■ 東京・神奈川・千葉10月合同例会

2014年10月
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日比和子さん講演
中学校実践:「どの子にも輝く場面創りを」


日比さんのスピーチとワークショップ

<大切にしている5つの視点>

  1. ①how to teach とwhat to teach両面から
  2. ②生徒の実態に合わせる
  3. ③実力+αの目標設定と成就感を味わわせる
  4. ④認める・励ます・ほめる
  5. ⑤必ずフィードバックして次回に繋げる

<具体的な工夫>

  1. ①4月に授業のルールと年間計画の提示
  2. ②small topic やsmall talk
    ・天気、季節、ニュース、etc.
    ・ことばのおもしろさ、日英対比 
  3. ③導入で引きつけ展開へ 
  4. ④個人・ペア・グループのアクティビティー 
  5. ⑤自己表現作品づくり 作品のフィードバック
  6. ⑥歌やビデオを効果的に取り入れる
    ・アリス ・ゼロランドマイン ・セヴァンスズキ 
    ・We Are the World(Haiti版も) ・Mother Teresa
  7. ⑦イベントを盛り込む
    ・字幕翻訳コンクール 戸田奈津子賞をゲット
    ・大和市英語大会のEnglish Performanceの部でPeace book発表+円陣でCups披露
    ・3-minute group chatでコミュニケーションの楽しさを実感

【ワークショップ】

2つのヒントで有名な人物を当てさせるクイズ活動

  1. 先生が2つのヒント(一般的な第一ヒントとより具体的な第2ヒント)を出して、グループであてる。第1ヒントで3ポイント、第2ヒントで1ポイント。逸ノ城、マータイが出題された。
  2. グループ毎に、答えとその答えにまつわる情報が日本語で書かれた文をもらい、そこで同じ形式のクイズを作る。各グループで同じ形式で答える。ジョニー・デップ、国枝慎吾、織田信成が問題。

<質疑>

  • 日比先生のネタ帳がみたい
  • さっきのCDは? When I Am Gone   
  • 中味のある曲をかけてという生徒 Am I Wrong?(ノルウェーのグループ)を今度やりたい。

日比レポート,参加者の感想

  • フットワークの軽さがとても印象に残りました。言葉は生きものなのでやっぱりネタも生き生き新しくないとだめですね。私もアンテナを張り巡らそうと思いました。
  • 言葉というのはやはり血の通った温かいものなんだと改めて思いました。自分がもっと言葉に敏感になり、言葉を楽しむようにしていきたいと思いました。
  • 日比さんの授業を創るのが楽しくて仕方ないと言う姿に本当にパワーをいただきました。心がスーッとして、自由になれて、土曜日のアフタヌーンにふさわしく気持ちが救われました。拓殖大学から来た学生さんが、目をキラキラさせて報告を聞き、期待を膨らませている姿に、この会があってよかったーと思いました。
  • 日比先生の日々の日常を英語の教材にしていく姿勢には脱帽です。
  • 日比先生のスピードの速さには圧倒されました。
  • 日比先生のお話で一番学ばせてもらったのは授業以外のところで研鑽されているご様子。それを知り、すごいと感じました。
  • 日比先生の尽きないアイディア、言葉に対する興味、好奇心、何より子どもの前に立って話すのが楽しいと思わせる雰囲気を沢山の研究と試行錯誤を経た経験の重みが伝わりました。
  • 教師が日々創意工夫して、楽しく英語の力がつく実践に感服しました。"若さ"を感じます。
  • 季節感や教室の生徒の様子が生き生きと伝わるような実践報告で、私もやってみよう!こんなこともしてみたいという思いが沸いてきました。
  • 日比さんが「楽しみながら」授業の工夫をされてきたことが印象的でした。「スマイル・レシピ」の編集担当をずっとやっていただいていますが、ご本人が連載で何十回も書けそうな多くの楽しい創意工夫がいっぱいで、素晴らしいレポートでした。
  • 日比先生の雑誌やプリントに、行き詰った時の突破口を見出してきました。(本当です!) 雑誌にただよう明るさと新しさと細やかさを、ナマ日比先生のレポートを聞いて、すごく元気と「生きる気力のモト」をいただきました。楽しむこと、語らうことをとても大切にされていて、先生の言葉が文化そのものだなァと思いました。まだまだ伝えてください。よろしくお願いします!!
  • 日比さんのお話は自分にとってためになるものばかりでした。日比さんの授業は個性的で自分で作成した教材を使っていたので、吸収して自分のものにしていきたいと思います。楽しい時間をありがとうございました。

