■ 神奈川新英研2月特別例会

2011年2月
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2月3月4月5月6月7月9月10月11月12月
2011年2月19日 大倉山記念館にて 参加者41名

■近況報告

  • できるだけ説明せず、すぐに活動にもっていく授業。ノートに書かせて、正誤判定させてすぐに手を挙げさせる。
  • 直読直解ができる力を育てる授業を心がけていますが、難しさを感じています。
  • 学力差がどんどんついており、わからない子で、勉強嫌いの子が授業に集中できていないので、少しでも集中させるにはどうしたらよいか悩みます。
  • カード教材(自作)でのcollocation指導。
  • ワンパターンにならない音読指導。生徒をあきさせない指導。ちょっとした雑談など、どんなことを話せばいいのか。」
  • 「映像と長文で巡る世界の現場」と銘打ったリーデイング活動。
  • 飽きない音読指導が難しくて悩んでいます。色々試すのですが、1,2週間で生徒が飽 きてしまうので方法を探しています。
  • 非常勤講師として4月から私立の中学校に勤務します。新任、非常勤ということで、その学校の指導法に沿って教えることになりますが、可能な限り自分のカラーを出して生徒が楽しめる授業にしたいと思っています。
  • 来年度、無所属かもしれず、ちょっと不安な日々です。

●中学実践報告: 「英語授業の幹をつくる
~アウトプットにつながる音読指導・語彙指導とは~」

北原延晃さん(港区立赤坂中学校)

北原メソッドでは、音読や語彙指導を理論で裏打ちしながら、量を確保しつつ、丁寧に積み上げていきます。薄っぺらな教科書を使い続けて久しいので嘆かわしい昨今ですが、さまざまな活動を通じて豊かな感性を育てる教材を入れていくヒントが北原先生の実践から得られると思います。What did you eat? と問うと、I ate fish.と答える「スケルトンな中学生」になっているという批判的な眼を持つ北原先生は「テストに出さなければいいのだから…」と考え、sardine(いわし)、mackerel(さば)などのspecific(具体的な)語彙を授業で扱われています。「maple treeはカナダの国旗にある」というコメントもされていましたが、北原先生の方針に私も大いに賛同します。

(1)北原先生

  • 事務局から:あのNHKの「わくわく授業」でも取り上げられた北原延晃先生をお招きして、中学校の英語授業づくりについてのワークショップを行っていただきました。中学卒業時に、学年在籍生徒の30%が実用英語技能検定試験(英検)準2級を受験し、学年在籍生徒の16%が準2級を取得し公立中学校日本一(平成18年度英検表彰)となった指導の秘訣はどこにあるのでしょうか。
  • 講師紹介:東京都葛飾区生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中はESSに所属し英語劇に打ち込む。東京都の公立中学校5校を経て、現在、港区立赤坂中学校教諭。東京都中学校英語教育研究会研究部部長。英語基本指導技術研究会(略称:北研[きたけん])主宰。趣味は料理と素潜り漁。
  • 著書:中学教科書『Sunshine English Course』、『英語教師の知恵袋』『決定版!授業で使える英語の歌20』(共著・開隆堂出版)、『スーパー・ペアワーク 1年~3年』(正進社)、『中学生のためのLISTENING TRAINING POWERED』(共著・学校図書)など。
    お薦め:『英語授業の「幹」をつくる本(上下巻)』(ベネッセコーポレーション)
    上巻=「北原メソッド」の効果、「小学校英語活動とのスムーズなつながり」「発音指導」「辞書指導」「語彙指導」「音読指導」「リスニング指導」「スピーキング指導」
    下巻=「授業におけるしつけと生徒指導、ペア学習」「文法指導」「リーディング指導」「ライティング指導」「英語の歌」「評価」「少人数習熟度別授業」「教師の研修」「英語教室をつくろう 」
  • 都中英研研究部HP
  • 英語基本指導技術研究会(北研)HP
  • 赤坂中学:隣の小学校(5~6割が私立中学へ進学)からしかこなかったが、今は港区の10校から生徒が集まる。「小学校での英語活動は大嫌い!」(小1~6で週2時間)という生徒が来るので、「英語はイヤ」というマイナスからのスタート。
  • 異動したばかりの頃は生徒が信用してくれず、「音読・発音は大切だよね」と言っても浸透しなかった。北原メソッドと銘打ってもみんなができるものでないとダメ。初年度はバラバラだったが、2年目に年上の先生が「北原メソッドでやろう」と言ってくれた。
  • 師匠は長(おさ)先生(太田洋先生も薫陶を受けている)。

