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日本外国語教育改善協議会(改善協)のアピール(2023年)

 2023年11月25日に文科省に提出した、日本外国語教育改善協議会(改善協)のアピールです。

外国語教育改善に関する提言


2023年11月25日

内閣総理大臣    岸田 文雄 様
文部科学大臣   盛山 正仁 様
中央教育審議会会長   荒瀬 克己 様
 同 「令和の日本型学校教育」を担う教師の
   在り方特別部会長
  渡邉光一郎 様
 同 教育振興基本計画部会長   渡邉光一郎 様
 同 教育制度分科会長   小川 正人 様
 同 生涯学習分科会長   清原 慶子 様
 同 初等中等教育分科会長   荒瀬 克己 様
 同 大学分科会長   永田 恭介 様


外国語教育改善に関する提言
日本外国語教育改善協議会 

 日本外国語教育改善協議会(以下「改善協」)は、1972年に発足した日本英語教育改善懇談会が、その四半世紀の活動を経て、1997年の大会で「日本外国語教育改善協議会」と名称を改め、活動を続けているものです。「改善協」は、一貫して、日本における外国語教育の改善を実現するための諸課題につき議論した上で、関係諸機関に提言また要請を行っています。運営は、この会に参加する各団体から選ばれた世話人が組織する「世話人会」を中心に進め、経費は各団体が拠出する参加費でまかなっています。
「改善協」は、2023年8月に、東京・一般財団法人語学教育研究所で第49回大会を開催し、外国語教育の現状を踏まえて、日本の外国語教育の改善を実現するための方策について、議論を行いました。各参加団体の代表及び特別参加者が、研究者、実践者のいずれにおいても個人の資格で、外国語教育の専門家として議論に参加しました。
 大会では①小学校英語の問題、➁中学校英語の問題、③高校英語の問題、④言語教育の現状と問題点、⑤教員養成・採用・研修問題、及び⑥英語以外の外国語教育について報告と論議が行われ、以下の提言をまとめ、関係各方面に提言を行うこととなりました。

  1. 望ましい学習指導要領について
  2. 小学校英語教育をめぐって
  3. 教科書問題をめぐって
  4. ICT及びDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応をめぐって
  5. 教員の養成・採用・研修をめぐって
  6. 評価をめぐって
  7. 高校入試や学力調査へのスピーキングテスト導入をめぐって
  8. 多様な外国語学習の保障について
  9. 教育予算・教育条件整備をめぐって
  10. 働き方改革をめぐって


Ⅰ.望ましい学習指導要領について

 かつての『学習指導要領』が主に授業の内容を規定してきたのに対し、最近のものは学習方法や評価にまで言及してきている。
現行の『学習指導要領』はますますこの傾向を強め児童や生徒の資質・能力をも規定した。これでは現場の授業を今まで以上に拘束することになり、教員の自主的創造的な授業の障害になることが憂慮される。教育は、一人一人の子どもの現実を踏まえて教師が創意工夫して行うところに本質がある。このことは、1947年の「試案」が以下のように雄弁に述べているとおりである。
 「その地域の社会の特性や、学校の施設の実情や、さらに兒童の特性に応じて、それぞれの現場でそれらの事情にぴったりした内容を考え、その方法を工夫してこそよく行くのであって、ただあてがわれた型のとおりにやるのでは、かえって目的を達するに遠くなるのである。またそういう工夫があってこそ、生きた敎師の働きが求められるのであって、型のとおりにやるのなら敎師は機械にすぎない。」
 そもそも「学習指導要領」は教員のための一つの指針として位置づけ、その内容は概要にとどめ、教員や教科書、その他の教材などを規制することのないようにすべきである。


Ⅱ.小学校英語教育をめぐって

 小学校英語教育をめぐっては既に何度も提言を行ってきたが、あらためてその提言の内容を明らかにしたい。
  1. (1)小学校における外国語教育の導入の意義と目標を明確にすること。外国語教育であり、英語以外の外国語についても児童にその存在を示すこと。
  2. (2)担当教員の十分な研修、長期的視野に立った教員養成やクラスサイズの縮小に対して、人的・財政的措置を行うこと。
  3. (3)教育内容については、小学校教育にふさわしいものにすること。
  4. (4)「ネイティブ・スピーカーや英語が堪能な地域人材など」は、現場が必要とするところに配置し、強制しないこと。
  5. (5)中学校との連携を十分に考慮し、小学校・中学校・高等学校・大学を見通した外国語教育のあり方を明らかにすること。
  6. (6)小学校では、英会話教室・塾に通う児童とそうでない児童の間に大きな格差が生まれている実態がある。「教科化」を理由に、中学校等への入試で英語を課すことがないようにさせること。
  7. (7)「国語」と「外国語」が連携して「ローマ字」の指導について検討すること。
  8. (8)外国語活動、外国語の指導にあたっては非正規教員ではなく専任教員を配置すること。
 以上の内容を実現できないのなら、小学校への外国語教育導入は再考すべきである。



