■ 神奈川新英研5月例会~春の一日研修会
2014年5月
近況報告
- ESD的なテーマの掘り下げ。IB(国際バカロレア)のLearners' Profile。
- I Still Haven't Found What I'm Looking for by U2で現在完了のイメージをつかむ。
講演:「英文法にリアリティを与えるエクササイズ-Grammar in Text」
田中 茂範さん(慶応義塾大学環境情報学部教授)
『表現英文法』(コスモピア 2013年)の著者であられる田中先生は、映画、歌、出版物、政治家のことばなど、authenticな英文やspeechの英語を素材に、'エクササイズ論'の観点から文法学習にリアリティを与えようという話をされました。
1.田中先生
- 講演者から:英語力の中核になるのは文法力です。しかし、多くの生徒が文法がわからない、使えないと感じているのも事実です。わかるから使えると橋渡しをするためには、文法のエクササイズが鍵となります。生徒が文法学習にリアリティを感じることができるかどうかがポイントです。理論と実践の両面からよりよい文法学習(指導)について考えていきます。
2.中学入門期の英語の導入
- 智学館中等教育学校の中学1年生に授業している。同校のHPによれば、「文法や語彙を機械的に覚えるのではなく、生徒たちが『分かる・使える』英語を身につけることを目的に制作されたオリジナル教材も使用」とありますが、まさに田中氏が作ったPowerPointの教材です。その一部を見せることから講演が始まりました。
3.1回目の授業―目的
- 英語の音の感覚をつかもう
- 感情をこめて表現できるようにしよう
- 音と意味のつながりをつけよう
- 1については <ストレスは母音に>
McDonald's San Francisco Los Angeles カタカナ読みとの比較を - 2については<子音(C)+母音(V)の組み合わせ>
apple アップル / スプラッシュ- CVCVCVCV splash – CCCVC - 3についてはまずthud click / flicker glare / blare rumble / chat chirp / crackle rustle / snore sneeze の12単語を2択で日本語訳を選ばせ、CVのつながりの意識化とともに、母音、主な子音の発音の仕方、オノマトピアのおもしろさと3段階で発音させて興味を惹きつけ、一気に12単語を各自発音してみる。さらに<音と身振りから意味を考えよう>ということでGive me a break.(いい加減にしろよ)など2語から4語の16個のフレーズ文の練習を段階を踏んで教え、意味をチェックし、最後は絵や写真を見て、合うフレーズ文を再現する。
4.2回目の授業
- 前置詞 in(=空間内), on(=接触), at(=~のところ) のコアな意味を、絵を駆使して示し、つかませる。
5.3回目の授業
- 絵を示し、日本語を介さないで、What's that? It's a mushroom. Don't touch it. It's poisonous. (毒キノコの絵) の一連の表現を理解させ、言えるようにし、下線部だけ替えて、さまざまなものの説明を次々言えるようにする。
6.田中先生の主張
- 第2言語学習として日本では練習問題を通して英語を学び、英語力をつけようとしてきたが、「穴埋め」「置き換え」「並べ替え」「和文英訳」「英文和訳」「音読」で達成されるのか、運動選手のエクササイズにはちゃんとした理論がある。だが外国語のエクササイズには理論がない。
- 文法にリアリティーを!
- 文法練習問題に狙いを!
- ●エクササイズ論
- Objectives(Why?)- 気づき、関連化、理解、産出、自動化
- Materials(What)- Authenticity, Meaningfulness, Personalization
- Media(How?) - 声、文字、音楽、絵、動作、メディアミックスの考え方
7.文法のリアリティーを与えるLanguage in Textの視点
- テクストの中に文法を見る
- 文法がわかることがテクスト理解につながる
- 文法の実際の使い方がわかる
- そうしたテクストやマテリアルとして挙げられたものの一例
- ○would[よく~したものでした]等に注目して→絵本The Giving Tree をグループで翻訳させる。
- ○前置詞の英語直観を身につけさせる→Obama Speeches, U.S. National Anthem, Imagine, The Grapes of Wrathなどから
- ○テンス、アスペクトに注目して→サイモン&ガーファンクルWednesday Morning 3 AM she lies here, I watch…, I'll be leaving, tonight will be…
- ○テクストを構成する助動詞を見る→ Obama Tokyo Speechに見る助動詞の頻度will 50 / can 30 / must 16 / could 4 etc. 語り手の態度を見る上で最高。
オバマ大統領の決意の表れ、態度表明をしている
「前置詞やテンスに関して、文法書・参考書はあまり切れ味がよくない」 - ○仮定法の表現を学ぶwould, could→フランシス・コッポラOutsiders
8.文法力を身につける練習問題
- 「日本人は単語知識、文法知識があると言われるが、単語力、文法力がない」
- 「気づき、理解は大事だが、エクササイズがない」→
- ○文法問題演習の形式的制約を拡げることが大切
- ○問題形式の可能性を意識的に探る
- ○Time とTense とAspectのコアの知識を身につけさせることが必要
present / past / simple / progressive / perfect
9.質疑応答
- Q:分詞構文をどう教えるか
A:「分詞」の意味を。知っていれば表現が豊かになる。動的な流れ。
①When I was shopping in a store,
②When shopping in a store,
③Shopping in a store, 意味の違い
Authenticな教材から持ってくる - Q:英語だけでの説明どこまで
A:Only Englishだったらおもしろくない。翻訳をはずした授業のやり方を工夫して。しかしトライアルでオルタナティヴないい方法ではある。 - Q:3P(Presentation, Practice, Production)の教え方が主流な中、先生の位置づけは?
