■ 神奈川新英研2月例会報告

2009年2月
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2月3月4月5月6月7月9月10月11月12月
 2月21日大倉山記念館にて。参加者23名。

●最近取り組んでいること

  • 新英研で学んだことを生かして、ロシア語のテキストで『授業づくりハンドブック』(ロシア語教育研究会・著)を出版した。
  • i-Podを使って、YouTubeの画像や写真の画像を文法の導入に使っています。

●実践報告(中学)


「中1の読みとり教材をどうアレンジするか」

日比和子さん(大和市立引地台中学校)
 日比先生は毎回、実践報告をさらっとなさるのですが、ちょっとした「すきま」も無駄にしない、そして奥行きのある、巧みな構成です。生徒たちも安心して取り組める内容ですので、若い先生方にも大いに参考にしていただけたらと思います。神奈川新英研のレポーター(発掘)係である日比先生はさまざまな研究会にフットワークよく通っていらっしゃいます。このような日々のご努力が積み重なっている実践だと感じました。

(1)日比先生

  • レポーターより:New Crown1年の読み物教材に、Let's Read1"What Do You Treasure?"とLet's Read2"Alice and Humpty"があります。さらっと自習にしてしまいがちなところを、敢えて自分流にアレンジして、自己表現に繋げ、ビデオで映像の世界に広げました。
(2)リスニングから自己表現へ
  • この報告は『新英語教育』の2008年10号の中学教科書の創造的な扱い方のコーナーで「思いを汲みとり、思いを表現してみよう」という記事になっています。
  • Let's Read1"What Do You Treasure?"「あなたは何を大切にしていますか?」のワークシート
    1. Pre-Reading:リスニングで聞き取った内容(4人の子供たちが語っていることを「国名(カナダ、メキシコ、ケニヤ、スリランカ)」「大切な物(山、学校、町、樹木)」「本人が描いた絵はア~エのいずれか(教科書に載っている絵をピクチャーカードで見せる)」を表にまとめる。
    2. 4人の子供たちの国を世界地図(プリントの裏面「世界の独立国」(2007.3現在))で探して印をつける。
    3. 印象に残った1人を選び、和訳+選んだ理由を書く。
    4. Post-Reading:あなたが大切にしているベスト3を書く。
  • 生徒作品をシェアする:"What Do You Treasure?"「あなたは何を大切にしていますか?」でみんなの大切な物をまとめました。
(3)物語文を味わう
(4)参加者の感想
  • 日比先生の教え子で大学生の方:久しぶりに日比先生の話が聞けて良かったです。今年は大学で模擬授業をすることになっているので活用できる部分は利用させてもらいます! まだほとんど授業づくりなどをやったことがないので、どれくらいの時間をかけて1回の授業の準備に時間をかけているのかなども気になりました。

●実践報告(高校)

 神奈川新英研で2009年2月にレポートされた笹田巌さんが7月25日に丹沢の山の事故で亡くなりになったとの悲しい知らせありました。 心より笹田先生のご福をお祈りいたします。今後の発表を伺うことはかなわなくなりました。笹田さんの目指していたものを受継いでいけたらと思います。

「クリティカルシンキングを伸ばす授業実践:帰国生と考えた日本の言語教育政策」

笹田巌さん(東京学芸大附属高校大泉校舎)
 東京学芸大附属高校大泉校舎には帰国子女が集まっています。このような特殊な環境であるからこそできる実践だと思われるかもしれませんが、笹田先生がおっしゃるような「クリティカルシンキングの育成」すなわち「情報にだまされない能力の育成」はどのような教育の場においても急務だと感じます。今回は「序論」でした。例会後に「次のレポートはいつですか?」と神奈川支部・事務局のIさんは繰り返し尋ねていらっしゃいました。ぜひ次回の発表をお待ちしています。

