)と、かなり授業が多く忙しいです。
  • 授業は今年度は好調です。ただ、暗唱以降の発展学習について考えがまとまっていない。レールが敷けていないので考える必要があります。
  • 集団授業での生徒たちの理解度の差。授業(50分)の使い方(書く・聞く・話す・読むのバランス)
  • ALTとの授業が週に1回必ずあり、残りは週2時間なので、どのようにALTの授業を活用(運営)していくか。
  • 高3受験補習。人数が多いのでニーズ、レディネスに合う授業が難しい。
  • はじめて担任をしています。授業以外の仕事も増えていますが、どうにかやっています。

■例会に参加しての感想

  • 今日は2人のフレッシュな先生方の真剣な努力と取り組みに触れさせていただきまして、刺激を大いに受けました。ありがとうございました。
  • 職務が別の分野(キャリアサポートセンター)になりましたのでコメントは特にありません。
  • 新任の先生で研究会にいらしている向上心がすばらしいとお思います。応援しています。

■神奈川新英研事務局への意見

  • 関係詞の教え方のレポートが聞きたい。

●高校実践報告:
「初めての授業づくり~生徒と一緒に作ってきたもの~」

香田亜希子さん(県立新羽高校)
 高校で1年目での試行錯誤の様子をご報告いただきました。

(1)香田先生

レポーターから:
教員1年目、私も生徒も、お互い分からないことばかりの中で授業がスタートし、初めは全くの手探り状態。生徒の「分からない、つまらない、めんどうくさい」という声と向きあいながら、少しでもより良い授業ができるようにと試行錯誤し、1年間生徒たちと一緒にいまの授業をつくってきました。授業の記録や、生徒の様子、また私自身が授業の中で苦労したこと、うまくいったと感じたこと、まだまだ課題として残っていることなどをお話したいと思います。

(2)授業

  1. ミニ模擬授業 『Big Dipper』(萩原先生から「2のOral Introductionと3の単語を入れ替えてもいいかも」というアドバイスがありました)
    1. 1) Quick-Quick-Quick:Classroom English versionをおこなった。1週間に1枚ずつする予定(現在形や過去形などを文章で)。英語を見て英語を言う→日本語から英語を答えたらOK。
    2. 2) Oral Introduction: 3枚写真(上戸彩、アニマル浜口、インドの子ども)を見せて黒板に貼る。「共通点は?」と問い、smilingと答えを引き出す。When do you smile? I smile when I feel happy.などのやりとりをして、 unhappy, sadなどの語を板書。
    3. 3) 単語:教科書に出てくる10語をフラッシュカードでゆっくり見せて覚えさせる→ワークシートに4つクランがあって英単語(universal, fact, anger, fear)を記入させる→答え合わせ&発音。これが終わって教科書を開く。
    4. 4) Listening
    5. 5) 内容理解Q&A
    6. 6) 文法説明
    7. 7) 音読
  2. 授業づくりで大切にしていることは、とにかく「集中力」。1つのことを20分以上させない(辞書、小テスト、要約なども適宜入れる)
  3. 実際の授業(DVD):今回の例会ではDVDの録画がうまくいっていなかったので、残念ながら観ることができませんでした。
  4. 今の授業にいたるまでの試行錯誤
    1. 1) ポイントのない「詰め込み授業」
    2. 2) プリント書くだけ「楽すぎる授業」
    3. 3) やりたいことが「ありすぎ授業」
      ⇒ ポイントは "内容理解" にしぼる(Q&Aに答えられればいい)。 生徒に"楽をさせない"(プリントは渡さずノートにする。単語はプリント1枚。全訳は渡さない。80%理解できればよい)。 やることは1つ。アプローチはたくさん。
  5. まだまだ残る課題
    1. 1) 和訳は本当にさせない?(迷っている)
    2. 2) 理解度の差:分かっていない人に合わせたら「そんなの中学でやったよ」となってしまった。今年は分かる人に合わせているがどのくらい理解しているか分からない。
    3. 3) 生徒指導(声を出す≠うるさい)
    4. 4) 文法指導 など