Ⅲ.教科書問題をめぐって

 教科書の広域採択制度を廃止し、各学校や教員が子どもの状況に合わせて採用できるのが本来の姿であり、検定教科書の使用義務を緩和すべきである。
 改訂された小学校英語教科書は、現行教科書に比べて教材などが多様になってきているが、英語活動が中心であり、国際理解教育やことばへの気付きなどの教育内容が不十分と言わざるを得ない。
 中学校英語教科書は学習指導要領の変更に合わせて全体的に語彙が大幅に増加したことに加え、2021年度にも指摘したが、特に第1学年が小学校の英語教育と連携していない。多くの学校で困難を余儀なくされ、英語についていけない子どもたちが増えている。
 高校の科目「英語コミュニケーション」「論理表現」でも格差が拡大している傾向がある。
 更にデジタル教科書の問題がある。文科省は2024年度から小学校英語のデジタル教科書を導入しようとしている。デジタル教科書は特別支援学級をはじめ効果的な面はあるが、一般の学習者にとって有効であるかどうかの検証が必要である。また開発には資金が必要なため発行会社の淘汰を促進することが危惧される。
 小学校英語が教科化された時、「先生はボタンを押すだけで良い。授業はデジタル教科書がやってくれる」と発言した文科省担当者がいたと聞く(「教育」No.423, p.46)。これでは子どもと教員の人間的な営みである授業は形骸化され、機械がやっても同じとの結論になってしまう。教員が自由に教科書を扱い、創意工夫して授業づくりが行えるようにすべきである。


Ⅳ.ICT及びDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応をめぐって

 GIGAスクール構想によって教育のICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進められている。ICTは授業の目的を考え、適切に使えば子どもたちの学習効果を高めてくれることは明らかでありその実践も進んでいる。
 しかしながら、教育委員会などが現場の実態を無視して「必ず使う」「毎日使う」ことなどを強制するような事態は本末転倒である。世界的な調査(マッキンゼー2020)は、多くの国でコンピューターを使った授業がPISA調査(読解)の結果に効果的でなかった、また学校外でコンピューターを長時間使うほど生徒の成績は低下すると報告している。ICT機器の使用は子どもたちの学習に効果的かどうかを基本に考え、「活用」を強要すべきではなく、現場の自主的な判断に委ねるべきである。
 中教審では「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」が設けられている。ICT活用では「個別最適化」により生徒間の学力格差が進行する可能性も考えられるが、「協働的な学び」を加えたことは評価する。しかしながら、教育実践に大きく関わる内容であることを考慮し、結論は参考意見にとどめ現場に強制しないことを要望しておく。
 また日進月歩のICT技術を身につけ、子どもたちの学習のために効果的に使うには、教員の研修が欠かせない。教育行政は「働き方改革」を行なって勤務を軽減した上で、教員が自由に十分研修できる時間を保障すべきである。
 タブレット端末を調達するにあたって保護者の負担を要求する地域が生まれている。経済格差の大きい現在の状況を考慮して、公的援助を行うべきである。


Ⅴ.教員の養成・採用・研修をめぐって

 私たちは1999年度の大会で「外国語」担当教員の養成・採用・研修等について議論し、次のように主張した。
  1. (1)「外国語」担当教員の養成について
    「外国語」担当教員の養成のための教育は、当該外国語の指導方法に関する十分な知識と実践力を習得させ、また指導について工夫改善への意欲を持たせる内容とすること。
  2. (2)「外国語」担当教員の採用について
    「外国語」担当教員の採用に際し、当該外国語の指導方法に関する十分な知識と実践力および工夫改善への意欲を有する人物が選ばれるようにすること。
  3. (3)「外国語」担当教員の研修について
    「外国語」担当教員の研修については、長期海外研修を含め、自主的・主体的な研修を実現するよう、必要な措置を講じること。

 今年度大会では、2023年1月に出された中教審答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修などの在り方について~『新たな教師の学びの姿』の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成」をもとに議論を重ね、以下の提言をまとめた。