(2)北原メソッド

  • 北原メソッドの特徴:
    1. 家庭学習(自学)と授業の連動:「単語10回書いてこい!」のような無駄な勉強はさせない
    2. 量の確保(4技能と語い、発音):英文メールマガジン「じゃれマガ」(80 wordsを2話分)をメールで119号まで配信。これを読み飛ばさせている。
    3. 赤ちゃんが言葉を覚える過程を大事にする(脳科学理論に立脚)=発音の重視(英語脳の構築)、和訳の排除(英語脳の構築)、「テキトー」に「何回も」(ストレスを与えない、飽きない繰り返し)
    4. 豊富で丁寧な語彙指導=単語単体でなくcollocationを重視
    5. 音読の徹底=1年生は最終的に各ページ50回音読、2年生は暗写まで。
  • 「北原メソッド」の最新データ(平成22年12月1日現在):本校3年生(在籍数33名)の第2回検定終了時の英検級取得者数と取得率(カッコ内は「公立中学校日本一」として表彰された前任校の数値=NHK「わくわく授業」)
    準1級=1名、2級以上=4名 12%(1%)、準2級以上=9名 27%(16%) 、3級以上=27名 82%(53%)、4級以上 32名 97%(50%)
  • 「どうしてこんなに英検に合格するのか?」:準2級以上は1次試験が難しい。1次を突破すれば2次は特別な訓練なしに、学校の授業で100%合格させられる。STEP英語情報2010年11, 12月号を参照。

