■ 神奈川新英研3月例会

2012年3月
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2月3月4月5月6月7月9月10月11月12月
 
2012年3月10日 菊名地区センター 小会議室にて 参加者 20名
  1. 参加者交流
  2. 中学実践報告
  3. 高校実践報告
  4. 例会概要

近況,最近取り組んでいること

  • 熟語、単語の定着のための活動(単語カードの品詞色分けをしています)
  • task-basedの授業作り,効果的なFeed backの研究
  • ようやく新赴任先が決まりほっとしている。今度は本格的に「大学受験指導」に従事することになります。
  • 繰り返し学習

●授業でうまくいかず悩んでいることなど

  • 本文(教科書)の活用方法
  • F on FするためにはFeed backの技術(英語の知識に加えて)が重要だと考えています。
  • 特になし→教養深化と文法バランスが上手く図れるようになった。
  • 生徒の英語学習のモチベーションを高めること。
  • 文系なのに英語好きになれない苦手意識が強い。

●中学実践報告:「キング牧師"I Have a Dream"実践紹介~ビデオを使って~」

榎本美津子(横浜市立中和田中学校)
 「キング牧師とローザ・パークスさんのファンですから…」という榎本先生の言葉が映像資料の見事な構成に結実されていました。ローザさんがバスで逮捕されたときの気持ち(黒人席の先頭に座っていて白人に譲るように強要されたという不条理さ),キング牧師の訴えに賛同して立ち上がった人々の熱い思い(バスボイコットを継続するかどうか,教会で起立で同意を求めたところ,全員起立!)…,「知っているつもり」になっていた会報担当ですが,知らなかったことがたくさんあって,心動かされ,涙ぐんでしまいました。教員自身が心動かされずして,生徒には伝わらないでしょう。「まずは自分から」です。
 中学高校教科書・新英研の定番である「キング牧師の公民権運動」ですが,「ベトナム戦争」「差別の現状」まで視野に入れられるかどうかは教員の力量・問題意識にかかっていると思います。関口さんから「教員は原典にあたることが必要」というご指摘,若い先生方に引き継いでいきたいですね。今後もみなさんで情報を共有しあいましょう。

榎本先生

  • はじめに:今回は前任校・若葉台中での昨年度の実践。3クラス×3学年。
  • 榎本さんの思い(その1)教科書について:初めてNew Crown(三省堂)でアメリカ公民権運動の指導者マーチン・ルーサー・キングについて扱ったのは約30年前。そのときは2年生の冬休みの宿題にして感想を書かせた。ただ読ませただけでも、人種差別やM. L. Kingの努力が比較的わかりやすい教材だった。昔なら教科書を読ませれば,それが「基本」というふうに出来た。しかしながら,昨年度は,数回の改訂を経た教科書を読んで考えてしまった。教科書を読んだだけでは「equality, って? for his dreamって何だ?」というイメージが湧かない。生徒にイメージを湧かさせることが年々,難しくなっていると感じている。この英文で人種差別の何がわかるのだろう,M. L. Kingのスピーチの素晴らしさが伝わってこないのではないか,何としてもアメリカ人種差別の実態やM. L. Kingの足跡を理解してほしい,この教材をさらっと読むだけで終わらせたくない,付属の音声 CDはキング牧師本人の声ではない…, 「どうしようか…」と考えたのが,今回の映像とプリントを使った授業のきっかけ。 (キング牧師とローザ・パークスさんのファンである榎本先生が例会でおっしゃった「この英文が許せないのでやりました!」という一言に尽きます。)
  • 榎本さんの思い(その2)「キング牧師って,かわいそう…」で終わらせたくない:授業を経たときに「キング牧師さん,殺されちゃって,かわいそうだね」という生徒の声があった。「かわいそう」という一言で終わらせたくないという強い思いがある。
  • 「ノートまとめ」p. 53
    ノートまとめ