Coffee Break
休憩

関口昭男さん講演 
高校実践: What can teachers do through foreign language education in Japan?~今、授業で、できること・することは?~


関口さんのスピーチ

心に残る数々の生徒からのメッセージ

 スピーチ"I Have a Dream"をカセットテープで聞かせて原稿も読んだ。 生徒はわからないけれども黙って聞いた。
 先輩の先生、中学から上がってきた先生、新規採用、民間人で 20人の転任者で学校を作った。仲間内の交流が盛んで自宅を知らない先生はいなかった。のちに教育を考える会をミニ教研のような活動を作った。
 生の英語を聞かなくちゃだめだ、といってビジネスマンのための英語講座や外国の講師や知り合いの人を呼んできて生の英語を聞かせた。
 自分の目標となる先生(原田先生)がいた。 What color is love? Chaplinなども聞かせた。 これを一列から一人代表で発表させた。 「あいつがあんなにやれるなら、俺来年頑張るよ」と言った生徒が印象に残っている。 「来年」はなかったのだが。

 高校は塾予備校でやらないことをしてほしい、という声もあったが、「受験とは」と1年のはじめから言う先生たちもいた。 卒業式で腰くらい長い髪を壇上で切った生徒がクラス代表の挨拶でする生徒がいた。 野球部のエースピッチャーが秋からピアノ弾いたりしていた。 部活動も盛んで自由だった。 教室には色々な外国籍の生徒もいる。今は日本人だけのクラスは少ない。 マイノリティーを見ないのは外国語教師としてはいけない。
 野球部の生徒――野球は好きだが公式戦に出たくはない、 ユニフォーム代はないし、それほど練習もしたくない、 生活費を稼ぐ方がさき という生徒がいた。
 "Rose"を3学期にかける歌として、いつもやっていた。

 生徒は頑張るんだなと思っている。今は流通経済大学の教授になっている。 彼は8キロのマラソン大会で3年で3連覇した。「みんながそんなに言うなら頑張ろうか」と思ったから。

 「先生はノート派?プリント派?」と聞かれた。生徒は英語教師をその二つに分けているらしい。高校1年なのにまだ四線ノート(ペンマンシップ)を持ってくる生徒がいる。
 いじめが一昨日のプリントで小学校で11万、同じ教室にいて殴られる、メールでのいじめ。 これはなんだろう。35人以上の教室を放置しておいて、「英語で英語を」はないのではないか。
 日比さんのレポートの2ページに書いてある学校の生徒の特徴を見て欲しい。 今時の生徒の特徴をよく捉えていて、ほとんど賛成。 手がかかる、地道に努力するのが苦手など。生徒の変わらないのは同じ、素直で言われたことだけをやる。新規採用の先生が生徒をさして、ロボットと言った。素直だが未熟で自分でやろうとはしない。人と繋がるのも苦手。教員が言葉を豊かにしておかないとダメ。最近言葉が通じず、若い教員にも通じなくなっている。40代にはもう通じない。どんなことに関心があるのだろう、依存症ではないか。
 スマホがないと死んでしまう。ずっとオンにしていないとダメ。便利だから、安いから、それがないといられない。 看護師を目指す生徒に「何をしているか」聴くと片道2キロの道を週3回歩いているだけという。僕なら全部歩く。220円のバス代が浮く。一つ二つは誰も依存があると思うが、何でもかんでも依存は良くない。なるべく自分でやらせよう。なるべく自分達でやらせたい。いつもついてきただけの子は自分で行けと言ってもいけない。大学入試にも前の日までに行って行けばよかったのに、自分で行けない。
 国語と英語の教員は時間数が多いので、どの教科より、生徒と一番接する機会が多いのではないか。協力してもう少しことばを豊かにする取り組みを一緒にしてはどうか。 統一の、失敗する経験、自信をつけさせる経験をさせたらいいのではないか。

 皆さんに聞きたいのは、授業の中で英語を実際に使う時間を何分くらい取っているか、話し合ってほしい。

<話し合いの結果>
先生が英語を話して自己満足の人が多い。むしろ、生徒がいかに英語を使う時間が増えたかが重要。 Speaking Listeningばかり考えていないか。できるだけ生徒だけで喋る時間が必要。 深いコミュニケーションをするには、考える時間が必要。当然、母語で考える時間も必要。 15分くらいはそういう時間が毎回欲しい。 生徒と生徒が英語で喋るのを重視すべき。 子供の層で反応が分かれる。一部の非常に優秀な生徒は先生との英語のコミュニケーションを好むが上位のすぐ下の中の上くらいの生徒はそんなことしている時間があるなら文法、書き換えを教えてくれとなる。 PFTとアシスタント・ジャパニーズ・テーチャーが居る感じ。数ヶ月前にオーダーした外国人による授業でないと、偽装請負になってしまうから。


