■ 神奈川新英研6月例会
2014年6月
近況,最近取り組んでいること
- Cooperative Learning (研究テーマ)
- レベル差のある高2、3の指導
- 多読
- 英語読解問題を正確に解くスキルを育成する教材の開発
授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど
- 「旧態依然としての授業の仕方のみが英語の指導方法だ」としか、「学び」がない教員が多く、新たな指導方策に対しての理解ができない(しようとしない)ということ
- やんちゃ生徒とまじめ生徒をバランス良く力をつけさせるさじ加減
- クラスによってうるさくなる場合がある
神奈川新英研事務局への意見
- 改めて機会を与えて下さり、ありがとうございました。「速読・速聴」「センター・英検の効果的な点数のとらせ方/指導方法」などの「ワザ」も持ち合わせておりますので、今後とも皆様のお役に立てればと思います。
中学実践報告:「ICT機器活用の可能性と今後の課題」
直井 孝太郎さん(大和市立下福田中学校)
1. はじめに
- レポーターから:ICT機器を今どのように活用しているか、またICT機器を使う上での留意点などに触れたいと思います。授業の中でどのようにICT機器を効果的に活用できるか意見交換の場にしたいと思います。よろしくお願いします。
- 大和市南部の学校で生徒数は350人ほど、学力低位の生徒が少なくない。各学年とも4クラスで、3年生を担当している。今年度は固定教室での授業が可能となり、ICT機器をいちいち移動する必要がなくて助かっている。
- 3学年英語科のねらいとして、「学力低位の生徒への手立て」と「高校入試に対応できる英語力の育成」を設定し、文法・音読・日本語訳を中心に実践している。
2. 授業
- ICT機器を活用する理由は、何よりも時間を大幅に短縮できるという点にある。文法を扱う際には書画カメラを、日本語訳ではパワポを利用して時間を短縮し、浮いた時間に様々なアクティビティーを導入することができる。主に自己表現活動からショート・スピーチ発表にいたるアクティビティーを取り入れているが、現在は修学旅行を前に、「お気に入りの場所」スピーチにトライしている。生徒の反応は良い。
- 第2には繰り返し提示することが容易であるという点が挙げられる。「重要文法事項」「教科書本文」「授業プリント」などを瞬時に、そしてくり返し示すことで学力低位の生徒の学びの定着を効果的に図ることができる。
- 第3には映像や動画など、教室にはないものを取りこんでリアルに映し出すことにより、学力低位の生徒の関心を高める上で有効である。
3. まとめ
- 今後の課題として、先ず「環境の整備」がある。ほぼ全て自費で購入せざるを得ず、PC利用の許可も必要である。また、来年度も固定教室が利用できる保証はない。次に「教師のICT活用指導力」という問題がある。使いこなせないという先入観から最初の一歩が踏み出せず、自然、ICTを使おうとする教員は少ないままで、結果、行き詰まっても相談する相手がいないということになる。ICT活用が広がらない理由がここにある。
- 気をつけるべきこととして、「ICTに使われない授業を心がける」を肝に銘じている。
<参加者の感想>
- ありがとうございました。5年目の教員生活の中で、すばらしいICT機器を駆使され、自由自在に使われて大変うらやましく思いました。
- 生徒と教員の関係はいつでもアナログということはあるが、時間を浮かせるためのICT利用というのは面白い。浮いた時間を利用した活動をバラエティに富ませることでいくらでも生徒のアナログ関係を深めることができるだろう。
- 直井さんのように機器を上手に作れる、使える方は、時間をやりくりして、自己表現活動に力を入れられるので素晴らしい。
- 機材の使い方、実践していく中での長所。私が「ねらっていること」が「ICTをいかに導入すること」、それも「道具を上手に使いこなして成果を上げること」なので、参考になりました。今後の英語・日本語教育に役立てたい。機会が許せば、年間、月間の授業の中でどのように取り込んでいるかを知りたいと考えています。今後の教育活動をしていく上でも「道具で教える姿勢」を貫いて頑張って下さい。
- ICTは私も使っています。Office Onlineの情報はありがたかったです。マーカーで書き込めるというのも良いかもしれません。問題点は設置時間だと思いました。英語教室があれば良いのですが、プロジェクター、ホワイトシート、書画カメラと機材が多い場合、どうされているのか伺いたいです。文法シートを使って指導するとき、シートに書いてあるかどうか判断して良いか知りたいです。アクティビティーの時間確保のためというのが素晴らしいと思いました。修学旅行中のインタビューは、学年で決めたのですか。iPadを使った授業は生徒に持たせるのでしょうか。ICTで何を伝えるのかもっと知りたいと思いました。生徒がプロジェクターの横でスピーチをしている映像は、大変参考になりました。MSの代わりに模造紙でも良いと思いました。黒板に直接あてるのも良いと思います。貴重な実践報告でした。こうした実務的な問題点の共有は必要だと考えます。