質疑応答+意見交換

  • :DVDなどは英語科で購入,それともご自分で?
    :自分で用意しました。キングとローザのファンなので買いました。ファンなので,この英文が許せなくて,(この実践を)やりました!
  • :授業の進度は?
    :1ページに2時間。授業プリント上部にLesson 6 ② p. 53のように記している。
  • :(プリントに掲載している)「ノートまとめ」は板書しますか?
    :年度初めに「ノートに和訳は書きますか?」と訊かれ,「どっちでもいいよ」と言うと生徒は悩む。プリントの「ノートまとめ」(付属のCD-ROMで作成するので簡単)を生徒はノートに書いている。
  • :中学のレベルで違うとは思うが,中1を教えていて「主語と動詞はこれだ」と教えている。中3だと和訳は出来ますか? 文法に重きを置きますか?
    :和訳は出来ませんね。背景知識は入れた方がよい。3次元的なものでイメージをふくらませる。文法はまた別にきちんとやる。
  • :文法用語はどのように指導するか,文法用語に言及するか否か?
    棚谷さん:品詞と語順をまず教える。品詞に色をつけて教えている。また,「主語+動詞+名詞+場所+時間」の頭文字「主+動+名+場+時(しゅ・どう・めい・ば・じ)」ということを話している。中1で日本語の品詞を国語で習っている。日本語には前置詞がなく,英語には形容動詞や助詞がない,なども考える必要がある。
    ★棚谷さんの「板書のシステム化」:
    名詞を黄色、動詞をブルー(水色)、助動詞を白、形容詞をピンク、副詞を紫色のように品詞別に色分けしてB5サイズのカードに書く。(2010.6の報告から抜粋)
    鶴指さん:教科書の本文だけでは何のことかわからない。それをイメージをつけたいと言うことで…,よく分かりました。ところで,New Crownは思想性があるが,Horizonにはそういったものが少ない。今はOne Worldを使われているそうですが…。
    榎本さん:年々,イメージをつかませるのが難しくなっている。来年度はColumbusですが,教科書をふくらませるのが難しい。このまま使えるという会話文も少ない。
    鶴指さん:HorizonにはMother's Lullabyで戦争を扱っているが,人種差別はない。工夫する先生は時間をつめて他の教材をする人もいるが。
    榎本さん:私は教科書に合わせている。One Worldには地雷で足を失った人の話とか,題材は良いのだが,教科書を暗記させることが出来ない。
  • 和田:公民権運動への生徒の反応は?
    榎本さん:水をかけているシーンについて,生徒は「人種差別のひどさが分かった」と学級日誌に書いていた。塾で内容の先取りをしていた生徒が「キングさん,殺されちゃって,かわいそう」と,さらっと言っていたのが気になった。今の生徒は道徳教育などでも「取りつくろう」とする。ウソを書いたりする。だからあまり感想は書かせない。気をつけたのはポイントを決めて見せたこと。だらだらさせなかった。
  • 関口さん:教科書で初めてスピーチを聞かせて,オリジナルで感動した。原典を見ることが必要(年代が飛んじゃって,20ページ間にあることも…)。教材研究が必要。生徒に還元できるように。p. 54のnear the white sectionのnearにこだわる生徒もいると思う。
    棚谷さん:石井潤先生はレシテーションされていますが。
    石井潤さん:まさにLesson 6をやって,レシテーションをしている。覚えて言う内に子どものリズムがのってくるときがある。キングの演説は音圧やリズムがある。私は意味を取りがちになるが,音とリズムにこだわって指導しました。(会報担当から:石井潤先生は2011年全国大会と神奈川支部2010.7例会で「レシテーションの指導『M. L. King, Jr. "I have a dream"を使って。』」という発表されています。)