A:本当に教師が魅力的なら日本語があろうと、英語だけでも生徒がついてくる。authentic, meaningful, versatileな教材が。「生徒に活動させる」を旗印にしているような教授法の潮流があるが、かなり教師主導できちんと教えるべきことを教え、モデルを見せてから生徒の活動をやらせるべきだ。 (ただ生徒が動けばいいのではないという、教師の責任というものを教えられ、私にはちょっと耳の痛いお話でした。)
10.
- 文法の大切さを改めて感じました。
- 本物の素材から英語の語彙(単語)・文法力を身につける良さをあらためて気づかされました。
- とても田中先生が気さくで楽しい方であると知れて本当に楽しかったです。先生のご本「表現英文法」を買わせていただきます。
- 大変充実した内容で勉強になりました。文法を使いこなすためにはネイティブ的な感覚が必要だと改めて感じました。この感覚を教えてくださり、とてもうれしく思いました。子どもたちにも納得できる説明ができそうです。ありがとうございます!!田中先生が中学・高校でも教壇に立たれていらっしゃるのはとても身近に感じました。
- この春、先生の『表現英文法』とたたかいまして、まだ頭の中をうずまいていて、クラスに落とし込むところまでいっていません。生教材をどう選び、どう生かすか、課題山積ですが…とても興味深いお話、ほんとうにありがとうございました。
- さまざまな手法を教えていただいた点について、職場で落とし込んで使えるものを教えていただきました。
- 文脈の中で文法を教えるというのは大切なことだということがわかりました。画像を見せながら視覚的に理解させることも非常に効果的だと思いました。ぜひ真似してみたいです。
- 豊富な例で文法学習を充実させる工夫を紹介いただき大いに参考になりました。Presentation-Practice-Productionの流れ、必要なところでの母語の使用に関しても、理論的な根拠が明確になるお話だったと思います。
- authentic materials(本日ご紹介いただいたspeechや歌など)は確かに惹きつける力があると思います。そういうものを使えるよう、日頃からこちらがアンテナを立てて、よいものを選ぶことができる必要があると思いました。ただ高校の場合は「教科書」があるので、それに加えてauthentic materialsも利用するという形になると思います。日本人は文法力があるのでなく、文法知識があるだけ。そうだと思います。では知識をこえて「使える」ようになるためにはどうすればいいのか。紙面の練習問題をたくさんやればできるようになるのか、それともリアルな場面で使う必要があるのか(EFLの環境でどうやる)など、もっと先生にお話をうかがいたいと思いました。
- ありがとうございました。リアリティをもった授業をしていきたいです!(準備する時間がほしいです~!!)