1.「外国語」担当教員の養成について
 第1に当該外国語およびその指導法に関する十分な知識と実践力を備えた教員を育成することを目的とすべきである。従って「教科に関する科目」の履修に重きを置くべきである。
 養成課程における教育内容については、養成機関の創造性と自主性を尊重すべきである。外部機関のテストなどが目標にされるのは論外である。また英語以外の言語についても「教科教育法」および「教育実習」を充実すべきである。なお教育実習の履修形式の安易な柔軟化は慎むべきである。


2.「外国語」担当教員の採用について
 「免許外教科担任」や「非正規教員」のような臨時採用教員や非常勤講師に頼るのではなく、教職員定数の改善を図り、それにともなう「正規教員」の採用増を行うべきである。そのために国による十分な財政措置を含む条件整備をすべきである。また選考対象者が外国語教員としてふさわしいかどうかは、前述のように英検、TOEFL、TOEIC等の成績によって測れるものでなく、全人的観点から選考されるべきである。こうしたスコアは外国語教員に必須のものとは考えられない。採用試験のために、教員養成課程でTOEFL等の受験対策の授業が増えており、人格の完成を目的とする教育に携わる教員を養成するための教育内容が矮小化されている。なお英語ができるだけで安易に特別免許状を発行することは許されない。教員養成課程を否定するものである。今回提案されている採用試験の前倒しについては大学教育の破壊である。



3.「外国語」担当教員の研修について

 教員一人一人が校内研修、校外研修などの様々な研修の機会を活用したり、自主的な学習を積み重ねたりしながらその力量を向上させていくとともに、教員一人一人の力量が発揮できるよう、必要な環境を整備していくことも必要である。なぜ外国語(英語)科の教員だけが強制的に「悉皆研修」を受けなければならなかったのか理解に苦しむ。また、「悉皆研修」のために、真に参加を望む研修に参加できなかった場合が多く、研修の目的に照らしてみると本末転倒である。なお校長の資質能力はマネージメント能力、アセスメント、ファシリテーションで良いのか。(「公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針に基づく教師に共通的に求められる資質の具体的内容」2022年8月)
 研修は教員が自らの判断で自律的に行うのが本来のあり方であり、教育行政は教員に「伴走」することが求められる。文部科学省がすすめてきた「カスケード研修」は上からの押し付けを目的とする全体主義国家が行うもので、主体的な学びを支援する教師の研修は主体的でなければならないのは言うまでもない。
 研修履歴記録システムによって研修の差別化を行うことは許されない。幅広く多様な研修を認めるための研修履歴記録でなければ意味がない。

 免許更新制にともなって10年ごとの研修を行ってきたが、それをやめるにあたって新たな研修を持ち込むなどはもってのほかである。


Ⅵ.評価をめぐって

 評価のあり方については、様々な考え方や方法があり、『学習指導要領』が大綱を示すにとどめるべきであるのと同様、評価についても一律に規定すべきではない。ましてや教科の特性を無視した全教科統一の3観点の設定には全く同意できない。
(1) 観点別評価
 「観点別評価」が導入されて以来、評価が自己目的化して相対的に学習内容の習得が軽視される等の問題を指摘してきたが、今回の3観点の導入により一層その傾向に拍車がかかっている。観点別のシラバス作成やテスト得点の細分化など、多忙化を引き起こした。また、3つの観点(①知識・技能、②思考・判断・表現、③主体的に学習に取り組む態度)のうち、特に③については、以前の「関心・意欲・態度」と同様、目に見えないものを客観的に数値化して評価するという矛盾を強いられている。
(2) 指導と評価の一体化
 評価とは、本来「評価のために終わらせるのではなく、指導の改善によって指導の質を高めること」が目的である(文科省「学習指導要領」についてのFAQ)。また生徒にとっては、自分の到達度や取り組むべき課題が見えるものでなくてはならない。しかし、観点別評価のために、普段指導していないことや授業で身に付けさせてこなかった技能をテストする等の問題も起きている。
教師が自分の指導方法に合わせて評価の方法も選択できるようにすべきである。