(3)音読指導

  • 音読指導の基本 ~全員が教科書をスラスラ読めるように~:語彙指導、発音指導を『英語授業の幹をつくる本』(上巻)第3,5章のように進めながら、教科書の音読を並行して指導する。音読は、生徒の発達段階、授業での位置づけ、次に控える活動などによって適時使い分けて「単調な繰り返し」に陥らないように配慮。
  • 音読までの授業の流れ:ビデオ「スピーキング活動の絶対評価実例シリーズ」(TDKコア・開隆堂)第1巻参照
    1. 語彙・文法復習プリント「English Express」(*Sunshine English Courseでは「スパイラル・ワークシート」)を使った既習語彙・文型の確認( 5~10分) (2,3年)
    2. Picture cardsを使った活動( 5~10分):Q&A(1年)、Q&AとPicture Describing(2年)、Picture Describing(3年):Picture DescribingについてはDVD"6-way Street"(BUMBLEBEE & MEDICOM)下巻Disc 1(2003.7)及びライブ版(2003.8.26筑駒)Disc 3参照
    3. oral interaction / introduction( 3~5分)
    4. 語彙指導( 5~8分)
    5. 内容理解( 5~10分):ジェスチャーを使う(1年)、Q&A+指差し(2年)
      指差し+速読(3年):3年生は音読の回数を減らし、速読・skimming・scanning中心。
    6. 音読( 5~10分)、個人読み(2~5回、2分)
    7. ☆読み(25回以上読むのが宿題。☆5つ以上がその日の家庭学習の目安である)
  • ジェスチャーリーディング:「英語は難しい」「なかなか覚えられない」そう言う生徒は多い。それならば全身を使って英語に取り組ませようと思い、音読の際にジェスチャーをつけさせた。最初が肝心なので1年生の最初からHello. My name is .... と言うときは「片手をあげて、次に自分の胸に手を置いて、名札を指すようにして」、Nice to meet you.は笑顔で握手をするジェスチャーで、といった具合である。Iとmyのときには自分の胸に手を置く、Youとyourのときには掌を上に向けて相手を指す。一語一語にジェスチャーをつける必要はなく、音読とシンクロするようにジェスチャーをつけさせた。すると生徒から「覚えやすい」という感想が帰ってきた。身体は動作を記憶しているから言葉を忘れてもジェスチャーが言葉を引っ張り出してくれる。しかも語順指導もあまり要らなくなった。このジェスチャーリーディングは2003年に放送されたNHK「わくわく授業」をご覧になった方々から絶賛された。利点として「理解・表現に日本語を介さない」(one channel activity)「英語の語順が自然に身に付く」「たとえ忘れてもジェスチャーが言葉を引っ張り出す」「意識が内容語に向かうため機能語の使い方が潜在化(無意識化・自動化)され、発話がスムーズになる」
  • ピクチャーカードを使ったQ&A:「英語授業の幹をつくる本」(上巻第8章参照)
    New Crown1年の登場人物たち
    ライティングノートに書いてみよう。
     加藤 健
    ページ カテゴリ 内容
    0国籍日本
    0居住地日本
    16立場中学生
    12趣味音楽
    73楽器フルート
    37行動遠足でエマと同じ班
    37行動ビニール袋を見つけた
    48行動時々沖縄に行く
    52行動歌がうまい
    52行動土曜の夜に歌の練習をする
    84行動Paul, Ratnaの国語の宿題を手伝う
    88行動Peter RabbitについてMaryに質問した
    90行動父親はThe National Trustに詳しい
    スピーキング例:Ken is Japanese. Ken lives in Japan. He is a junior high school student.
  • 北原さんのお話:「健は音楽が趣味。He likes music. His hobby is music. One of his hobbies is music. 遠足で健はエマは同じ班。Emma is a member of his group. His group members are Emma and Ken. 言いたいことを言うのにいくつも形式がある。『さっきの3組では4種類、出ていたよ…。では、おしまい!』(そこで先生は答えを教えないこと! みんなで考えると良いということを生徒が自覚するようにする)、「『言えるようになったら、ノートに書いてごらん』という。学校でも家でも書いて良い。「定期試験で『健について書いてください』と出題し、点数取り放題!(1文につき2点。110点なら100点にする。バツいっぱいでも100点!) 中1の3学期から中3の2学期までで2800文も書いている。」
  • 教科書本文の扱い方:教科書を手に持って読む(しつけのひとつ)。ジェスチャー付きで指し示す。イメージ(映像)を思い描く。早く言えるように。単に早くというのではなく、例えばThis is Daichi.を2拍で(名詞は強く)。和訳しない。なんとなく分かればよい(分析しようとしない)。中学生はholistic(全体論的)にザクッと切り取る、高校生は analytic (分析的)に。発音は全員でチェック(th, f, rとlなど)。モノローグ暗唱、ダイアログはペアワーク。
    New Crown Book 1 Lesson 5-1 "My Friends in Okinawa"
    This is Daichi. He is my friend in Okinawa. He is a singer of folk songs. This is Yuri. She is my friend too. She is an Eisa dancer. She is in the dance club.
    Target: This is Koji. Koji is from Osaka.
    This is Koji. He is (He's) from Osaka.
    New Words: he singer of song she dancer dance club
  • ノートに書いたものが間違っていたら、文のあたまにバツをつけるだけにする(=間違いは自分で考える)。
  • 教科書を扱った翌日:How many times did you read the textbook? と質問。星10個で50回分。全員起立してもらい、How many stars are on your page?と質問し、音読した回数が多い順から座っていき、音読が少ない人に読んでもらったり、昼休みに呼び出したりする。次に、先生がジェスチャーし、クラスの人を指さす。みんなはそれに合わせてThis is ….と言う。「映像をことばに、ことばを映像にしていく」。
  • 映像で見る3年間のスピーキング能力の伸張:
    1年:
    スピーチ「自己紹介」9月、スキット「電話」2月、絵本の朗読"Olivia"  3月(計6時間:グループ決め、原稿理解、読み合わせ、掛け合いで3時間。4時間目にリハーサルで進んでいる班にやってもらいアドバイスする。5時間目でビデオ撮り、6時間目で相互評価。そして次の学年には前の学年の映像を見せるとうまくいく)
    2年:
    スキット「買い物」5月、スピーチ「将来の夢」3月(1分40秒以上話すこと)10月、紙芝居「日本昔話」(小学生に見せるという想定。浦島太郎、かぐや姫、鶴の恩返しをジャパンタイムズ社の本をリライト。かぐや姫の物語をふまえてMy wife ad I have wanted a child for a long time.という例文を1ヶ月後の中3のはじめに出すと、生徒はすぐ理解してくれる。初見の文が読めるのが目標。以前は絵を紙芝居にして読む活動だったが、今の学校では「暗記ですか_」と訊くので、思わず「そうだよ」と言ったら、生徒は暗記できてしまった。) 
    3年:
    スキット「道案内」5月(授業の翌日に発表。生徒のスキット例:
    Would you show me where we are on this map?
    Sure.
    How long does it take to get there?
    Which way should I go?
    This way.
    Where is Akasaka Sakasu after all?
    Cross the road at the third traffic light.
    Sakas is in front of the movie theater. ) 、
    Show & Tell "My Memories in Kyoto & Nara"(ALTと2分間話し続ける。生徒の会話例:There are a lot of deer in Nara Park. I was excited. I touched them. )、
    スキット「完全自由」10月、
    英語劇"Whose Double Cheeseburger Is This Anyway?"10月、
    ピーキングテスト「日本文化紹介」11月

