■ 春季セミナー 2013年

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3.総合討論 16:05-16:50(45分)

(司会・奈良から) 
「まず、本日の講演と中高の現場から報告の3人の提起を受けて「英語嫌いをなくし学力向上」のためにどうしたらよいか、10分間また「班討議」して下さい。

<班討論発表>

(S高校)
生徒の英語嫌いをなくすには生徒の活動の時間を増やし、教師が発言しすぎないように授業を組み立てることが鍵になる、ということを話し合った。
(東京・中学)
萩原さんのretellingなどの活動から実践のたくさんのヒントを学んだ。 英語を受け入れない生徒に対してListen!, read,などのclassroom Englishを使い、だんだんその単語の数を増やす――つまり生徒の立場に立った指導が大切だと思った。生徒の心に入り込むような指導が英語嫌いを減らし学力を伸ばすことにつながるではないか。
(埼玉・中学)
「文法がわからないから嫌い」という生徒が多い。また生徒が単語を知らない、語彙力不足から来ていることある。教師は、難しい文法用語(例、不定詞、後置修飾)を避け、生徒になじみのある説明の仕方が必要ではないか。
(山梨・T大学3年)
「『生徒の気づき、協同的学びあい』の大切さを話し合った。たとえば、英語の日本語の語順の違いに生徒が気付いたら、その面白さを指摘しあい、さらに分からない生徒に教えて行くという風に、協同学習的・能動的な授業を組織すれば、英語が楽しい、好きになるだろう、と思った。

<総合討論>

総合討論

(埼玉・中学)
難しい文法用語を使うべきでないという指摘があったが、ただ教師が替わったとき、自分で学習する時なって文法用語を知らないとかえってつまずくのではないとも思った。
(司会・奈良)
私が作った資料(10p)で文法が難しいと答える生徒7~8割に達している。今日のテーマである学力向上には文法をきちんと教えることが必須である、という方向に焦点化されてきているが他に意見は?
(東京S予備校)
文法用語を使わずに訳読授業を実践したことがあり、1カ月ではあったがうまくいった。ただ今予備校では教えているが、日本語と英語の語順の違いなどについて、効果的に日本語(難しくない用語を使って)を使って説明している。
(東京・高)
教えている生徒がどれだけの用語の水準に耐えられるかの問題だろう。一般的に「文法がつまずきの原因」というフレーズは危険だと思う。要は、生徒にレベルに合わせきちんと教えること、つまり「文法の枝葉と幹」を区別し、どこまで生徒に教えるかを見極めることが大切だと感じた。
(東京・S中高)
現在、中高一貫校で高3、中2・中3を教えている。レベル別の授業を行っていて、私は"一番下のクラス"を教えている。最初は「なんでこんなに学力が低いのだろう!?」とびっくりした。日本語自体も理解できない。授業をどう進めていくか当惑している。文法を教えるなど無理の感じ。授業の初めに英語の歌をかけるがそれも追えない。カーペンターズやビートルズではゆっくりすぎて聴かない。仕方ないので、生徒のリクエストした最新の曲は聞くが、1回しか持たない。喫煙するとかの生徒がいないが、無気力の生徒には困っている。
(私立中高一貫の女子校)
高校でレベルの一番低いクラスを担当している。「文法事項を覚えようとしない」生徒たちばかり。ただ中高一貫校なので、中学の時に使ったクラウンの教科書をいつも持ち歩いていて、高校の授業の中で、たとえば「この文章は中学2年のクラウンのあそこにあったでしょ! これよ!」などと言って見せると、生徒は「ああ、そうか・・・」とのってくる。過去のことを想起させながら教えている。授業で古い教科書をもう一度使うというのは結構メリットがあると思う。

<初参加者からの感想>

(中年男性)
教師ではない。勤務する団体で外国人に対する日本語教育を行っている。EPA(経済連携協定)でフィリピンやインドネシアから来日する看護士:介護士志望の学生などを指導。大切にしているのは①モチベーションを高め続けさせる、②自立学習に取り組ませ、③アーティキュレーションである。これは英語教育に共通するものがあると思う。
(K高校)
「英語の授業は英語でやれ」と方針がだされ、うちの校長は低学力のクラスでこそ英語でやれ、と言うので議論になった。英語ギライになるにはそれなりのプロセスがあるはず。今日は、諸先生が生徒の実情にあわせて指導法を工夫していることを知った。大変参考になった。ありがとうございました。

<3人の報告者からの感想>

(斉田)
自民党教育再生実行本部のいうように、外部試験やネイティブを入れれば問題が解決するということではない、それは暴論だろうと思う。産業界が英語教育の実情を踏まえないでかき乱すような発言をくりかえすのはやめて欲しい。今日の二人の先生の実践のように、先生方は生徒に向かい合ってきちんと教えたいと思っている。今日のような研修を深める熱い努力こそが大切であろう、と思った。
(泉)
「どの子も英語をわかりたい」とよく言われてきたが、それはうそだと思う。先ほどのS校の先生の発言に共感を覚える。しかし授業で関心を示そうともしないそんな子も「わかった」瞬間はうれしそうな表情をする。その"点"としての瞬間を多くして"線"になるように努力していきたい。
(萩原)
授業開始前「ハァー」とため息、戻ってきてまた「ハァー」とため息が多くの英語教師の毎日だった。もうちょっと工夫をしていこうとこれまで揺さぶることを提起してきた。英語で進めても日本語で進めても分からない授業は生徒にはつらい。生徒に「分かった、高くなった」という喜びの実感させることが大切。そうすれば生徒は自然と"ついてくるもの"。そういう習慣をつけさせよう。
(奈良)
資料に示したが、1989年の学習指導要領のコミュニケーションへの路線転向以降、斉田先生の研究によれば1995年から14年続けて学力が低下している。ベネッセの調査でも英語嫌いが指摘されている。「英語嫌いをなくし学力向上を」というテーマは今後も大きな課題であり続ける、と思う。今日のセミナーを第一歩にして、私たちはこの課題に取り組んでいきたいと考える。皆さん、ご協力ありがとうございました。

インフォメーション (16:50)

(柏村、菊地ケ)
『新英語教育』6月号は"希望"が見える号、是非『新英語教育』を購読し会員になって欲しい。北海道で新英研全国大会に参加してほしい。参加すれば元気が出ますよ。埼玉・神奈川・東京の新英研例会が5月11日(土)にあります。

閉会挨拶:柳沢  (16:55)

 本日は、これまでの新英研の学力論議と最近の自民党・教育再生実行本部の「提言」、そして現場からの報告を中心に限られた時間ですが「英語嫌いをなくし学力向上」について討論会を行いました。今後もこのような企画を立てて開きたいと思います。なお、和歌山大学の江利川春雄さんや大津由紀雄さん、鳥飼玖美子さんたちが中心になって7月14日(日)に講演集会を開くと聞いています。詳細は後日お知らせします。本日はご参加ありがとうございました。

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