日本外国語教育改善協議会(改善協)のアピール(2019)-1

ⅩⅠ.「外国語」の「習熟度別指導」について

 『学習指導要領』は「総則」で「習熟度別指導」に触れている。また、「基本計画」は「基本施策24」でも「習熟度別指導の充実」を求めている。Ⅹ.で問題にした「2学級3展開」をはじめとする少人数授業を実施する中で、以前よりも「習熟度別指導」が推進されることが多くなった。今後、ますます増加することが懸念される。特に外国語の場合、「英語指導方法等改善の推進に関する懇談会・報告」(2001年1月)から「提言」に至るものの中にあり、さらに、「第七次提言」も「義務教育段階からの習熟度別授業の拡充」に触れている。二つの「日本人に求められる英語力」(「行動計画」中では「国民全体に求められる英語力」と「専門分野に必要な英語力や国際社会に活躍する人材等に求められる英語力」)に対応する差別的指導に呼応している。
 言語教育においては、生徒一人ひとりがその言語運用を通して言語能力を育むべきである。すべての生徒が等しく良質な教育を受けられるようにすることが「習熟度別」によって実現するとは考えられない。このことは、1983年度の大会で「中学校段階での習熟度別学級編成は適切でない」と提言して以来、たびたび同様の主張を繰り返してきた。にもかかわらず、『学習指導要領』は相変わらず「習熟度別指導」に触れている。誠に遺憾である。「教育再生実行会議第九次提言」も「よりきめ細かい習熟度別少人数指導の推進」を強調している。『学習指導要領』では、ぜひとも記述をなくしてほしい。
 指導形態や学級編成は各学校の現状に応じて行うべきものであり、一律に「習熟度別指導」や「習熟度別学級編成」を実施することが望ましいとは考えない。むしろ、「習熟度別」は児童・生徒に差別感・屈辱感をいだかせ、学習意欲を失わせることにもつながる。フィンランドのように「習熟度別」をやめることによって学力が向上した例がある。必ずしも「学力向上」に結び付くとは限らない。また、人格形成において問題を生じやすく、生徒の健全な心身の発達を阻害する可能性がある。評価に当たっても、生徒の実態に応じた慎重な取り組みが求められる。
 

知2019

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