- ICTは"tool"であって"purpose/goal"ではない…ということを踏まえて活用していくことが大切である。しかしながら、孤軍奮闘している直井先生は立派である。自費ではなく、あくまでも「生徒のための工夫」なので、必要経費として学校や企業からの助成を得て(得させて)欲しい。今後ともご活躍下さい。
- ICT環境が整っていない中での果敢な取り組みに頭が下がります。あくまでもアクティビティーの時間をうまく生み出すためのICT活用という視点と伺って安心しました。(中には、ICT活用が全てと思いこんでいる人も見受けられるので…)次回は是非、アクティビティーの取り組みを中心とした実践報告も伺いたいと思います。
高校実践報告:「絵本を通しての、児童・生徒・学生・大人への心理療法の効果」
山西敏博さん(国立小山工業高等専門学校准教授)
1. はじめに
- レポーターから:小学校4年生や中学1年生からでもできる実践編です^^。
そして、大人の方までも幅広くお伝えすることができます。子供にとっては情操教育の一環となる、絵本の「読み聞かせ」。それと英語教育、大脳生理学、そして認知心理学とを融合させた、心があったかくなって癒される実践、それが【絵本セラピー】です。「絵本」を通じて英語も心理学も、両方モノにしちゃいましょう^0^ 皆さま、お誘いあわせの上、お越しくださいませ^^。【絵本セラピスト・「7つの習慣J」Facilitator・教育コーチング】有資格者の山西敏博がお話をさせて頂きます。 - 自己紹介:現在大学院で社会言語学専攻、27年間アメリカ、ドイツでの学びを含め各地を歩いて実践、絵本セラピスト。
2. 絵本セラピー
- 「絵本セラピー」とは:表情豊かな絵、簡単な文章で構成されている絵本は、小学生から大人まで抵抗なく受け入れられるもの。絵本には人生で3回出会うことができる。①子どもとして聞く立場にある出会い、感情移入で登場人物をみる②親として子どもに読み聞かせる出会い、行間を知識や経験で補って表現豊かに読む③そして自分のために絵本を見つめる出会い、自分を投射して読む
- 年間3万人もの自殺者がいる日本社会。絵本を学生・大人の教育に利用し、元気アップを手伝いたい。自称「笑華尊塾」(人生には笑いと華やかさと他人や自分を尊ぶ気持ちがあってほしい)塾長。しあわせの連鎖ができるとよい。
- 絵本セラピーの話から普段取り組んでいる英語の授業を報告されました。
3. 実践の紹介
- 『りんごをたべたいねずみくん』(作:ながえよしを 絵:上野紀子)を使って
- この絵本のあらすじ:上にあるリンゴをたべたいと見ていた。鳥が来てリンゴをつついた。ねずみは飛ぼうとしたができなかった。サルが来て、木に登りリンゴをたべた。ねずみは木登りに挑戦したができなかった。ゾウがきて長い鼻でリンゴをとった。ねずみは鼻を長くしようとしたができなかった。キリンがきて長い首でリンゴをとった。ねずみは首を伸ばそうとしたができなかった。カンガルーがきてジャンプしてリンゴをとった。ねずみはジャンプしたがリンゴに届かなかった。サイがきて強い力で木をゆすりリンゴをとった。ねずみは木に突進したがリンゴは落ちてこなかった。アシカがきたときねずみが言った。「君は飛んだり、木に登ったり、木をゆすったりしてリンゴとることができるかい?」 アシカはこう答えた。「いいやそのどれもできないよ。でも君を木の上に登らせることはできるよ。」
- この絵本を英語でこどもに読み聞かせると、子どもはそれぞれの動物の行動を容易に理解できる。また個性の大切さやチームワークで不可能が可能になることなどを学ぶことができるかもしれない。
- 言葉を言い換えて元気にする等
- 「疲れた」と人が言うと、周りの人も疲れた気分が蔓延する。だから「疲れた」という代わりに「充実している」と言い換えて言うことにしている。(うつ病 → 宇宙病)(トラウマ →シマウマ)(アレルギー → エネルギー)
- 「天国言葉」の復唱をしよう:「ありがとう」「感謝します」「ついてる、ついてる!」「ごめんなさい」
- あなたが言われたいほめ言葉(元気になるほめ言葉)
- ペアワークで以下のようなほめ言葉を考えて相手に言う。相手のいいところを探し。言葉にする。You are always smiling. / You walk so fast. / You come to school so early every day.