使用教材・時間の流れ:New Crown English Series 3 Lesson 6

時間 授業 内容 資料
導入 MLKing”I Have A Dream”全スピーチ視聴 DVD  “ I Have a Dream”
L6 ① 新出単語・文法事項(関係代名詞that)説明  
L6 ① 文法事項プリント 学習プリント
L6 ② 導入DVD・新出単語・文法事項確認(関係代名詞that 目的格) 映画 “ The Rosa Parks Story”
バス乗車のシーン
L6 ② 文法事項プリント 学習プリント
L6 ③ 導入DVD・新出単語・文法事項確認(関係代名詞who) DVD” The Rosa Parks Story”
逮捕のシーン
L6 ③ 文法事項プリント 学習プリント
L6 ③ DVD・文法事項確認(関係代名詞which) ”NHK その時歴史が動いた”
逮捕とバスボイコット
L6 ④ 導入DVD・新出単語・文法事項確認(関係代名詞which目的格) ”NHK その時歴史が動いた”
ベトナム戦争~現在
10 L6 ④ 文法事項プリント 学習プリント
11 L6 まとめ ワークブック他
12 L6 まとめ ワークブック他
  • 基本的に1ページ2時間扱い。いままでのペースを崩さないようにした。
  • DVD " I Have a Dream" には,バーミングハム教会の事件で子どもたちの死体が運び出されるシーン,警察署長のブル・コナー,デモ隊に警察官が水をかけ,黒人たちが逮捕されるシーンも映っている。生徒は本当にこんな実態があったんだと実感し,飽きずに観ていた。そのあとに" I Have a Dream"の演説が始まる。リンカーン像のアップもある。スピーチは訳付きのプリントで今どこをやっているのか時々板書した。事前に読ませたり、拍手が長かったりするのでその合間に日本語訳を読んでいた。
  • 映画 " The Rosa Parks Story"をL6②の導入に使用。
    a) どんな点がseparateでunequalなのか描かれているシーン。白人が先に乗り,黒人が次に乗り込むが,前のドアでお金を払ったら一度降りて(!),後ろのドアから乗り直して黒人席に座ることになっていた。雨の中で無抵抗に従う黒人たち。ローザさんがバスの中を通って席に座った。すると,運転手が来て「降りろ」と脅される。仕方なく降りたら,傘を投げ捨てられ雨の中に置き去られてしまう。生徒たちは教科書の英文だけでなく等身大で本当の差別の姿を見られたようである。
    b) 逮捕のシーンは、coloredの札を移動する意地悪な警察官、前のほうに座る白人、当たり前に後ろに行く黒人など,周りの様子からごく当たり前に理不尽なことが行われていることに生徒は驚いていたようであった。
  • 『その時歴史が動いた ~逮捕とバスボイコット編~』では,M. L. Kingと初めてRosa Parksとのつながりが出てきた。1955.12.1(キング牧師がモントゴメリーに来て1年が経った頃),ローザ・パークス(40代)が逮捕された。12.2 キングはバスをボイコットすることを決めた(乗客の7割が黒人,1日5万人),ビラを配布。この日の午後ローザは有罪,すぐに上告した。4日後の月曜日,空になったバスが走っていた。ボイコット運動を続けるかどうか教会に集まった参加者に起立を求めたところ,満場一致で継続賛成。翌日,歩く黒人たちに笑顔があふれていた(1年間歩き続けたのが映像のおかげで伝わりやすかった。黒人の倦怠感や失望感などへの理解が深まった)。
  • 『その時歴史が動いた ベトナム戦争~現在』を使って9時間目に,4~5分間でベトナム戦争につなげた。ベトナム戦争を評してキング牧師が「黒人と白人が一緒に殺人をして死んでいくという皮肉に直面してしまう…」と述べるシーン。1968.4.4 キング牧師39歳で暗殺される。「King's Day(1月の第3月曜日)に市民の行進が行われます。」というナレーションとともにWe Shall Overcomeが流れる。M. L. Kingが殺される背景、そしてKing's Dayに行われるデモ行進の多くの人々や涙する人たちを見て、教科書本文のHis dream lives on. の意味を生徒たちは少し理解できたようだ。
    工夫した点:「細切れにして見せた(疲れないように)」「こういうところを観なさい,と指示を出した」 
  • 榎本先生の所感:道徳・総合・国際理解等などでも使われるビデオ学習だが,良い教材でも「ただ見せればよい」という感覚だけで見せると、生徒の中には入っていかない。今回の扱いも、Rosaの映画のDVDは、字幕がないということ、ポイントをつかませて見せていったこと、そして何よりもアメリカ人の心の中に深く根付いているものをかみくだいて視覚に訴えていくかが勝負どころであった。言葉で飾られてしまう恐れもあるので感想は書かせなかった。どこまで生徒たちの中に入って行ったかは不明であるが、情報が発達している世の中なのに、生徒たちは「知らなかった…」という気持ちで見ていたようだ。今,彼らは高校生になっているが、どこかでM. L. Kingにふれたとき、授業で観たビデオの断片を思い出して,そこから先に何か一歩踏み込んでいくことを願っている。