(3)質疑応答

  • Q:教科書は易しいレベルか? スラッシュは入っているか?
  • A:『Big Dipper』(数研出版)は易しいが生徒には難しめ。スラッシュはLesson 1のPart1のみ。
  • Q:担当は?
  • A:英語I(4時間×3クラス)とオーラル(2時間×1クラス)で14時間。
  • Q:意味を書くのは生徒はどのくらいできますか?
  • A:フラッシュカードをやったら100%です。「なんだっけ?」と教えあっている。
  • Q:生徒への指示は?
  • A:できるだけ英語を使うようにしているが、日本語もある。

(4)意見交換

★フラッシュカードの使い方
萩原:フラッシュカードの紙の質は大切。
泉:昔は板目の紙を使っていた。最近は画用紙にしている。コピー用紙ではちょっとペラペラかな(「厚紙を中に入れても良い」という意見もあった)。北海道の先生がやっている方法を紹介すると、単語は10個ではなく5~6つで十分。左手でもって右手で表裏にする、または両手でする。「悲しいは英語で? (生徒はsadと答える)、ずっと英語で言ってね。sad(生徒はsadと答える)、悲しい(生徒はsadと答える)、sad(生徒はsadと答える)。
吉牟田:文字は中央に(手で隠れてしまう)。
船木:コピー用紙B4の2つ折りでしっかりしている。まくって下に落としていくやり方で速くできる。「品詞を入れる」「赤でアクセントを入れる」「フラッシュカードの位置は口元のそば(アゴのすぐ下)」。脳の切り替えが多いので、英語から日本語をすぐにするのではなく、英単語をざーっと読ませて、日本語を見せて英語を言わせる、のように分けている。
泉:あえて英語から日本語の切り替えをさせている。
萩原:英語から日本語の切り替えは習熟度の差によると思います。フラッシュカードの使い方は本にも載っていない。(例会で情報を共有できて良かったです)。
萩原:Quick-Quick-Quickがウォームアップになっている。
★オーラルイントロダクション
和田:オーラルイントロダクションで教科書の本文をなぞる部分があるといいと思う。以前の例会で「アイルランドはエメラルドグリーン」という一節をみんなで練習したが、今でも覚えている。
泉:生徒によっては辛いかな?
船木:生徒の理解度によるかも。うちの生徒は英語だと聞く(日本語だと聞いてくれない)。英語だけで押し通した方がいいのかな。でも生徒のreadinessで替えないといけない。
吉牟田:英語がトラウマになっている学生たちだが英語で話しかけると聞いてくれる。ポイントを絞って、コンパクトにすると良いかも。
★和訳と文法について
萩原:和訳は「先渡し」「中渡し」「後渡し」「渡さない」の4通りある。どうでしょう?
和田:フレーズ訳ではだめ?
香田:意欲があるが英語力のないという生徒が全訳をほしがる。共通テストで6点分、和訳を出題している。
関口:日本語の長い文がわからないという人がいる昨今、構文が取りにくいところや大切な文章をいくつか訳せばよい。和訳は最初に渡していいかも。
萩原:テストに和訳を出題するかどうか次第。
鶴指:他の先生とのかねあい(和訳を渡すといやがる先生もいる)。
萩原:文法指導は、教科書全体を見ておく。年間を通して考えておく。and, orの使い方。A, B, and C、否定語+A, B, or C。Part 2では代名詞のthey, themが4回出てくる。

