日本外国語教育改善協議会(改善協)のアピール(2023年)

2024年11月6日

Ⅴ.教員の養成・採用・研修をめぐって

 私たちは1999年度の大会で「外国語」担当教員の養成・採用・研修等について議論し、次のように主張した。

  1. (1)「外国語」担当教員の養成について
    「外国語」担当教員の養成のための教育は、当該外国語の指導方法に関する十分な知識と実践力を習得させ、また指導について工夫改善への意欲を持たせる内容とすること。
  2. (2)「外国語」担当教員の採用について
    「外国語」担当教員の採用に際し、当該外国語の指導方法に関する十分な知識と実践力および工夫改善への意欲を有する人物が選ばれるようにすること。
  3. (3)「外国語」担当教員の研修について
    「外国語」担当教員の研修については、長期海外研修を含め、自主的・主体的な研修を実現するよう、必要な措置を講じること。

 今年度大会では、2023年1月に出された中教審答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修などの在り方について~『新たな教師の学びの姿』の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成」をもとに議論を重ね、以下の提言をまとめた。

1.「外国語」担当教員の養成について

 第1に当該外国語およびその指導法に関する十分な知識と実践力を備えた教員を育成することを目的とすべきである。従って「教科に関する科目」の履修に重きを置くべきである。
 養成課程における教育内容については、養成機関の創造性と自主性を尊重すべきである。外部機関のテストなどが目標にされるのは論外である。また英語以外の言語についても「教科教育法」および「教育実習」を充実すべきである。なお教育実習の履修形式の安易な柔軟化は慎むべきである。

2.「外国語」担当教員の採用について

 「免許外教科担任」や「非正規教員」のような臨時採用教員や非常勤講師に頼るのではなく、教職員定数の改善を図り、それにともなう「正規教員」の採用増を行うべきである。そのために国による十分な財政措置を含む条件整備をすべきである。また選考対象者が外国語教員としてふさわしいかどうかは、前述のように英検、TOEFL、TOEIC等の成績によって測れるものでなく、全人的観点から選考されるべきである。こうしたスコアは外国語教員に必須のものとは考えられない。採用試験のために、教員養成課程でTOEFL等の受験対策の授業が増えており、人格の完成を目的とする教育に携わる教員を養成するための教育内容が矮小化されている。なお英語ができるだけで安易に特別免許状を発行することは許されない。教員養成課程を否定するものである。今回提案されている採用試験の前倒しについては大学教育の破壊である。

3.「外国語」担当教員の研修について

 教員一人一人が校内研修、校外研修などの様々な研修の機会を活用したり、自主的な学習を積み重ねたりしながらその力量を向上させていくとともに、教員一人一人の力量が発揮できるよう、必要な環境を整備していくことも必要である。なぜ外国語(英語)科の教員だけが強制的に「悉皆研修」を受けなければならなかったのか理解に苦しむ。また、「悉皆研修」のために、真に参加を望む研修に参加できなかった場合が多く、研修の目的に照らしてみると本末転倒である。なお校長の資質能力はマネージメント能力、アセスメント、ファシリテーションで良いのか。(「公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針に基づく教師に共通的に求められる資質の具体的内容」2022年8月)
 研修は教員が自らの判断で自律的に行うのが本来のあり方であり、教育行政は教員に「伴走」することが求められる。文部科学省がすすめてきた「カスケード研修」は上からの押し付けを目的とする全体主義国家が行うもので、主体的な学びを支援する教師の研修は主体的でなければならないのは言うまでもない。
 研修履歴記録システムによって研修の差別化を行うことは許されない。幅広く多様な研修を認めるための研修履歴記録でなければ意味がない。

 免許更新制にともなって10年ごとの研修を行ってきたが、それをやめるにあたって新たな研修を持ち込むなどはもってのほかである。

2024年11月6日知2023

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