(1)笹田先生
  • レポーターより:英語を必要とする人口層が著しく限られる日本において、普遍的教授目的としてクリティカルシンキング育成を筆頭に挙げる。情報にだまされ続けてきた私たちだが、情報のグローバル化により、英語情報にだまされない能力育成がとりわけ急務になっているからだ。本報告では、私たちが従事している「英語教育」そのものをグローバル化にともなう社会現象として相対化し、グローバル化の落とし子たる海外帰国生とともに検証した過程の一端を紹介したい。
  • これまでの勤務校:北海道、神奈川、東京と移った。現任校、練馬区の東京学芸大附属高校大泉校舎に移り水を得た魚になった気分。
  • 東京学芸大附属高校大泉校舎:全国で唯一の帰国生受け入れ専門校。生徒は全員帰国生。クラスは15名の少人数。外国語科専任6人で教員加配。教員が作成するシラバスに基づく生徒自由選択制。ただし、再編統合によりまもなく閉校。帰国生は体系的に学習していないことも多く、「easyの比較級」が書けない生徒もいる。
(2)クリティカルシンキング
  • 笹田先生の体験的定義+学習法:向上心、真理への欲求、分析的思考力、多角的観点、行間を読む態度など。
  • クリティカルシンキングの重要性:学問と科学の柱になる。だまされ続けた近現代史を省みても、また、現在の「知と情報のグローバル化」を鑑みても、「英語情報にだまされず、英語知を相対化できる能力の養成」が急務である。メディアと学校が時として「だまし」の主媒体になる危険性。
  • 英語教育ブームは妥当か?:LL教室、リスニングテスト、ALT,小学校英語必修化、イマージョンプログラム…=英語教育は怪しい情報に振り回されてきた。教師は被害者と加害者の両面を持つ。「英語教員もひょっとしたら、善意で意図せずして『だまし』の主体になっていないか」という冷徹な自己分析が必要→生徒自身が自己の教育のあり方を主体的客観的に考え、議論する機会を保証することが不可欠。
  • 笹田先生の授業スタイル:極力「授けない」(教員が教える時間は10~15%程度にする)。テーマ設定も生徒に任せる。思考を引き出す対話をしながら、試行錯誤の自転車操業。定期試験をせず活動ごとに評価(国際バカロレアの考え方)。What do you think? Why do you think so? Is it really true?という問いを常に浴びせる。
(3)世界の現実
  • アジアの英語事情
  • 世界でテキストブックは化石になっている!
  • バイリンガルとセミリンガル
  • アメリカの演出法をクリティカルシンキングで読み解く
(4)質疑応答
  • Q:評価の方法は?
    A:比較的おおらかだが、おととし、国際バカロレアの評価を導入。エッセーの評価法も載っている。クリティカルシンキングの力を評価するテストもあるがやったことはない。
  • Q:国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)は上手くいっている?
    A:MYP(Middle Year Program)を導入している。基準を作るのが大変だが、クレームもなくなった。
  • Q:生徒たちはクリティカルシンキングをどのように生かしていますか?
    A:卒業生に話をきくと、大学の講義に退屈しているようだ。早稲田大学に行った卒業生は「クリティカルシンキングの授業がためになった」と言ってくれている。
(5)参加者の感想
  • 帰国子女に教える困難さとレポーターのスタンス、取り組みの意気込みに感心しました。クリティカルシンキングはどんな教材を使っても可能かなと思います。現実の生徒の知的状況は貧しいだけでなくユニークな面もあるので生かしたい。
  • 現在読んでいる本、紹介します。非常に勉強になります。是非、ご一読を!
     ジェニ・ウイルソン&レスリー・ウィングジャン、吉田新一郎訳『「考える力」はこうしてつける』 
      4月からこの本からのヒントをもとにHR実践、授業で活かしていきます。



●日時:2009年2月21日(土) 午後3:30~7:00
*今年から『新英語教育』の合評がなくなり、実践報告が3時半からになります。ご注意下さい。

3:30 ~ 5:00 中学実践報告 [担当:泉]
5:00 ~ 5:15 休憩
5:15 ~ 6:45 高校実践報告 [担当:萩原]
6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡
●会場:大倉山記念館 第1集会室(Tel. 045-544-1881)
(東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分 改札口を右に出て右折、急坂上る)
●会場費:500円(支部会員200円)
[当日会員登録(年会費2000円)で割引適用]
★お問い合わせ:萩原一郎 e-mail
(県立横浜緑園総合高校 Tel.045(812)3371)
 ●実践報告(中学):「中1の読みとり教材をどうアレンジするか」
日比 和子さん(大和市立引地台中学校)
レポーターより:New Crown1年の読み物教材に、Let's Read1"What Do You Treasure?"とLet's Read2"Alice and Humpty"があります。さらっと自習にしてしまいがちなところを、敢えて自分流にアレンジして、自己表現に繋げたり、ビデオで映像の世界に広げました。
 ●実践報告(高校):「クリテイカルシンキングを伸ばす授業実践:帰国生と考えた日本の言語教育政策」
笹田 巌さん(東京学芸大附属高校大泉校舎)
レポーターより:英語を必要とする人口層が著しく限られる日本において、普遍的教授目的としてクリテイカルシンキング育成を筆頭に挙げる。情報にだまされ続けてきた私たちだが、情報のグローバル化により、英語情報にだまされない能力育成がとりわけ急務になっているからだ。本報告では、私たちが従事している「英語教育」そのものをグローバル化にともなう社会現象として相対化し、グローバル化の落とし子たる海外帰国生とともに検証した過程の一端を紹介したい。

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(2009年2月11日掲載/10月9日更新)