参加者の感想

  • キング牧師の内容、とても興味深かったです。高校の教科書でとりあげられていることは今のところないですが、扱ってみたいと思いました。DVD見てみたいです。ありがとうございました。
  • DVDの利用は前々から興味があったのですが、導入段階で興味を引きつけられるだけでなく、内容理解の手段としても活用できることを学びました。生徒が学習内容に興味がなければ、どんなに丁寧に解説しても右から左に流れてしまうので、単元についての背景を利用して浸透させるのはとても有用だと思います。特に小出しにして見せるというのは、生徒の集中力を保つという点で参考になりました。
  • ①検定教科書に取り上げられているテーマ・題材(中途半端で薄っぺらい内容〔アプローチの仕方に苦心〕)がどう変わるかで掘り下げ方が決まるのは、私も不安です。
    ②NHKのドキュメンタリー番組はやはり使えると思いました。〔着眼点の豊富さ〕
    ③無理なく無駄のない教材作り(限られたソースの中から効率的に資料収集しているところが良いと思います。)の手本となると思いました。
    ④文法の解説をどこまで掘り下げればいいかについては、現場教員によって千差万別ゆえに難しい課題だと思います。
  • Rosa Parksの話は知っていましたが、映像を見ると違いますね。とても衝撃を受けました。導入に使用したということですが、読解にとても役立ったと思います。
  • 教科書の英文からでは推測しにくい部分を生徒にどのようにふくらませイメージ化させていくことに力が注がれている授業で、教科書の読み取り学習を榎本先生のコンセプトで映像を手がかりに本文の肉づけがなされている印象的な授業でした。
  • ビデオ教材をふんだんに使ってとてもわかりやすい授業で、子ども達は幸せだと思います。バスの座席でローザ・パークスさんのcoloredのカードを後ろにずらしていたことなど知らないことがたくさんあってとても勉強になりました。ありがとうございます。
  • この30年間キング牧師については、やりたいやりたいと思いつつ一度もやってません。今年こそはと考えています。参考になりました。
  • Rosa ParksさんのDVDは新しい情報で良いsceneがあり、あいまいな本文を補強するのに大いに役立ちそうです。有難うございました。She sat on a seat near the white section.の意味がよくわかりました。
  • DVD(=映像の力)を効果的に使っていると思いました。
  • 簡単に記述しているテキストの英文を深め、生徒に考えさせようと工夫を重ねている点が重要であるし素晴らしいと思いました。
  • 「ポイントをつかんでみせる」ことが大切だと思いました。有難うございました。
  • 映像の効果的な使い方が参考になりました。
  • 情熱をもって取り組まれている先生方とお会いできてとても刺激になりました。有難うございました。
  • 資格教材はとても生徒の興味を引くことは知っていたが、実際の様子を描いた映画を見せることでよりイメージしやすいものとなっていった。映像を用いるときに注意しなければならないと思ったのは、ただ流しておけば良いのではなく教師が適宜コメントを入れること。関心を持たせ続けるためにも必要だと感じた。

