田中克彦氏 「人間にとって言語とは何か」

田中克彦先生の講演に期待高まる

 本日、記念講演をしていただく田中克彦先生は、私の言語観・世界観に大きな影響を与えた人です。大学時代に読んだ『ことばと国家』(岩波新書)に書かれていた重要な事実の数々---ギリシャ人が周辺民族を呼んだ「バルバロイ」とは「どもる者」といういみの蔑称だったこと、あることばが独立の言語であるか方言であるかを判断するのは極めて困難であること、母語と母国語は違うということ、ドーデの『最後の授業』はきわめて問題のある作品であること、等々---は、英語教師の道を選ぶことに何の疑問も持たずに生きていた当時の私の考え方に痛撃を与えました。私が現在、少しは物事を考えて教師を務めているとしたら、それも、小数者の立場に立って物事を考えているとしたら、それは田中先生のご著書のおかげといっても過言ではありません。

 その後も田中先生は、私にとって、言語に関する問題に接するたびに、「こんな時田中先生だったらどう考えるだろう」という気にさせる存在でした。だから、今日田中先生のお話を聞くのは本当に楽しみです。きっと先生は、また鋭いことばの数々で、私のたるんだ心に喝を入れてくれることでしょう。そして、そういう有意義な体験を新英研の仲間とともにできることを心からうれしく思います。(岐阜・高校教員)

<感想>

 独特のアイロニーやユーモアに満ちたレトリックを駆使して、言語という不可思議なる存在について語って下さった田中さん。想像を絶する博学に裏打ちされた、一筋縄ではいかないお話ぶりそのものが、言語なる存在の複雑さ、とらえ難さを表していたのではないか、という気がします。

 「英語教師は、他の言語を学ぶべき」の意味がわかった!!言葉を学ぶことは、歴史と文化を学ぶことだ。それは、より「人間らしく」なることなのだ。それを、授業で、学校で、生徒に伝えるのはむずかしい。また、私自信「食べれる(=金になる)言葉」しか勉強しようとしなかった。アジアの一員でありながら、アジアの諸国の言葉に無関心である自分を発見!!(神奈川)


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