(5)参加者の感想

  • 1年目の反省をして、2年目は新しいカタチにトライというところが立派。長いことやっていると、毎年同じようなやり方に終始しがちになってしまうんですよね。
  • 授業の進め方が参考になりました。
  • プリントや授業の流れが大変参考になりました。ありがとうございました。
  • 「始めての授業づくり」にしてはすごく色々な試みをされているようで頭が下がります。ハンドアウトも改良を重ねて、徐々に生徒の取り組みやすいものになっていると思います。高校の教科書はレッスンの内容が課毎に大きく変わるので、それに合わせて生徒のする活動を大胆に変えてみることも必要ではないかと思います。各課に共通する活動とその課独自の活動を入れるとマンネリを避けられると思います。もちろん生徒の反応を見ての話ですが。クラスごとに異なる生徒の個性や教える側の個性(趣味)が出せる部分があるとお互いに楽しさが増すように思います。生徒の普段の生活情報の発表の場とか、教師の英語による自己表現とかがあってもよいと思います。
  • 会報担当和田から:
     和訳の当て方が気になりました。Quick-Quick-QuickでのTime is up! 「そこまで!」、Attention, please.「こっち見て」、また、フラッシュカードでuniversal「世界共通」。私の考えですと、Time is up! 「時間切れです!」、Attention, please.「ご注目願います」がいい。なるべく、かけ離れた日本語でないほうがいいと思うのです。
     また、例会終了後、「フラッシュカードでuniversalは『世界共通』という和訳を当てていましたが、形容詞なので『普遍的な、世界共通の~』がいいと思いますが…」と香田さんに問いかけたところ、「生徒が和訳するときに、本文がSmile is universal.  ほほえみは世界共通です。と和訳できるように、そうしています」とのことだった。「世界共通の」にすると、生徒が和訳を「ほほえみは世界共通のです。」としてしまうから…、という説明でした。しかし「和訳するときは自然な日本語にしましょう」と言えば良いのではないでしょうか? 品詞を理解させる重要性もう一度考えてみてほしいです。

●中学実践報告:
「新任1年目を振り返って」

岡田理沙さん(大和市立上和田中学校)
 試行錯誤されながら1年目を終えた岡田さんの報告です。

(1)岡田先生

  • レポーターから:この1年を振り返って、自分なりに工夫してみたことや困っていることなどをまとめて発表したいと思います。先生方からたくさんのアドバイスをお願いいたします。
  • 生徒の様子:小規模(1学年4クラス)、1年生のみ少人数実施。学力が高い生徒もいるが、あまり学力が高くない生徒、素直な生徒が多い。前期入試で受かる生徒と後期の生徒との「温度差」がある。
  • 岡田先生:昨年度は3年生と1年生少人数クラス担当、今年度は1年生担当

(2)授業:継続して行った取り組み

1) 英語の歌+辞書引き
  • 毎時間、授業の始めに歌を流す(歌を楽しみにしている生徒が多く、歌をきっかけに英語に興味を持つようになった生徒もいる)。マイケル・ジャクソン、カーペンターズ、レディ・ガガなど。
  • その後、歌詞の中から2~3個単語を選び、紙の辞書で調べさせる
    →辞書に親しませることができた。休み時間に辞書を見ている生徒も多い。
2) オリジナル文章作り
  • 新出の文法を学習したら、その文法を用いて自分で文章を作らせる。
    例)want 人 to~ という文型を学習したら、I want my mother to clean my room. など自分の気持ちを作文させる
    →英語力が高い生徒でないと作文は難しい。どの生徒も作文できるようにヒントを出すなど工夫が必要。
3) ノートづくり(プリントを渡す先生は少数派)
  • 予習で本文写しと単語調べをさせ、授業で和訳と大切なポイント(新出文法や覚えて欲しい熟語など)を記入させる
    →何を書けばよいかが明確だったので、各自でわかりやすいノートを作ろうとする努力が見られた。
4) 単語プリント(試験範囲の新出単語とその意味)
  • 前の先生が渡していたので生徒がほしがったので、気が進まなかったが作った。
5) 教科書の題材で面白そうなことを紹介
  • 中国の食事の話のところで、中国語を紹介。「手紙はトイレットペーパーだよ」。

(3)反省・今後の課題

1) 教科書本文の扱い方
  • 予習で本文を写させ、授業で訳を確認するという形をとったが、訳に時間がかかってしまい、生徒が英語を使って活動する時間が少なくなってしまった。
  • しかし、3年の教科書となると、文も長くなり、学力が低い生徒にとっては1文ずつ意味をとっていくのがやっと。丁寧に訳し方を確認する必要性も感じている。
2) コミュニケーション活動のやり方と評価の方法
  • ALTの先生が来たときは、ターゲットの文法を含むダイアローグをいくつか作ってもらい、それをベアで練習したあとに、私かALTの先生の前で発表するという形の授業が多かった。
  • 毎回同じやり方のことをやるので、ワンパタンに感じてやらなくなってしまう生徒も多い。
3) 文法の練習問題
  • 教科書の文法の練習問題だけでは少ないと感じている。
4) 長文読解の練習
  • 長文読解が苦手という声が多い。初見の長文を読むことを授業にもっと取り入れれば良かった。