- 内容のある文をとりあげることが大事ということを学び、歌や映画を使うことの有効性がわかりました。ただ、文法については本当に型どおりしか知らなかったので、昔、Grammarの授業でやった事は生徒にとってはつまらなかっただろうと、今思っている。
- いろいろ考える材料をいただきました。今後も導いていただきたいです。先生のご著書のうち、「コミュニティ」とか「対話」とかグローバルな視点で書かれた章もおもしろかったです。「言語とコミュニティ」という点からもお話しください。言語教師には欠かせない視点だと思いました。
- 大学の先生という観点から文法のことをお伺いできて良かったです。"生きた英語"から文法を学ぶということは、ときとして難しいですが、それを切り口に生徒にたくさんの英語にふれてもらえたらと思います。
- Authenticな英文に普段あまり触れていなかったが、今日、引用して頂いた部分だけでも感動した。たった一文に込められた背景のイメージや物語が浮かんでくる。各文法の一覧表→私も学校でもらっていたら、生きた英語を身につけることができたと思う。
- 自分自身が前置詞は苦手で詳しく教えることを避けていました。文法は感覚なのでいかに納得させるか難しいと思いますが、前置詞の使用はとても多いのでもっとちゃんと向き合おうと思いました。
- 初めて講演を聴きました。聴くことができて良かったです。ありがとうございました。
- 文法学習にリアリティーを与えるための様々なノウハウを実例を示して紹介していただき、充実したひとときでした。ねらいのあるエクササイズを3つの基準を意識して行うことや、教師自身が一つ一つの文法事項を本質的に理解してわかりやすく提示することが大切だとわかりました。
- 学ぶべきところが多くありました。
- 現実に即した題材を用いて教えたいと思います(生徒の理解を得られるように)。
- 指導者である私たちが全体像を的確に理解し、文法項目を自分たちのものとして気づかせながら提示し、創作させることが大切なのだと感じました。これからの教訓にしたいと思います。
- 英語表現ⅠやⅡをどう教えたら良いか(例えば、過去形と現在完了形の違いの理解のさせ方など)。英語表現Ⅰの教科書の大きな文法項目にしぼって、「文法学習にリアリティーを与える」実践の仕方をもっと聴きたかったです。
- 日本語の翻訳が言葉の気づきになり、本人の総合的な言語能力を高めること、英文法の本質を理解するには日本語で教える方が良いという新鮮かつ、説得力のあるお話でした。
高校実践報告:「英語で進める授業の可能性」
亀井友子(ともこ)さん(橘学苑高校)
1.はじめに
- レポーターから:高1検定教科書を使い、基本的に英語で進める授業のデモンストレーションを行いたいと思います。英語で進める時、どのようにして生徒の理解をはかるか、どんなことが行えて、どんな問題点があるのか、皆さんとアイディアを交換しながら考える機会にしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
- 全体のまとめ:亀井さんが4月当初に考えた事の中に「今年こそ英語メインで授業を進めよう」というのが第一の決意でした。なぜ英語かというと
①生徒が英語を聞く機会が増える。
②教師の発話が、生徒の英語での発話の土台になる。
③日本語を介さず英語をそのまま理解しようとする姿勢を作る。
この3点がその主な動機です。次にその方法としてどんなものを入れたかというと、
①画像、映像が理解の手助けになるので、それを用いる、
②ワークシートは生徒の理解を図るように工夫する、
です。授業の流れは次の様です。
①PP(Power Point)などを利用して内容を導入する
②内容理解のために2択のQAなどをする
③音読(スラッシュ・リーディング)
④ペア活動(音読チェック)
⑤ピクチャーカードを使いながら話を再現する
⑥まとめの作文です。
以上のことを亀井先生は参加者を生徒に見立ててワークショップをおこないました。内容は異文化理解の例を取り上げたものでしたが、スムーズで、生徒にとっても興味深い授業であるように思われました。
2. 生徒の状況
① 4月当初に考えたこと
- 今年度こそ、英語メインで授業を進めよう。
- 電子黒板を使ったりして、新しいことに挑戦したい。 ⇒プロジェクターやテレビが教室にない
- CLILの考え・手法を実際の授業で応用してみたい。
② なぜ英語か? (逆になぜ英語で進めないのか?)
- 生徒が英語を聞く機会が増える。また教師の発話が、生徒たちが英語を話す時の(reproductionや自分の考えを述べるときの)土台になる。
- 英語を英語のまま、日本語を介さずに理解しようとする姿勢を作る。
- 日本語を介さないために、早く英文を飲みこめるようになるだろうか。
③ 英語で進めるために
- 今回はPPを使ったが、このように画像・映像は理解の大きな手助けになる。ただそのための準備が必要となる。(うまい時間の使い方!)