- あなたはできる Yes, You Can! 「みんかちがって、みんないい」 人はそれぞれ個性があるからいい。
- I can't remember the names of people ← But you can keep promises..
- I can't swim well. ← But you can run so far.
- 英字新聞、日本の新聞を使って、様々な社会問題も和訳だけでなく発表までさせて幅広い学習を
- 歴史、国際問題、科学、芸能、政治、スポーツなど多様な記事を紹介して、発表することで、学生が自分から調べる習慣ができるようにしたいとのこと。高専ならではのプレゼンテーションがパワーポイントを使って行われていたり、互いに質問して内容理解を深める授業にも取り組んでいる。
4. まとめ
- レポーターの感想:皆様から様々なご助言を受けることができて大変有意義でした。「英語教育」は「英語を教える」のみならず、「英語で」社会・世界を教えることが大切だという信念を持っています。ESP(English for Specific Purposes)やEGP(English for General Purposes)が叫ばれている昨今なので、常に「訳読」といった「Bottom-up形式」の理解のさせ方だけではなく、「和訳先渡し」を始めとして"All English"による「英文の別表現」での解釈のさせ方という「Top-down形式」の指導の仕方という事も、今後とも充実させて学んでいきたいと思っております。今日は皆様、ご助言をありがとうございました。
- 山西さんが、人に対してプラスになる言葉を考え、作り出す努力をしている様子がうかがえた。励ましたいという思いやそれを口にすることで生徒の授業を活性化させたいとの思いが伝わるレポートでした。このレポートを聞きながら、自分もある高校で「ここで何をしているんだ?」よりも「どうしたの、大丈夫か(何かあった)?」の方が耳に優しいことを学んだ経験を思い出しました。
<参加者の感想>
- ありがとうございました。ねずみのお話は簡単な英語を使っての語りは生徒達にも実際、体験できそうだなと思いました。また、絵本でのお話が伺えることを楽しみにしています。
- 英語の授業だけでなく、さまざまな事に使えるものを発表して下さいました。特にペアで相手にI can't・・・ Yes, but you can・・・で表現する活動はとてもおもしろかったし、役に立つのではないかと思った。根底に相手を尊重する精神があるのが素晴らしい。
- う~む。昔からこうしたセミナー(?)は好きではなくて、今でも好きではない。ただ、発表の中でふれていた「『申し訳ありません』『ごめんなさい』『すみません』の中では『ごめんなさい』が謝罪の言葉では一番だ」というのは本当だ。自分自身の経験からそう言える。
●日時: |
2014年6月14日(土)午後3:30~7:00 2:30 ~ 会員総会 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 高校レポート [担当:萩原] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 中学レポート [担当:日比] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
大倉山記念館 第1集会室 (Tel. 045-544-1881) (東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分 改札口を右に出て右折、急坂上る) より大きな地図で 大倉山記念館までのルート を表示
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2000円)で割引適用] |
●高校実践報告: | 「【絵本セラピー】にみる「絵本」から学ぶ、児童・生徒・学生・
大人への【癒しの効果】ー 認知心理学と英語教育との融合からの実践 ―」 山西敏博さん(国立小山工業高等専門学校准教授)
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●中学実践報告: |
「ICT機器活用の可能性と今後の課題」 直井 孝太郎さん(大和市立下福田中学校)
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●お問い合わせ: | 萩原一郎 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
(2014年6月4日掲載/7月2日更新)