Ⅶ.高校入試や学力調査へのスピーキングテスト導入をめぐって

 外国語学習において4技能をバランスよく身につけることが重要であることは言うまでもない。しかしそれぞれを正確に評価することは必ずしも容易ではなく、特に「話す」力を測り入試に使うことについては、進路に関わることであり慎重さが求められる。
 東京都教育委員会は2022年ESAT-Jを実施し、その結果を都立高校入試の合否判定に活用した。入試制度として①不受験者には、学力検査の得点が同じ受験生のESAT-J結果から見込み点が与えられたが、その妥当性を示す統計的根拠がない②試験を前半後半に分けたため解答に影響する「音漏れ」が多くあった③ESAT-Jは「中学校学習指導要領に基づく内容とする」としていながら、高校で学ぶ文法が出題された、など多くの問題点が指摘されており入試制度として破綻していると言わざるを得ない。
 また教育的にも①入試に出題されることで、正しい文法と英語らしい発音を意識しなければならず、間違いを恐れて委縮する恐れがある②試験を動機づけにするのでは、試験で高得点を取るための学習になる③本来の人間と対話する生きたコミュニケーションの力を育てることができない、など教育面での問題点も大きい。
 文科省としても、大学入試で見送った民間試験の導入がこのような形で全国に広がることを黙視すべきでない。話す力はすでに授業の中で評価されており入試にも反映されているので新たに試験する必要はない。また話す力を養成するのであればクラスサイズを縮小することをこそ優先すべきである。
 2023年度全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)におけるスピーキングテストの結果は、6割の生徒が0点、平均正答率がわずか12.4%という驚くべきものだった。出題内容や中学校英語教育を問題にする以前に、我が国の「外国語としての英語教育」の状況を踏まえる必要がある。英語が日常的に使われることがない環境の中で、初学者に即興で話すことを要求するのには無理がある。中学校では外国語の基礎を身につけ、高校・大学・社会経験の中で時間をかけて実用に供する英語力を身につけるべきであろう。
 また、実態を把握する目的であれば、全国学力テスト自体、全数調査でなく抽出調査にすべきである。中学校現場ではテストが多すぎるために中学生が落ち着いて学習や学校行事に向かえない実態もある。


Ⅷ.多様な外国語学習の保障について

 公教育は、必修教科「外国語」において「英語一辺倒」の外国語教育から脱却し、多様な外国語の学習を保障すべきである。
 初等中等教育段階で「外国語」を学ぶことの意義は大きい。母語以外の言語の存在を知り、その言語を用いて日常生活を営んでいる人々の文化をその言語を通じて理解し、またその言語を実際に使用することによってさらに理解を深める、ということにより学習者の視野は広がり、感性が豊かになる。これは他の教科には期待できない教育効果である。そして重要なのは、このような教育効果がどの外国語によっても等しく達成可能なことである。つまり英語でなければ達成できないものではなく、現在の日本における外国語教育が英語一辺倒であることに正当な理由はない。
 多様な外国語教育の保障のためには、英語以外の外国語でも専任教員を採用すべきである。現在、英語以外の外国語の授業担当者の大半は非常勤講師などの非正規雇用者である。そもそも専任教員募集がなく、授業だけで生活を成り立たせることは到底できるものではない。この困難は新型コロナ禍でよりひどくなった。英語以外の外国語の普通教員免許状の取得者はただでさえ減少傾向にあり、普通教員免許状が取得可能な大学・学部もまた減少傾向にある。
 この悪循環に歯止めをかけるためには、専任教員の採用に踏み出すしかない。教職員定数の改善を図る中で独語、仏語、中国語、韓国・朝鮮語、西語など幅広い言語においても専任教員を募集し採用すれば、教員の身分は安定する。将来的に免許状取得者が増え、言語もより多様になることが期待される。さらに、教育実習の受け入れも可能となる。より充実した児童・生徒への指導が可能となり、全体として教育の継続性が担保される。英語以外の外国語においても専任教員の採用選考を行うべきである。


Ⅸ.教育予算・教育条件整備をめぐって

 日本の教育予算は1970年代以降相対的に減らされ、OECD諸国の中では最低レベルである。その結果1クラスの人数も35人どまりで、先進諸国に比べて極めて遅れている。改善協は1970年代より「外国語」授業のクラスサイズについては15人を上限とすることを提言しており、外国語の授業においては国際基準である。高校や大学の奨学金もかつては給付中心だったものが貸与になり、しかも利子がついてくるということで大学進学をあきらめざるを得ない状況を引き起こしている。早急に給付奨学金を拡大すべきである。