- ワークシートを工夫する。どのように生徒の理解をはかるのか。
- 教室内の雰囲気作り
④ 英語で進める授業の流れ
- 1) PPなどを利用して新しい内容を導入 Oral Introduction
- 2) 生徒が本文をどれくらい理解しているか知る(2択・QA・Wrong sentences等)Comprehension
- 3) 音読 Slash Reading
- 4) ペアによる活動(音読チェック・Quick Check) Pair Activity
- 5) ピクチャーカードを使いながらお話を再現 Reproduction
- 6) まとめの作文など Writing
⑤ まとめ
- 私たち自身がまず、英語でコミュニケーションすることの楽しさを味わい、それを発信しよう。
3.教材
- Lesson1 Meet Different Cultures First Reading
In Japan we color the sun ( yellow / red ), but children in Europe color it ( yellow / red ). The sound of a dog's bark is wan-wan in Japanese, but it's ( bow-wow / ouaf-ouaf ) in French and ( bow-wow / mung-mung ) in English. Like this people express things ( in the same ways / differently ) in each language. Desert peoples have ( favorable / negative ) image of the sun and ( favorable / negative ) image of the moon. Once a ( Chinese / Japanese ) company tried to sell its products in an Arab country. They ( didn't sell well / sold well ) because of the picture of the sun on the labels. When a famous hamburger restaurant chain opened some stores in ( Pakistan / India ), they had to change its menu. People there are ( Buddhists / Hindu ) and they don't eat ( beef / pork ). Now ( beef hamburgers and chicken hamburgers / chicken hamburgers and vegetarian hamburgers ) are popular there. - Lesson 1 Meet Different Cultures!
Part 1(教科書pp.14-15)
意味のまとまりに注意して、次の英文を読みなさい。Q1. Children in Europe 問1. ヨーロッパの子どもたちは usually color the sun… たいてい太陽を…でぬる You'll probably think, あなた方はおそらく考えるだろう "The answer is red or orange." 「答えは赤かオレンジだ」と But children in other countries しかしほかの国の子どもたちは may choose a different color. 違う色を選ぶかもしれない In Europe, ヨーロッパでは the sun is usually colored yellow. 太陽はふつう黄色でぬられる Isn't that the color for the moon それは月の色ではないのか in Japan? 日本では Q2. What is the sound of a dog's bark? 問2. 犬の鳴き声はどのような音なのか Most of you will answer, あなた方のほとんどは答えるだろう "wan-wan." 「ワンワン」と But if you ask speakers of other languages, けれどももしあなた方がほかの言葉の話し手に尋ねたら the answer will be different. その答えは違ってくるだろう In English, 英語では it is bow-wow, それはバウワウで in French ouaf-ouaf, フランス語ではワフワフ and in Korean mung-mung. そして韓国語ではマンマンである Even if people see the same thing 人びとはたとえ同じものを見たり or hear the same sound, 同じ音を聞いたとしても they often express it 彼らはそれをよく表現する in different ways 違ったやり方で from language to language. 言語によって Interesting, おもしろい isn't it? ですね