(4)語彙指導

  • 「英語授業の幹をつくる本」上巻第5章「語彙指導」を参照
  • 現行学習指導要領: (ア)別表1に示す語を含めて,900語程度までの語(季節,月,曜日,時間,天気,数(序数を含む),家族などの日常生活にかかわる基本的な語を含む)、 (イ)連語のうち基本的なもの、 (ウ)慣用表現のうち,excuse me, I see, I'm sorry, thank you, you're welcome, for exampleなど基本的なもの。
  • 新学習指導要領:(ア)1200語程度の語。 (イ) in front of, a lot of, get up, look forなどの連語、 (ウ) excuse me, I see, I'm sorry, thank you, you're welcome, for exampleなどの慣用表現
  • 北原さんの方針:中学では生徒の持っている外来語(カタカナ語)の知識を利用する。主な品詞の概念を教える。単語単体でなく、collocationを大事に指導する。receptive vocabularyとproductive vocabularyを差別して教える。多く提示して歩留まりで勝負する。語彙の増やし方の基礎を教える。(接頭辞・接尾辞など)
  • フラッシュカード: ピクチャーカードを使ってoral introductionをやってnew wordsの音を聞かせた後、
    1. 黙って見せる(生徒自身に発音させる。自立した学習者を作るためには絶対不可欠)
    2. 発音にスポットを当てる(フォニックスのルールに触れ、既習語を思い出させる。例えば「eaをイーと発音する語は?」をクラスで協力して思い出す)
    3. 裏面を見せながら、意味にスポットを当てる(細かなニュアンスは辞書で確認させる。辞書指導の絶好のチャンス。必ず文の中で提示。コロケーション指導をしないと使えない。既習の反意語、同義語を言わせる。 未習語はだめ!)
    4. 表面と裏面をフラッシュさせて、もう一度、発音練習
    5. 表面を素早く見せて発音させる(語の形で認識)
    6. 語の最初の3文字を見せて発音させる。 → 実際的
    7. 語の最後の3文字を見せて発音させる。 → 限られた語いの中なら推測可能
    8. 裏面を見せて発音させる。
    9. 裏面を見せてつづりを書かせる。Write the spelling in the air.
  • 理論に裏打ちされた語彙指導を:望月正道・相澤一美・投野由紀夫共著「英語語彙の指導マニュアル」(大修館書店 2003)に基づき、都中英研研究部では「語い指導チェックリスト」を作成した。1つの語を指導するのに多角的に何度も提示した方が記憶に残りやすい。(都中英研研究部平成15年度研究冊子より項目を抜粋)「生徒がすでに持っているカタカナ語の知識を利用する」「フラッシュカードをフラッシュさせて使う」「フラッシュカードの最初の1~2文字を見せ素早くその語を言わせる」「アクセントをしっかり指導する。生徒も意識して発音している」「ニュアンスの違いを(日本語などを使って)説明する。例 lookとsee, watch」「接辞(接頭辞・接尾辞re-, un-, pre-, -ation, -ful, -ment)の指導をする」「生徒が話したり、書いたりする活動で既習の語いを使うように指導する」など。
  • カテゴリー別単語書き(2年生):ディクテーションテスト直後に1分間の時間を与えてカテゴリー別に語彙を書かせている。目的は生徒個人が持つ語彙を共有させることにある。
    1. ディクテーションテストに続いて行う。カテゴリーを与える。ディクテーションペーパーの裏に単語を書く。(つづり間違いは気にしない)
      例 Today's category is animals. You have one minute. Write as many animal names as possible.
    2. (1分後)書いた数を挙手によって尋ねる。
      例 How many words have you written? Zero? One? Two?....
    3. 一番多く書いた生徒に言わせる。
      例 S1, will you tell us your words?
      生徒が速く言った場合は友だちのためにゆっくり言うように指示する。
      例 S1, slow down so that your friends can write down the words.
       一般生徒は自分が書けなかった語でその生徒が言った語を赤ペンで書く
    4. 他の生徒に尋ねる。挙手しないで発言するように言う。
      例 Any other words? You don't have to raise your hands, but just tell us.
    5. 生徒は返されたディクテーションペーパーをディクテーションノートに貼り、裏の単語を写す。つづりの怪しい語や分からない語は辞書で調べる。単語を書く欄は広めにとっておき、後日そのカテゴリーに入る語を習ったり、思い出したら書き込めるようにする。
      ★これまでに使ったカテゴリー:animals, fruit, vegetables, sports, colors, food, drinks, jobs, body parts, countries, flowers, fish, stationery, electric appliances, landmarks in the city, something about Christmas/nature/winter, something you see in the sky/on the beach/in school/in the kitchen/in this room, something you ride on, 感情を表す形容詞、首から上を使う動詞、前置詞
    6. ディクテーションノート兼ボキャブラリーノートの例
      Dictation Card ( )月( )日 2年( )組 氏名 
      animals
      書けた語 horse dog cat monkey elephant tiger camel
      友達が言った語 pig donkey snake gorilla cow mouse
      思い出した語 giraffe dinosaur fox dolphin
      新く習った語  whale hippo
  • 受容語彙と発表語彙を区別して指導:授業で「家に帰って単語を覚えるな。単語は授業中に全部覚えてしまうようにしなさい。家では句・文単位の勉強をしなさい」と言っている。ワンセクションに出てくる新出単語を全部授業の中でつづりまで覚えることは不可能である。語彙は使用頻度によって軽重をつけて指導すべきである。語彙には「受容語彙」(receptive vocabulary)と「発表語彙」(productive vocabulary)がある。
    1. 受容語彙(発音できて意味がわかる)
    2. 発表語彙1(ある概念を頭に浮かべた時に音が頭に浮かぶ。スピーキングに使用)
    3. 発表語彙2(その音を文字化できる。ライティングに使用する。)
    4. 受容語彙のうち、いわゆる「題材語」。教科書語彙では考慮した方がいい。そのトピックのために使用せざるを得ない語。中学生レベルでは1) に達しない語彙。
  • まとめると私は軽重をつけて授業では3) を一番時間をかけて2)、1)の順に重きを置いて指導している。1セクションに出てくる3) レベルの語は(学年によっても違うが)そんなに多くない。2、3年生の場合、それらは授業の中で綴りまで覚えてしまうことが可能だ。
  • 語彙の選定:東京都では現在文科省検定教科書の6冊全部が使われている。そこで入試の観点から本校では現在次のように3) の語い選定を行っている。
    1. 6社全部で使われている語は注釈なしで都立高校入試問題に使われる。(頻度数6)
    2. トピックの関係で1社が使っていない語。(頻度数5)
    3. 4社で使われている語で英語科3人で相談して、これは是非ライティングまで持っていきたいと判断した語。(平成18年度に研究部では研究部推奨発表語い(written)を635語選定した)
      ★研究部推奨発表語彙リスト(written)にあるのは、a, able, about, act, after, afternoon, again, age, ago, air, all, alone, など総計 635語。単語カードで赤丸をつける。
  • 60秒、90秒クイズ(3年生):NHK「わくわく授業」で紹介された田尻悟郎先生(現関西大学教授)がお作りになった「自己表現お助けブック」(教育出版)の中の「副詞句」「前置詞句」「一般動詞」「不規則動詞の変化」を使って、日本語→英語の素早い変換練習をしている。言語1→言語2への変換は頭の中のチャンネルをカチャカチャ切り替える連続で高度な言語操作だが、句レベルまでならそれほどの負担はない。
     次にあげたのは3年生1月から受験直前まで使用する自作教材である。受験直前で連語・熟語の最終確認ができるので生徒に好評である。やり方は次の通りである。

