日本外国語教育改善協議会(改善協)のアピール(2019)-1

Ⅲ.入学者選抜試験(入試)における外国語について

 私たちは小中高校生の「英語力」測定に外部検定試験等を使うことに反対してきた。大学入試への利用にも反対する。大学入試において、2020年度からの新たな共通試験の外国語に関しては、英語について、英検やGTEC、TOEFLなどの民間試験を導入するという文部科学省の方針が出された。それについて、すでにさまざまな混乱が起きている。反対の意見等も多く出てきている。そのような中で、外部試験を導入することには大きな問題があり、止めるべきであると改善協は提言する。
 私たちは、1980年度の大会で、「大学入学試験に音声テストを導入すること」を提言し、その後、「入試で外国語を課する場合、リスニングおよびスピーキングの要素を大幅に増やすべきである」と主張してきた。そして、2006年度の大学入試センター試験から「リスニングテスト」(英語)が実施されたことを、改善と考えている。しかし、外部試験の利用によってスピーキング導入を果たそうという考えには、同意できない。
 近年の性急な外国語教育改革政策の大部分は、CEFRを大いに参考にしている。ところが、その背景や理念は切り離して表面的な形式のみを部分的にコピーしようとしているため、そのまま日本で実施すれば矛盾が生じる。大学入試の外国語の問題もまたそのひとつである。
 新たな大学入試共通テストへの外部試験導入が抱える問題点について、以下の項目で別紙に概要をまとめるので参照されたい。

  1. CEFR本体は既に更新されており、民間試験導入の根拠にできない。
  2. Listeningの配点の理由は何か。
  3. 外部民間試験は有料で、受験生の追加負担になる。
  4. 公務員を民間の試験のために働かせるべきではない。
  5. 入試よりも教育内容が先にあるべきである。

 大学以外の入試に関する問題点も、以下に指摘しておく。

  1. CEFRを参考にするならその複言語主義を共有するはずだが、英語以外の外国語を入試科目とする高等学校はほとんどない。その増加を支援する必要がある。
  2. 小学校での外国語活動必修化以降、中学校入試で英語が選抜材料になってきている。しかし、「五つの提言」でも「中学校における入学者選抜における英語の扱いについて、引き続き慎重な検討が必要であるとの指摘」と言及しているとおり、入試用の英語学習を小学生に強いる状況はよくない。「教科化」が導入されれば、悪化することが懸念される。
  3. 高等学校入試において、「民間資格・検定試験を活用した東京都中学校英語スピーキングテスト(仮称)事業」が考えられてきているが、大学入試同様、導入すべきではない。

知2019

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