Part 2(教科書pp.16-17)Q3. Desert peoples usually have a favorable image of … 問3. 砂漠の人びとはふつう,…によいイメージを持っている Most of you あなた方のほとんどは have a favorable image よいイメージを持っている of the sun. 太陽について But many desert peoples しかし砂漠の人びとの多くは have a negative image of it. それについてよくないイメージを持っている Strong sunlight can be dangerous. 強い日差しは危険となる可能性がある On the other hand, 一方 they have a favorable image 彼らはよいイメージを持っている of the moon. 月に Once かつて a Japanese food company ある日本の食品会社が tried to sell its products 自社製品を販売しようとした in an Arab country, アラブの国で but they didn't sell well. しかしそれらはあまり売れなかった Why? なぜか The labels had ラベルに載っていたからだ a picture of the sun. 太陽の絵が Q4. Which hamburgers aren't popular 問4. 人気のないのはどのハンバーガーなのか in India? インドで A famous hamburger restaurant chain ある有名なハンバーガーレストランチェーンが wanted to open some stores 店を開こうとした in India. インドに But it had a problem. しかし1つ問題があった Most people there 現地のほとんどの人びとは are Hindu. ヒンズー教徒である They don't eat beef. 彼らは牛肉を食べない The chain changed its menu. そのチェーンはメニューを変えた It added chicken hamburgers それは鶏肉のハンバーガーを加えた and vegetarian hamburgers. それと野菜ばかりのハンバーガー These hamburgers are very popular now. これらのハンバーガーは今ではとても人気がある In a different culture, 異なる文化の中にいると you'll see many new things. あなた方は多くの新しいことを目にするだろう At first, 最初は some may seem strange to you. それらのうちいくつかはあなた方にとって奇妙に見えるかもしれない But if you open your mind, しかしもしあなた方が心を開けば you'll broaden your horizons. あなた方は視野を広げるだろう Now さあ let's begin our world trek! 私たちの世界旅行を始めよう
4.参加者の感想
- 文法チェックプリントはとても参考になりました。CROWNⅡをやっていますが、どうしても日本語での説明が多くなってしまいます。なんとかリプロダクションにもっていく活動として音読は色々やっていますが、時間がないです。ですので、上記の取り組みをやってみようと思います。
- 英語で全て進める授業、初めてでしたが楽しかったです。4技能が全て統合されている授業でとても参考になりました(導入の引きつけ方も特に)。ただ、どう文法を定着させるのかが気になりました。宿題の文法問題集とのリンクも大切なのかなと思います。
- 学年団の教員でシラバスを統一した方が良いとの意見もあったが、一方教員の多様性をなくしてはいけないと思う。ある授業方法になじむ子もいれば、なじまない子もいる。なじまない子が3年間同じ授業を受けて力がつくのか?また、「1年くらいなじまない授業があっても、自力で取り戻せ」と言えば良いと思う。なので、多様性が必要。
- 授業を英語で進めるという実践に驚いた。やり方次第で実現可能であることを知った。それと同時に教員側の英語力も高めなければ、いつまで経っても実現不可能であると思った。生徒と一緒に自分も英語を学習していく必要性を痛感した。
- 同じ校種なので参考になりました。モチベーションアップになりました。ありがとうございました。
- 久しぶりの生徒役、楽しみました。テンポが良く、にこやかで好ましいと思いました。生徒役にとって負荷のある素材でワークショップしてみると、もっと実感・体感できるのかも知れないですね。
- わかりやすい英語で、飽きさせない程度の時間で手際よくレッスン全体の概要を紹介したり、Quick Checkシートでペアによって文法確認させたり、視覚教材で英語の難しさをカバーする点がとても参考になりました。
- 英語でコミュニケーションをとろうとする雰囲気作り、態度を身につけるには良い授業でした。授業中、緊張感をもって臨むことができるし、テンポの良い授業で楽しかったです。異文化理解とコミュニケーション力を培えると思いました。
- Oral Introductionからreproductionまでの一連の流れを自分が生徒役になって体験でき、わかりやすかったです。わかりやすい英語での説明や支持で、わずか40分間でLesson全体が良く理解できました。
- 先生が楽しんで授業をされている雰囲気が良かった。英語で授業を進めることが目標とならない様に生徒の実態を見失わないことが大切だと感じました。
- 英語でどのように授業をすすめていくのか、豊富なアイディアをいただけて、よかったです。
- 亀井先生の明るい人柄が授業にあらわれていて、とても良かったです。先生のプリント等とても参考になりました。
- ありがとうございました。たいへん勉強になりました。授業がいつも時間数との闘いで(中間テストまで何時間しかない!!とか)その中でどう内容のある、少しでも生徒に達成感を持ってもらうにはどうしたらいいのか悩める日々なので。亀井先生の授業の流れ、提出物とても参考になりました。やはり、考えて、考えて、実行に移し続けることが大切ですね。
- テンポ、スピード感のあるoral introductionが次の2択のサマリー文へつながれ、E→Jの音読活動へと進み、その中でbuzz reading→個人のJ→Eのレシテーション後、ペアによるJ→Eの活動、そして絵を見せながらのreproductionここまでが5,6回で行われているということでした。