    1.  ペアになってプリントを交換する。
    2. 片方が英語を隠して日本語を見て英語を言う。
    3. もう片方は相手が正しく言えたら□にチェックマークを入れる。
    60秒クイズ「連語・熟語編」
    at home □□□  家で(に)
    stop -ing □□□ ~するのをやめる
    go to bed □□□ 寝る
    look forward to -  □□□ ~を楽しみにする。(toの後は名詞)
      以下省略
  • 語彙指導したら、「触れさせる」「使わせる」:浜島書店のサイト(http://catchawave.jp/jm/)でDouglas S. Jarrell さん(名古屋女子大学 文学部国際言語表現学科教授)が執筆する、メールマガジン「じゃれマガ」を使用。
  • 3年2学期英語期末テストに英語劇に関するエッセー・ライティングを出題:( )は先生が直した部分。下線は劇の台詞を使った解答。回答例1:I was very tired because setting work is(was) very hard. But I was very happy. Actors and actresses are(were) very good at acting. I'm proud of setting in the class.
    回答例2:I acted Red Slop(e) times(Times) reporter. It is(was) difficult for me to act. But everyone supported me. They were very kind. So it was the best memory. I thought (it) was excellent. I've(I'll) never forgot(forget) it as long as I live. I enjoyed it anyway.