Ⅹ.働き方改革をめぐって

 小学校や中学校の教職員が過労死ラインに迫る働き方を行っていることについて多くの批判が出されている。そして文部科学省は「働き方改革」の名のもとに、学校において残業を行うことを制限している。しかし仕事が減るわけではなく、授業の準備などは持ち帰り仕事として除外されている。本来は授業とその準備だけでも勤務時間はぎりぎりであり、その他の仕事は極力減らさなければならない。様々な文書を書くことが強制され、そのことによって授業に支障が出ているという本末転倒の事態が生じている。即座に改められるべきである。
 ある高校現場からの提起によれば、業務が多様化し、各種調査やアンケートなどの文書事務、スピーチコンテスト審査員、中学校出張(出前)授業、特別支援学校との交流授業、英語検定受験者への指導、生徒の海外研修の指導等が求められている。持ち時間を減らさない限りこうした仕事は勤務時間内では終わらない。
 更に昨今の再任用教員、非常勤講師の増加は、専任教員の負担増につながり、教職から離れる教員の増加につながっている。このことが教員不足を引き起こしており、早急に改善されなければならない。学力調査の前に教育環境、教員の労働条件の調査、改善を行うべきである。
改革にあたっては「給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)」を根本的に見直す必要がある。現在の勤務実態は半世紀以上前(1966〜1971年)とは大きくかけ離れている。これを廃止して残業手当を支給すれば膨大な予算が必要となり、その結果残業自体が減少していくはずである。




資料
言語教育・外国語教育に関する私たちの見解

 私たちは、2001年度の大会において、学校教育、なかでも初等中等教育において行われるべき言語教育の目的について話し合った。その結果、次の内容について共通の認識をもっていることを確認し、公表した。現在に至るまで、大会を開催するたびに、これが共通の認識であることを確認したうえで議論をしている。

  1. (1) 言語は人類に共通の能力であり手段であるとともに、民族、集落、地域など各集団ごとに異なるものであることを知り、また言語を使用することを通してそれを体験すること。
  2. (2) 言語は人間の成長発達や生活に深く関わるものであることを知り、また言語を使用することを通してそれを体験すること。
  3. (3) それぞれの言語には特有のルールがあることを知り、また言語を使用することを通してそれを体験すること。
  4. (4) 言語は、他言語との関わりによって、それぞれに独自の変化をするものであることを知ること、および体験すること。
  5. (5) 言語は、自他を問わず人を生かすことも、傷つけることも、癒すことも、さらには殺すことさえもできるものであることを知ること。

 また、私たちは、外国語教育の改善のために、以前から次のように主張してきた。

  1. (1) 外国語教育が言語教育の一環を担わなければならない。
  2. (2) 外国語教育が人間相互の理解の教育、ひいては国際理解の教育において、重要な役割を果たさなければならない。
  3. (3) 上記(1)および(2)は、当該外国語を、実際に体験することによって初めて実現できるものである。
  4. (4) 多様な外国語の学習を保障すべきである。
  5. (5) 指導方法については、様々な指導方法による経験の蓄積があるのであり、『学習指導要領』等が格別なことを言及すべきではない。

 以下に根拠を述べる。

 世界には様々な人々が様々な文化の中で生活しており、それぞれ固有の言語を持っている。この事実は重い。固有の言語に加え、様々な原因・理由によって英語を第二言語あるいは外国語として用いる場面が多いとしても、英語教育のみを無批判に優先させることは誤りである。むしろ、母語を含めて諸言語を相対的に捉えることができるようにすべきである。使用人口の多寡、政治的・経済的要因によって言語の優劣を考えるという誤りに気づかせることこそ、必要なのである。学校教育における「外国語」も、それが英語一辺倒にならないようにすることによって、国の内外を問わず、様々な民族・文化が存在することを学ばせることが必要である。また外国語の指導方法については、各学習段階において、個々の指導者には様々な指導方法による理論的・実践的経験の蓄積や教材等がある。言及する必要はない。


日本外国語教育改善協議会第49回大会参加者

淡路 佳昌(語研)池田 真澄(新英研)植野 由希恵(新英研)
大内 由香里(語研)大津 由紀雄(特別)佐々木 力(高独研)
瀧口 優(新英研)手島 良(語研)中山 滋樹(GDM)
山崎 勝(語研)吉岡 潤子(新英研)

団体名
 語研=財団法人語学教育研究所
 新英研=新英語教育研究会
 GDM=GDM英語教授法研究会
 高独研=高等学校ドイツ語教育研究会
 特別=特別参加者

日本外国語改善協議会2023年度世話人会

池田 真澄 大内 由香里 佐々木 力 瀧口 優 中山 滋樹

日本外国語教育改善協議会
  〒116-0013 東京都荒川区西日暮里6-36-13
            サザンパレス102 号室
       一般財団法人 語学教育研究所内


(2023年12月10日掲載)

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