 "Stories for Young Readers"―実際の生活に出てくるようなけんかや葛藤場面が出てくる。 身近な英語を、どんどん紹介していく。「回送」は英語でなんというか。Out of serviceが出てくる。 するとout ofを覚えれば、out of seasonなどほかの言葉も日常の生活の中で出てくる。

 以前は、英語の授業は、語学的pointと文化的pointと言われたものだが、文化的pointが弱くなっているのではないか。
 新英語研究会には瀧口さんの膨大な歌の実践に惹かれて、自分と共通するものを感じて入った。 レイトショーの映画館に日比さんと出会ったこともあった。 映画で印象残った言葉、受賞のスピーチの何かしら心に残った言葉、それを日本語でしても、英語で文化背景を説明しても、その言葉が英語であり、文化を教えられればいいのではないか。 生徒に英語が残れば、それも英語の授業としていいと思う。 I never had any friends later on like the ones I had when I was twelve. Jesus, does anyone? (Stand by me)のメッセージがある。自分の経験でもそうだと思う。

 5分置きに出席を取らなければいけない学校にいた。5分たつとトイレに行きたい、体育の着替えで15分くらい遅れてくる、おにぎり食べてもいいと聞いてくる、それもすべて英語に結びつけて指導する。 I'm sorry. I'm fifteen minutes late. や、We mustn't eat food during class.
 英字新聞のヘッドラインやクイズで最初の5分、英語できっかけになったり、興味を持たせる時間があってもいいと思う。

 村岡花子は60の文を疑問文にしたり、否定文にしたりして勉強したそうだ。

 今の学校はリスニング、スピーキング、リーディングの教科書があるので 自分の授業の時間がない。生徒は携帯で検索してさっさと調べてくる。

 イントロダクションでALTの家族紹介。仲良くなってアパートまで探してやった。 自分で言える会話付き暗唱教材、映画、歌詞から後に英語が残るような教材を紹介。

 A4ノートを各自用意させる。ノートとプリントを折衷。 生徒はノートをテスト後に提出させられるものと思っている。 でもコピぺで終わり、全く覚えていない。 大学に行く生徒はノート提出のためだけのノートを作っていてはついていけないと思っている。

 自分の授業だけでなく、放課後の生徒の様子もいつも見るようにしている。 学校全体を見る力が教師に必要なのではないかと思う。


<質疑応答>

  • 生徒会の指導、放課後の活動で得たものは何か。
    ⇒どんな生徒がここで学習しているか知っておいたほうがいい。個人情報は放課後得られる。
  • 生徒会の指導と英語の授業の指導はどう関わるか、関わらないか。
    ⇒関わる。イベントにまつわって、自分は何をしたか、英語で話させたり、何もしない人がいたら、来年は何かしたほうがいいのではないか、と言ったり。ホームルームでも英語の授業でも振り返れるほうがいいと思う。
  • 一番手を焼いた生徒とのエピソードは何か。
    ⇒9回の特別指導を受けた生徒がいる。その頃は生徒をやめさせず、その頃の罰は日本国憲法を写させた。ノート2冊目には筆記が変わっていた。