(4)質疑応答

Q:ALTは年3回来る?
A:3週間から1ヶ月。
Q:英作文は?
A:ノートに書かせて発表させた。おかしい文では笑いが起きた。
Q:辞書は?
A:全員持ってくるように言ってある。電子辞書はダメ。ない時は貸し出し。
Q:単語50語の評価は観点別で何に入れる?
A:言語文化の知識。
  →Iさん:関心・意欲
Q:和訳の仕方は?
A:L6のキング牧師のところは25分。生徒に当てて読んでもらった。
Q:ワークブックは?
A:テスト前に自宅学習。
  →Fさん:タイミングが大事なのでその日のうちに宿題にすると良い。

(5)意見交換

★教科書本文のノート作りについて
萩原:レアなケースではないか。
日比:教科書コピーを拡大して左に貼り、右に和訳させて、予習ノートをチェックしていくという先生がいてびっくりした。
船木:高1で「漢字でどうかくの?」と和訳を書く授業になっていて、そこから脱出しようとした。番号とスラッシュの着いた英文とポイントになる日本語の穴埋めにした。良かったが、そのプリントがないと勉強できなくなってしまった。今年は作らないつもり。
泉:ホライズンで中1は全訳。中2,3はポイント訳。
★ 長文読解の練習
萩原:長文が読めないのは高校でも同じ。中学教科書300 words、高校入試500〜600words、そのギャップを埋める必要が合う。日本語の質問を与えておいて読ませる方法がある。
船木:長文読解では時間を計らないと…。

(6)参加者の感想

レポーターから:
 月曜日からまた工夫してやっていこうと思いました。先生方からアドバイスをいただき、疑問に思っていたことが解消され、大変勉強になりました。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
  • ALTとの授業は生徒にとっては現場なのだから、印刷され、準備された英文を口頭発表させるんじゃなくて、"*I want to eat food is sushi."のようなギリギリの言葉が生まれていい。ちょっと偉そうに響きそうだが、ALTに授業案を頼るのは、違うと思います。
  • 授業の進め方、和訳の進め方、ALTとの授業の進め方が参考になりました。
  • 自分もプリント中心になってしまってノートがおざなりになっているので、どう取り組むか工夫が必要だと思いました。ノート指導を発展させた発表を次回期待しています。
  • 新任で3年生の担当の場合には、どうしても、1.2年生を担当してきた先生のやり方に合わせるしかないとは思いますが、その中でも岡田さんが自分なりにこだわりを持ちながらいくつかの取り組みにチャレンジしていたのは素晴らしいと思います。ゴールを見据えて(つまり3年生でどんなことができる生徒に育てたいのか)、1年、2年でそれぞれどこまでの力をつけたいか、そのためにはどんな取り組みをするべきか・・・という自分なりのビジョンを持てるように、頑張って行って欲しいと思います。ALTとのTTで行っていたものはどう考えてもコミュニケーション活動とは程遠いものだと思います。生徒の満足度、充実感も期待できないと思われる場合には、遠慮しないで、JET主導でお願いした方がいいと思います。
  • 歌による単語の辞書引き、ノート作り、題材に関する発展情報の紹介などは生徒の興味を引き、定着する力につながっていると思います。このような生徒の取り組みが積極的になるものを続けていけばよいと思います。和訳、自己表現(作文)、ALTの活用などは課題が多いと思いますが、同僚や研修でのヒントをもとに改良することができると思います。今後も生徒の反応を見ながら、失敗に学びつつ少しずつ前進させましょう。自分もいつもうまく行かないことから多くを学んでいます。

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(2011年4月17日掲載/8月29日更新)