(5)質疑応答+意見交換

  • Q:本文をノートに写すのは?
    A:うまくやっているならいいが、本文の意味が分かっているのに写すのは写経だ。意味がない。ボキャブラリーノートは中2で作らせている。
  • Q:ビデオで観ると、1年生で豊かな表現を使っていた。Not really.など。
    A:生徒には「他のグループで使っていない表現を使うといいよ」「辞書も使えるよ」とアドバイスしている。またsupplementaryな表現を集めたプリントをALTと作って渡している。
  • Q:(話すときに)ジェスチャーできないものは?
    A:出来ない場合は映像で理解するということ。
  • Q:ビデオで使っていた携帯電話は本物?
    A:いいえ。効果音CDで先生がスイッチを押している。
  • Q:発表をやりたがらない生徒は?
    A:スピーキングテストをしたら成績が2にならないと分かっている(最初に評価基準を示している))。友達の様子を見てやりたくなる生徒が大半。
  • Q:つっぱっている生徒や愛情に飢えた生徒がいると思うが?
    A:大切にしているのは「愛」。してはいけないのは「暴力」。ペアでお互いのぬくもりを感じあう。中嶋先生は「英語はクラスマネジメントだ。英語をやりながらクラス作り」とおっしゃっている。英語はコミュニケーションでしょ? (関係性が)良くならなかったらおかしい。失敗はいっぱいして良い。企画倒れになったものもある。
  • Q:中学で英検準2級受かりますか?
    A:生徒は自分で問題集をやっている。語彙指導が大切。高校でトップクラスになっている(『上巻』pp16-17)。生徒には「このやり方でよい」と伝える。
  • Q:オーラルイントロダクションは?
    A:市販のピクチャーカードを使って行う。
  • Q:文法指導は?
    A:3年間トータルでやっている。
  • Q:ふだんの授業は?
    A:例えば、関係詞ははじめに3人、次に10人がわかればよい。中2の1学期で教科書が終わっている。テキトーにやっている。早く進んで何回も戻る。進度の遅い先生は親にも生徒にも信用されない!
  • Q:まったくやりたがらない生徒は?
    A:音読が足りない。英語が入っていない。無理しない。そのうちやりたくなる。

