■ 埼玉北部サークル3月例会報告

2010年3月
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3月7月

講演会「1分間で授業を変える99の方法」

 3月6日(土)午後 熊谷商工会館大ホールにおいて、海木幸登先生の講演会が行われた。今回の講演は「1分間で授業を変える99の方法」というテーマでワークショップ形式で約3時間行われた。
 私は、今回の講演会に参加して本当に良かった。本当に目から鱗が落ちたと感じられる講演会であった。実にたくさんの実践的ヒントを教えていただいた。特に、今回の講演会は、海木先生の退職前の特別な講演会ということもあり、ぜひこれだけは後輩諸氏に伝えたいエッセンスのつまった内容だけに、たいへん手ごたえのあるものであった。
 具体的には、私が感銘(目から鱗の落ちる思い)を受けた点は、次の3点に集約できる。それらは、海木先生の学びの理論、学びの姿勢、そして確かな実践に裏付けられた数々の技術である。それらを、天使のように大胆に、悪魔のように細心にわれわれに伝えようとするみごとな講演であった。

(1)海木先生に学ぶ理論

  My Bitter" Swan song" 「白鳥は最後の瞬間に最も美しい声で歌う」とご自分を白鳥にたとえて海木先生は次のように訴える。「学ぶことをやめた者は、教えることをやめなければならない」と。続けてこう言う。教師の本質は、「教えること」よりも、むしろ「学ぶこと」にある。それでは、学ぶとは何か、どう学ぶのか?「学ぶ」とは、とにかくたくさん本や雑誌を読むことである。具体的に言えば、今では2誌しかなくなった英語教育雑誌(『英語教育』と『新英語教育』)やこれも今では1誌しかなくなった『月刊ホームルーム』などの教育雑誌(担任用)を読むということであると先生は言う。なるほど、日々のこうした目立たないが継続的な学びが、先生の安定した実践の基礎(理論)になっているのである。これが私の目から鱗の落ちた(合点のいった)点である。

(2)海木先生に学ぶ学びの姿勢-「謙虚さ」と「ユーモア(遊び心)」の大切さ

 海木先生のプレゼンは、ユーモアたっぷりで遊び心がたくさん感じられるものであった。大村昆さんという熟練した人気者の芸人さんがいるが、海木先生の語りは、彼にダブるものがあった。授業のウォームアップの方法や教師の「かう(宝くじ)、うつ(病気)、のむ(胃カメラ)」の話などユーモラスで遊び心のあるものであった。しかし、その裏には、たいへんな謙虚さが隠されている。海木先生は、次のように鋭く言い切る。
「私たち教師に必要なものは、ちっぽけなプライドや自信ではなく(それは傲慢さにつながる)、教えるという仕事に対する謙虚さです。研究と実践に対する謙虚さ、教え合い学び合うことに対する謙虚さ、あるいは教室の事実に対する謙虚さーそれこそが私たち教師がもっとも大切にすべきものなのだと私は思っています」と。「この謙虚さの大切さ」に気づかせていただいたことが私の目から鱗の落ちた2点目である。この海木先生の学びの姿勢こそ、たいへん価値があり見習いたいことである。  

(3)海木先生に学ぶ実践の技術

 海木先生が「これだけは伝えたい!1分間で授業を変える99の方法」というだけあって、実にたくさんの実践の技術が披露された。具体的に挙げると、ペア活動(ジャンケンゲームを取り入れて、文章を読み合う中で自分が良いと思うフレーズをお互い紹介し合う活動)のやり方、授業開きの時のアクロニム(折り句)の活用方法、5つの気(やる気・元気・本気・根気・和気)と3つの出会い(新しい友達・先生・自分)の話の仕方、10問クイズ式自己紹介のやり方(自分の隠れた一面、面白い一面を紹介するクイズ作りの方法)、松坂投手のエピソードを引用しての夢の実現方程式(夢を決意に、決意を目標に!)の紹介の仕方、誕生日の活用方法、ストローク・プラチナストローク(生徒への肯定的な声かけ・働きかけ)の打ち方、読みの学習(新出単語の発音記号読み・ペア音読・4人班音読)の進め方、音読(個人読み・ペア読み・聞き手をつくる読み・七色の音読・ステップ読み・群読)の仕方、同時通訳方式読みや途中で仕掛けるダッシュ攻撃の仕方、定着用プリント(虫食いプリント方式・英問英答方式・基本文法問題方式・もとの文章に復元方式)の作り方、指示・発問(語句表現にこだわる方式・起承転結・サブタイトル付け方式)の仕方、漫画の活用(漫画の絵を参考にイメージ読み)の仕方等である(詳細は海木先生自作のプリントを参照して欲しい)。時間制限の関係で、スヌーピーの話の活用方法や魔法の呪文の話等もっともっとお聞きしたいこともあったが、今回のワークショップで教えていただいた実践的テクニックを自分でまず試してみて、使えるものはどんどん今後の授業で積極的に活用していきたいと思う。これらの即使用できる数々の実践的テクニックのみごとさに目から鱗が落ちる思いがした3点目である。
 また、『「英語の授業は英語で」を超えて』という海木先生のメッセージは、実に印象的であった。「英語の授業は英語で」という主張はごく当たり前のように響くが、その裏にある意味も考えたい。「英語を話すということは、無責任な時事放談をするということではない。英語を話すと同時に、社会科や理科、国語の授業としてもちゃんと成り立つものでありたい。どんなに流暢に英語を話していたとしても、ゴミ問題について「ゴミは宇宙船に積んで宇宙に飛ばしてしまえばよい」とか、人口問題を解決するために「子どもの数を制限すればよい」と安易に平然と深い考えも無しに表面的な主張する生徒に戦慄を覚える。もっと議論に指導が必要だ。」という海木先生の今後の英語教育に対する懸念と怒りの言葉に、まったくの同感である。
 最後に、少々厚かましいいかもしれないが、海木先生にファンからのお願いが一つある。あまりにこのままリタイアーなされるのは、もったいない。しばし翼を休めた後、願わくば、後輩育成のためにいつまでも歌いつづける白鳥であって欲しい。

(文責:吉田進)
(連絡先:根岸恒雄)
(2010年9月14日)