- 生徒が聞き話し書き読む英語の授業を追求する試みは、とても良いと思います。ただ、英語だけ(Only English)にこだわる必要はなく、柔軟に日本語、英語を使い分けることが大事だと思います。「ちゃんぽん」を否定的にとらえる発言もどなたからかありましたが、場面の目的によって生徒の力がつくように使い分けることがベストではないでしょうか。
- 映像と英語のスピーチを使って、生徒たちに「自分も英語を使って表現したい」という気持ちを起こさせている。
- ブラボー! 亀井さん、すばらしい! 10:30からの参加で、全貌を逃してしまいました。
中学実践報告:「こころとからだが動き出す授業―教材・自己表現・協同学習―」
柏村みね子さん(東京・文京区立音羽中学校)
1.はじめに
- レポーターから:生徒も教師も学ぶことが楽しくなり、新しい発見があり、自ら学びたくなるような授業をつくりだしたい。楽しくて、ちょっと内容が深い教材、自分をひらき、他者を知る自己表現活動、そして共に学びあい、高めあう協同学習を追求して、いつも、転びながら、くるっとまわって、また立ち上がる、回転レシーブのような 日々をお話したいと思います。私の実践を材料に、皆さんの実践も聞かせていただく、交流ができればと思います。
- 〔My Learning History as a Teacher 学びの履歴書〕:
初任から現在に至るまでの経緯- ①授業不成立ラインをさまよう 闘う もがく
1時間の授業をどうしていくのか やり方がころころ変わる - ②見通し 何をめざすのかが大切
- ③教室から飛び出す アジア・アフリカとの交流
- ④国際交流 伝えたい・聞きたい・・・内容がないと・・・→国際理解教育へ
- ⑤テーマ 環境・人権・平和
生き方 地域 学び方 ワークショップ 自主的な学び方 - ⑥NGO活動、ワークショップなどに参加
エチオピア・カナダ・ネパール・カナダ - ⑦大学院へ:葛藤解決教育・「静かな力」の行動
- ⑧少人数習熟度との闘い→協同学習 同僚との学び合い
- ⑨特別支援を意識した授業 中1の抱える困難
- ①授業不成立ラインをさまよう 闘う もがく
2. 生徒の状況
- 中学1年生は変わった?! 授業の困難さを分析する
- 中1ギャップと特別支援教育
「最後まで話しているのは誰ですか?」・・・「~くんで~す!」
「授業中に何をしているの?」・・・「~していま~す!」
先生は注意を促しているのに、そのまま「文字通り」答える生徒。 - 小から中への移行で生徒が何に混乱するか
→見えない規範(=望まれる行動)の「見える化」 - ボーダレスの教室で
★小学校・中学校での実践例:厳格な授業規律をキープする
(宿題・遅刻・挙手⇒評価へ)
⇒生徒の変化 プラスとマイナスと
希望への突破口を探る 特別支援教育の実践を参考に - シンプルで明確な枠組み→学習の作法を教える。
- Activeな活動から、静かな活動へ。
- 良い肯定的行動を評価する。悪い行動は無視。
- 教師の話は少なく。すぐ本題に入る。
- 1人ひとりの生徒とつながる。
- 小学校外国語活動との連続性
- 「英語で英語の授業」の限界⇒「英語は大嫌いだった」面談で。
- 格差の拡大<意欲、到達度、知識、好き嫌い・・・>
- 英語の時間で仲間とつながる⇒Happy Communication Time
- やる気をつなげるポイント⇒
「音声を使い続ける」「『話す・書く』でチャレンジを仕掛ける」
「どんどん先へ」→「広げて、深めて」への転換
- 中1ギャップと特別支援教育
- 1年生との春・夏・秋・冬!
- 中学1年生の学習目標とは?
- 1年生の目標は・・・
「学びの作法を身につける」+「学ぶことが好きになる」
A:学習の準備ができる B:授業の受け方からまず聴く力を~
C:宿題、課題、提出物のしくみは。。。 D:家庭学習のポイント
E:定期テストのbefore after と5項目に分け、かなり具体的にわかりやすく提示し、家庭での協力を求める内容も含めている。 - 2年生の目標は・・・
「課題をやり遂げる力」「良い習慣を意識的に身につける「可能性を広げる」
- 1年生の自己表現
(1)一行自己表現 Snoopyの例に倣って "Happiness is…"
(2)行事のあとで、季節に応じて 五行詩(Diamond Poem) 自分達のクラスを例に
(3)スピーチの実践 My Favorite Person- ①Who is he/she? Quiz ALTとの授業。聞き取り、グループでクイズづくり
- ②先生のMy Favorite Person サッカーの澤さんの紹介
Useful Expressionを学ぶ - ③日本語か英語で書いてみる
友だちチェック、Teacher's Check ④清書用紙を発表までに提出
リハーサルを1週間 ⑤仲間と応答しながら、スピーチ発表会
- マララさんのスピーチ―同世代の世界の仲間の声を聴く― (1)なぜ、マララさん? 2012年10月 ・ Who is she/he? で誰を取り上げるか。 ・ 学校の帰りに銃撃を受ける。「子どもの権利」が守られていない現状。 ・ 重体のマララさんを見守る、励ます。病院へのメール、お見舞いのカード。 ・ 新聞記事で世界の反響を伝える。We are Malala. Where am I? ・ 2013年2月 マララさん回復。イギリスで学校復帰。テスト問題に。 ・ 2013年7月 マララさん、誕生日に国連でスピーチ。 ・ 9月~10月 全クラスでマララさんの17分間のスピーチを見せる。 ・ 自己表現 One ~ change the world. ・ 10月下旬 学習発表会で、マララさんの紹介と意見を5人の1年生が英語で発表。
- 韓国の中学生との交流 (1)2013年7月 自己紹介文を韓国の中学生に書いて届けてもらった。 (2)11月下旬 それぞれの名前あてでお返事が届く。 みんなで読んで返事のクリスマスカードを書いて送った。 (3)2月下旬 新年のカードが届く。「読みたい!読みたい!」と待ちきれず。 (4)3月上旬 展示発表会で韓国の中学校からの手紙と訳を紹介 (5)中には、Dokto is mine. と I want to be a history teacher. それに対しては Let's share the island.