  • 最近はやっとバズリーディングからクラスの読みに対する抵抗感を減らすことができるようになりました。先生の数多くのメソッドをまねて、生徒をほめて伸ばしていこうと思います。ありがとうございました。
  • 貴重なお話ありがとうございました。これまで教わってきた英語の指導法に違和感をもっていましたので、これまでのこの研究や今日のお話を聞いて、改めて本当に英語力がつく、生徒のためになる授業をしていきたいと確信した次第です。
  • 英語脳を作るためのノウハウを具体的な活動例を通して紹介していただき、とても参考になりました。教科書にのみ終始せず、プラスアルファのアウトプット活動で英語を使えるレベルまで定着させる大切さを改めて感じました。生徒自身に気づかせ、自主的に英語に取り組もうとさせるヒントがたくさんつまっていて、とても有意義でした。
  • 音読指導の大切さがよくわかりましたが、高校でも同じような指導ができるのか質問したかったのですが…。様々なideaありがとうございました。
  • 音読を大切にしていたつもりでしたが、5回、50回するべきだということを知れてとても勉強になりました。私の学校で使用しているZ会『Treasure』でも、どこまで可能か実践してみます。貴重な機会をありがとうございました。
  • ジェスチャーを使うこと、発音に気をつけることなど、しっかり意識させることで、どんどん生徒の力がついていくのがよくわかりました。北原先生のお声も低くて安心感があり、生徒も動きたくなるだろうなと思いました。あと、先生のテキパキとしたつっこみも面白かったです。子供の可能性をつんでしまわず、自分でやらせることの大切さに気づくと共に、こちらも柔軟に対応(ここまでしか生徒はできないだろうと勝手に決めつけたりしない)する必要がある、つまりこちら側の意識改革がまず大切だと思いました。自分の言いたいことを日本語でも言えなかったり、説明できないことを英語で一生懸命言おうとする子供たちの頑張りにエールを送りたいです。
  • 生徒が楽しく英語を使っていて、自分の英語の向上を実感できる工夫をされていることがとても素晴らしいと思いました。Vocabulary指導は参考にして、自分の授業でもやってみます。有難うございました。
  • 音声のイメージ化、イメージの音声化。 前半の講演の中でとても印象に残った言葉でした。5:45に見たVTRの修学旅行スピーチに in stomachと言った女の子は、まさにイメージの音声化だと思いました。北原メソッドが1年生からずっと浸透しているんだなと思います。音読の大切さ、語彙の大切さ、そしてクラスマネジメントの大切さなど、自分の実践を改めて見つめ直す機会になりました。ありがとうございました。
  • 北原先生の「てきとうでいい」というコメントに励まされました。授業時間の中で、全員をひっぱり上げなくてはいけないというプレッシャーみたいなものから抜け出せそうです。本を読んで勉強したいと思います。今日はありがとうございました。
  • カードを使った単語練習活動の一部を来週から取り入れたいと思います。来年度、2年生相手にスキット活動を取り入れていきたいと思います。グラマンの機銃掃射に遭遇したお母上の話と原爆の授業への熱い思いが印象的でした。
  • 本日は貴重なお話が聞けて大変参考になりました。今まで教わったことを教えていたのでは子ども達に英語の地図を作っていくことはできないように感じられました。英語を 自分で劇や絵本の朗読で使っていくことで、だんだんと楽しく、学びの意欲を持たせて いくことができるように思いました。
  • 素晴らしいワークショップでした。ありがとうございます。生徒達の素晴らしい活動を 見て、また自分の授業を新しくやりかえていこうと思いました。
  • 生徒の実際の発表をビデオで見ることができて、とても勉強になりました。音読の大切さを実感しました。発音はもちろん話し方もキレイに流れていて、しっかりフォニックスの指導をする必要性を再確認しました。ありがとうございました。
  • 今日は大変参考になりました。改めて、英語脳、英語をやる気にさせることの大切さを学びました。ありがとうございました。今日のことを私なりに解釈して、北原氏のやっていることを忠実に実践してみようと思います。
  • 文法を上手に分かり易く教えた上で、あんなに楽しい授業を公立でできるということが とても励ましになりました。頑張って、英語を楽しく教える"力"、しつけの"力"をつけていきたいです。ありがとうございました。
  • 北原先生の授業を是非、見学したいと思いました。本も買って勉強したいです。語彙の 増やし方、フラッシュカードの使い方が大変勉強になりました。
  • 「英語の授業で使える歌」重宝しています。これからも生徒の興味に合うような曲をselect していきたいです。今日のお話を伺って、音読指導に力を入れ、chatやspeaking test, skitなど生徒が英語を話す時間をもっと増やそうと思いました。それが読解力、writingの力 の育成にもつながるのだと実感しました。ありがとうございました!
  • 本当に楽しいレポートでした。今まで気付かずにやっていた無駄なこと、気付かずにやっていなかった有意義なことをたくさん教えていただきました。授業で英語を指導する 以前の生徒との人間関係や教員の指導力をきちんと構築した上でこそ、有意義な授業ができるのだなぁと痛感します。早速、先生の本を買って読破したいと思います。ありが とうございました。
  • ビデオで3年間の生徒の成長ぶりを見せていただいて、音読指導と語彙指導という基本 中の基本をしっかりやっていくことがいかに次に繋がるのかということがよくわかりました。北原先生に「最悪ですね!」と言われてしまった『訳ノート』を未だに作らせていますが、その点についてはなかなか打破できない一線です。