関口レポート,参加者の感想

  • 関口さんの総合的な教育力にうなりました。
  • 37年間ご苦労さまでした。あたたかい人間観にあふれた言葉、ありがとうございました。
  • 関口先生の37年間は感動的でした。特に(0)の9つの生徒の言葉はどれも言った生徒の思いも、それを受け止めた先生の思いも、ぐっと伝わりました。私ならこんなエピソードやことばを紹介したら泣いちゃいます。4度の引っ越しでどんどん過去の資料が減って行き、今では学級通信だけしか残っていません。たくさんとっておいてある先生がうらやましいです。安野先生の最後のお話にも感動しました。
  • 関口先生のお話の中で、心が動いたのは、何よりも人間味のある人柄をお話から聞きとることができました。よいお話をありがとうございました。
  • 関口先生の社会、世の中の見方、生徒観、人と仲間とかかわる、ふところの深さ、そうしたものが伝わり、英語教育の狭い間仕切りだけにとらわれない視点が私にとって魅力です。同時に英語のすてきなphraseもちりばめられて学んでいます。
  • 理論派の教師だったのですね。よく教師の生涯をていねいにまとめてありましたが、やや実践的の話が少なかったのが残念でした。でもお疲れさまでした。
  • Teacher's beliefが感じられ、今まで出会った生徒さんのことばや取り組みの中で、何を大切にされてきたのかが伝わるあたたかい報告でした。実践ももっとききたかったです。
  • 関口さんの学校づくり、組合づくり、授業づくり、部活、生徒会、生活指導など幅広い守備範囲がわかるお話でした。「授業は英語で」よりも「授業は人間で」という印象を持ちました。
  • 関口先生の授業のネタや生徒への目線は、本当に日々の細やかなメモや記録から来ていることがわかりました。「車の中で書きとめる」や「旬の英文」はキーワードになりました。小さなことを信念をもって続けること、文科省におしつけられずに、自分の視点で大切なことはしっかり積ませる、ということを徹底していきたいです。関口先生の生徒の今をつかみつつ、文化のある授業を少し分けていただいて、よい時間でした。
  • 聴きながら自分自身が生徒とどう接し、何を教えるのか?といったことを考えさせられました。目の前のことに精一杯の日々ですが、関口先生に明日からのエネルギーをいただきました。
  • 残り30分しか聞けず残念でした。先生の柔らかい雰囲気で、大変な環境で長年楽しんで授業をしてこられたのがよくわかりました。英字新聞の活用(ラミネート)、真似してみようと思います。資料も後でじっくり読みます。ありがとうございました!
  • 関口さんが今まで接してきた生徒たちのメッセージを見て、まず思ったことはいろんなタイプの生徒がいるんだなと思いました。先生という職はこういった生徒たちと出会い、共に成長していくものなのかなと感じました。英語の授業をどう行うかは今後の課題でもあるが、関口さんや他の先生方の貴重な意見を聞けて参考になりました。

秋のアフタヌーン・ワークショップ
~二人の実践から学ぶ:日比和子・関口昭男退職記念講演会
●主催: 新英語教育研究会中央常任委員会
●日時: 2014年10月18日(土) 13:30~16:45
●場所:
千代田区立麹町中学校
地図中の赤のバルーン 〒102-0093 東京都千代田区平河町2-5-1
東京メトロ・永田町駅 9b番出口または4番出口より徒歩3分


より大きな地図で 千代田区立麹町中学校 を表示
●日程: 13:00 開場
13:30 開会挨拶
13:35 日比和子さん講演・質疑
15:00 休憩
15:15 関口昭男さん講演・質疑
16:40 閉会挨拶
16:45 終了
17:15 日比さん、関口さんの退職を祝う会(希望者)
●内容:
日比和子さん講演
中学校実践:「どの子にも輝く場面創りを」

関口昭男さん講演
高校実践:What can teachers do through foreign language education in Japan?
~今、授業で、できること・することは?~
●参加料:
会員無料、未会員500円
●備考:
「日比さん、関口さんの退職を祝う会」は、
地図中の緑のピン 「赤坂個室居酒屋 銀扇」
(麹町中から徒歩8分、地下鉄赤坂見附駅徒歩1分)にて、
参加費4,500円(記念品代込み)です。
●問い合わせ: 新英語教育研究会(池田真澄)※終了に伴い、電話番号を削除しました。
●ダウンロード: PDFファイル 2014秋のアフタヌーン・ワークショップチラシ
●今後の予定
(神奈川):
11月例会 11月15日(土) 大倉山記念館 第1会議室
●中学校実践報告:大澤美穂子さん(相模原市立相模台中学校)
●高校実践報告:「世界の英語教育の流れと新英研 ー イギリスの大学院で学んだこと&よもやま話」
池田 真澄さん(白梅学園大学)
レポーターから:「学習指導要領の理論的根拠となっているコミュニカティブ・ランゲージ・ティーチング(CLT)は、どこまで日本で信頼したらいいのか」、「いままでの新英研の理論や実践は、世界の英語教育理論の中ではどんな位置づけになるのか。」そんな興味を持ってシェフィールド大学で応用言語学を学んできました。私などには大きすぎるテーマなのですが、少しでも理解し考えたことを、できればと思います。

◇ 12月例会  12月20日(土) 大倉山記念館 第1会議室
●中学実践報告:廣橋智美さん (品川区立小中一貫校八潮学園)
●高校実践報告:「学びはひとりでは成立しない ―生徒に協同感を持たせるための仕掛けづくり―」倉本和晃さん(慶應義塾高等学校)
レポーターから:今はネットや学習書を利用すれば一人で英語学習ができる時代です。そのような中、教室で英語を学ぶ意味はどこにあるのでしょうか。答えは仲間と共に学ぶことにあると私は考えます。この数年、授業を組み立てる際に「他者と関わることで成立する学び」を念頭に置いてきました。その取り組みを皆様と共有できればと思っています。

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(2014年9月1日掲載/11月8日更新)