- 自立的な学び手を育てる! ノート指導、テストのbefore after (1)家庭学習は、やっぱり見てあげること。 ①カエル・stampで量と質を評価。 ②物語、マンガ、歌、まとめ、自分の世界で広げる。 ③「マイ・ノート」をカスタマイズ! (2)テストのbefore after ①30項目くらいの「チェックしま表」でテストの勉強の仕方を身につける。 ②テストに遊びと自己表現を。リスニングテスト、オリジナル長文、自己表現 ③「テスト返しの歌」(負けないこと、投げ出さないこと・・・と替え歌で)と「復習の鬼」ワークシート 解説は少なく、復習中心にする
- それでも授業が成り立たないときは、、、。
- ・ 「英語をなぜ学ぶのか」→中学1年生に語る「外国語教育の四目的」
- ・ 世界の人々と交流・協力し、平和な地球をつくる
- ・ 考える力、感じる力を養う
- ・ 日本語やことばへの理解を深める
- ・ 「聞く・読む・話す・書く」力を身につける
- 私はいろいろな人とそれぞれの考えを交換し合い、わかち合うためだと思います。自分が思っていることをいざ世界へ飛ばすとなったとき、自分の国の言葉しか知らなければ、他の意見について考えるどころか、その考えを理解することすらできません。そうなるとそれぞれが受け入れないまま主張し合い、小さな争いが起こり、それがやがて戦争などの大きな穴をつくってしまうと思います。だから「外国語を学ぶ」ということは「交流の範囲を広げる」ということになり、より多くの考えがとびかって、さまざまな人が共有できるようになると考えます。その力は。世界だけでなく、日本国内、教室内でも、言葉や考えを大切にしようというところに生きてきて、よい良い人間関係が作れるはずです。(中1の教科通信 GLOBAL VILLAGE2014から)
- 今年は、中学2年生の最初に語る「外国語を学ぶ4つの目的」
★トレーニング式=「わかる・できる・身につける」のめざすもの
↓
成果で証明。資格で納得させる(利益、効果で説得する)でも、それだけでは・・・
★経験することが目的のカリキュラム⇒意欲、意義+自立的な学習で
↓
学習の主人公になる、そして自分のことばとして英語を使える。
4.参加者の感想
- 単に英語の知識を教えるだけではなく、マララさんのスピーチや韓国との留学生との交流を通して、生徒に英語への興味を持たせ、また世界の問題へ意識を向けさせるという非常に発展的な授業に驚きました。今、通信大学で教職をとっていますが、そのような授業は「夢のまた夢」だと思っていたので…。ですが、先生の実践は他教科との連携や人間性を育てることにつながりますし、大切なことだと。また、中1ギャップでの授業運営の葛藤の部分の一端をお伺いできて良かったです。過去の先生が考えられた授業の工夫も見てみたいと思いました。また、「なぜ外国語を学ぶのか」生徒に考えさせ、意見をみんなに紹介するという作業は意味のあることだと感じました。
- ちょうど「なんで英語やるの?」という問いを子どもに問われた時期でしたので救われました。スピーチで「みんなとの一体感」を感じられる方法があるとは目からうろこ。
- 過去の経験(失敗も含めて)から改善点や改善策を見出して"今"の形になったことが良く分かった。私は現在、失敗するばかりでまだ改善策を見つけることができてはいないので柏村先生を見習って、もっと自分なりに工夫していきたいと思った。
- また、色々なことを試していく中で生徒がワクワクする瞬間を見逃さないようにしようと思った。
- 「英語とは、授業とは何か?」を柏村先生の発表を通して考えることができました。ありがとうございました。
- 経験を重視して英語を学ぶ意欲を高め、最終目標を意識した学びの主人公にすることをめざして、様々な方法で生徒を導くエネルギーやアイデアの豊かさに圧倒されました。中でも、テスト返しの歌や韓国の中学生の手紙はインパクトが強く、少なからずショックを受けました。
- 久しぶりに柏村先生のお話がうかがえて元気が出ました。ただ、こういうissueを扱うことに関していろいろな声があるのですね。日頃から複眼な話をしていればいいのに、英語以外の外国語をやっていないと難しいのかしらと考えさせられました。
- いろいろな経験を通し、困難を乗り越えた上での授業作りに取り組んでいる姿勢は学ぶものがありました。
- 実体験に基づく楽しいお話でした。授業者の人柄が子ども達の成長・教育に最も大切なことだと改めて考えさせられました。ありがとうございました。