  • 「英語の幹」を読み、具体的な活動のようすをビデオで見たり、ペアになって活動することで、本の内容の理解が深まり、期待していた通りの収穫があり、参加できたことをうれしく思っています。明日からの実践に工夫を入れながらやっていきたいと思います。
  • 本当に感銘を受けました。北原先生の実践、研究、理論に基づいた「英語授業の幹」、そして「愛情」があるから、あのような英語脳を持った、生き生きとした生徒が育つのだと強く感じました。誠にありがとうございます。
  • 生徒たちが楽しんでいるのが印象的。3年生は本当にうまい。現在完了の受動態まで使っているのに驚いた。
  • 「テキトー」がモットーのようにも感じられる北原先生の発表でしたが、見えないところで先生の英語に対する深いご見識や長い教職経験に基づく体系化された教授のための英語があるのを感じました。特に語彙指導をreceptive wordsとproductive wordsに区別なさっているのは正しいと思います。おかげで私の中の語彙指導に対するモヤモヤもだいぶスッキリしました。とりいれて実践していこうと思います。
  • 中学生と思えない発話力に驚きました。私立でなくても、生徒の力をここまで伸ばせるのかと今の自分の指導力をもっと伸ばしていかなくてはと思いました。生徒の力は無限なんだと改めて思った発表でした。まだ2年目で、自分の指導が上手く定まらないのですが、研修でヒントを得て実践していきたいです。ありがとうございました。学力差が非常にあるのでどうしても一番下の子が置いてきぼりになってしまう。塾に行けない生徒が3年の入試に対応できない。
  • 実践のほんのさわりの部分の発表なのでしょうが、映像を見て北原さんがどんな風に生徒の英語学力を伸ばしているかが分かりました。(つかみが上手い、映像で納得させるんですね)でも多分、北原さんの一番の力は「生徒の自由な発想を伸ばす」ということなのだと思う。それはどこでどうしてそういう力を得られたのか、もっと知りたいです。
  • 和訳をしない音読を繰り返す中でニュアンスをつかませていくこと、collocationを重視した語彙指導など今、自分が実践していることに自信を持てました。音読は50回とありますが、生徒が最終的にどんな姿になることが目的なのか…恐らく3年生がALTを相手に原稿なしで話している姿なのだとは思うのですが、めざす生徒像、英語科の教員として英語を通して生徒に何を学ばせたいと思っておられるのかといったお話も聞きたかったです。音読と内容理解の関連ですが、解釈の違いによって音読のし方(強弱スピード等)が変わったり、その解釈の違いを音読で伝えようとすることも音読することの意味かと思っていました。音読をするために精読をする必然性が生まれ読みとった内容を伝えるために音読をいかに工夫するかを考えたり…それが私の音読の捉え方だったのですが、ひたすら量を読ませると自然と精読しようとしたり、音読を工夫しようとしたりするのだろうか???という点を聞いてみたかったです。先生が授業を通してどんな生徒を育てたいと思っておられるのかお聞きしたいことが多々ありましたが聞かずじまいで終わってしまいました。とは言え、参加できてよかったです。ありがとうございました。
  • 生徒たちが積極的に授業に参加していることに感動しました。本当に楽しそうですね。子どもたちは話せるようになると、益々英語が楽しくなって行くんですね。私が教えているのは英検準1級講座です。高校生は単語力が少ないので、接頭辞、接尾辞、コーパスを使って教えています。
  • 授業のヒントになることがたくさんありました。今年は高1(英IとグラマーとオーラルC);高3(リーディングとリスニング)を教えました。英Iがメインでしたが、年間のシラバスに沿って進めなければならずいつも時間が足りなかったです。単語指導、今日のように有機的にやりたいと思いますが、益々時間が足りなくなりそうなのでどこに無駄があるのかもう一度自分の授業を見なおしてみたいと思います。 まず座って黙って集中させるのが難しい生徒たちなので、クラスマネジメントで苦労しています。
  • 著書の中の世界を目で見ることができ、理解が深まったように思います。
  • 会報担当・和田:「戦争」に思い入れがあると語られた北原先生は、最初は乗り気でなかった生徒たちにNew Crownにある広島のサダコさんについて感想を書かせました。その感想文を広島の先生方の前で発表し、その先生方の熱い思いが書かれた感想文を帰りの新幹線で広島から新大阪までの間にビールも飲むことなく一気に読んでしまったこと、その感想文をfeedbackし、生徒も感動していたことをはなしてくださいました。このような熱い思いに生徒たちも応えてpractical skillsを身につけるのだと思いました。

●日時: 2011年2月19日(土) 午後3:30~7:00(受付3:20)
●会場: 大倉山記念館
 第4集会室
 (Tel. 045-544-1881)

 (東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分
  改札口を右に出て右折、急坂上る)
●会場費:500円(支部会員200円 学生200円)
[当日会員登録(年会費2000円)で割引適用]
 ●ご注意・お願い:
  • ★1月19日で定員に達しましたので今後の参加受付を中止いたします。
  • ★当日の資料を希望の方は後日お送りいたしますので、メールでご連絡下さい。 
  • ★2月例会に参加予約をした方で、ご都合が悪くなった方は必ずメールでご連絡下さい。キャンセル待ちの方が数名いらっしゃいますので、ご協力をお願いいたします。
●お問い合わせ: 萩原一郎 e-mail

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(2011年2月15日掲載/7月10日更新)