- 精力的な発表に引きつけられました。Time flies. でした。
- 様々なアイディアと子どもたちの反応がよく伝わってきました。
- 柏村先生のアイディアと経験がみっちりつまった講演でとても参考になりました。英語がツールとしていき、その年代に何を学ばせたいか、これが教育というものを感じました。
- 圧倒されるほど興味深かったです。先生のbackgroundにもとてもひかれました。テキストとの時間のやりくりを教えていただきたかったです。ありがとうございました。
- お話がとてもお上手でした。ご自身の教師歴を最初にお話しになられる中で具体的に授業崩壊されたこととか生徒に投げかけることばが届かなかったこととか、とても有意義なお話でした。
- マララさんのスピーチを授業に取り入れてみたいなぁ、と考えていたので、参考になるアイディアをいただきました。ありがとうございました。
- 柏村さんの学習歴から、最近の授業実践まで「柏村ワールド」をはじめて聞きました。マララスピーチは深い内容を中1生の学習につなげられるよう工夫されていたのが印象的です。印象に残った授業がスピーチ・歌・文通というのは興味深いです。4目的の中学生向け解説も面白かったです。大学生にも考えさせて見ようかという気になりました。
- 先生が困難にあいながらも、とてもていねいに生徒たちに向き合ってきたことがよく分かりました。また、先生自身が海外交流活動をしてきたからこそ生徒たちにも様々な活動を紹介したり、手紙を書きあうなどのprojectができたのだと思います。やはり、こちらがどういう関心を持っているか、どういう勉強をしているかがとても大切だと改めて思いました。
- ありがとうございました。次回、またはいつか、テスト等も見せていただきたいです。週1回の研修日、公立中も欲しいですね~!!
- マララさんのスピーチ、韓国の生徒との交流、まさに「今をつかむ」教材で生徒の心をつかんでいると思いました。
- Oh,ザ感動、でありました。見習い、とり入れていきたいことばかりでした。自分史も語っていただき、それがよかったです。
●日時: |
2014年5月11日(日)9時半~17時 9:30 ~ 10:00 受付 10:00 ~ 11:30 高校レポート:亀井友子さん(橘学苑高校) 「英語で進める授業の可能性」 12:30 ~ 14:00 中学レポート:柏村みね子さん(文京区立音羽中) 「こころとからだが動き出す授業―教材・自己表現・協同学習―」 14:10 ~ 16:30 講演:田中茂範さん(慶應義塾大学環境情報学部教授) 「文法学習にリアリティを与える:エクササイズ論の観点から」 16:30 ~ 事務連絡・片づけ 17:15 ~ 懇親会 (当日参加可) |
●会場: |
★会場がいつもと異なりますのでご注意を! 横浜市技能文化会館 8階802研修室 (96名収容可能です! ふるってご参加ください。) 〒231-8575 横浜市中区万代町2丁目4番地7 TEL 045-681-6551 関内駅徒歩5分(関内駅南口の改札を出て右へ進んで下さい) より大きな地図で 横浜市技能文化会館 を表示
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●会場費: |
2,000円(支部会員1,000円、学生500円) 研修会当日入会者も割引適用 |
●講演: | 「文法学習にリアリティを与える:エクササイズ論の観点から」 田中茂範さん(慶應義塾大学教授)
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●高校実践報告: | 「英語で進める授業の可能性」 亀井友子(ともこ)さん(橘学苑高校)
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●中学実践報告: |
「こころとからだが 動き出す授業―教材・自己表現・協同学習―」 柏村みね子さん(文京区音羽中学校)
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●お問い合わせ: | 萩原一郎 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
(2014年4月28日掲載/6月29日更新)