●報告:「3.11大震災をめぐる被災校と海外との交流プロェクト
 ~国境を越える生徒間のきずなを求めて~」

奈良勝行さん(東京都市大学講師)
 「JALTで,英語でプレゼンしたので英語でやります! みなさんが寝ないように,3/11の震災に関するクイズを出しながら発表しますね。」という,奈良先生のご配慮で最後まで集中して発表をうかがえました(事務局のS先生はクイズで正解を連発。一同,感心しました)。教員として,一般教養として,知っておきたいことってあると思うのですが,まさにそれが試されたように感じました。みなさんもクイズにご注目下さい。
 昨年10月23日の地震で被害を受けたトルコのVanの小学生のみなさんへのメッセージを例会参加者が例会の終わりに書きました。それを携えて訪問された奈良先生がご帰国後,新英研メーリングリストに投稿された報告も掲載しました。

奈良先生

  • レポーターから:あの未曾有の大震災・原発事故からほぼ1年(3月10日の発表日)。3.11災害に際し,海外から 多くEncouraging messagesが届き,それに対し被災校の生徒たちが"Thank-you messages"を書いた。10月23日にはトルコで大地震が発生,それに被災校の生徒が逆に"Encouraging messages"を送った。国境を越えてきずなが深まっていった様子をレポートしたい。
  • 奈良先生:サイドリーダー Ryuhei(薬害エイズ裁判の川田龍平さん)を執筆。都立高校教諭をご退職後,大学院で臨床教育論を学んだ。現在は東京都市大学,白梅学園大学で講師。

Q & A

●宮城県の石巻工業高校
  • Q1: Which tool at school was the most useful after the tsunami, wooden boards, boats, or gymnastic mats? (何が役立ったか?)
    A1: The boats were the most useful. The students carried many residents aboard their boats to the shelters. They also carried foods and drinks for them. They were greatly thanked by the residents.  (4メートルの津波が押し寄せた。当日は学校は休みだったが,ボート部はクラブの練習で登校しており,ボートで物資を運んで,地域の人に喜ばれた。この災害を機に生徒と住民の世代間交流が一気に生まれた。)
  • Q2: Who coined the international word "tsunami" in history?
    A2: Lafcadio Hearn (ラフカディオ・ハーン,小泉八雲)first used the word tsunami in his work A Living God (『生神様』1897). His work described the giant waves after an earthquake as "tsunami." Later, the tsunami became an international word.(小泉八雲がtsunami「津波」という単語を世界に紹介した。)
  • Q3: How does a tsunami take place?
    A3: At the sea bottom the Pacific plate tries always to slide downward against the Continental plate. A slippage is created, and causes an earthquake. The Continental plate rises, and raises sea waves. The high sea waves rush onto the coast, and sweep away everything. That's the mechanism of a tsunami.
  • Q4: What does tsunami (津波)mean in kanji?
    A4: The tsu "津" of 「津波」 means harbor. High waves offshore do little damage to sailing ships. But, high waves cause heavy damage to a harbor when they hit.
  • Q5: Why didn't the sufferers in the gym like to move into the units? 
    (体育館に避難している人たちは何故仮設住宅に移りたがらないのですか?)
    A5: Those staying in the gym were given free food and clothes. Once they moved into the units, they had to pay on their own for foods, drinks, and charges of water, electricity, and gas. Therefore, they didn't like to move into.(服や食べ物が手に入らない。電気・水道・ガス代を払わなくてはいけなくなるから。)
  • Q6: How did the teachers & students escape the tsunami?(2階まで水が来たが,づやって逃げたか?)
    A6: A teacher learned the tsunami warning by his cell phone. He led the students in a hurry onto the hill behind the school house. They stayed overnight at several houses there, given hot meals, and awaiting their parents. (生活指導の先生が携帯で津波速報を知って裏山に誘導して難を逃れた。その日は近所の方にご飯をもらった。翌日が卒業式だったが,証書が120枚流された。)
●気仙沼向洋高校は高台にあって津波は免れた:
  • Q7: What made fires break out?(火事は何故起きた?)
    A7: Heavy oil tanks were located along the harbor. They were destroyed by the tsunami, and leaked a large amount of oil. The oil caught fire, and burnt up everything. (重油のタンクが流れながら燃えていった。)
  • Q8 : Why is radiation so dangerous?
    A8: Radiation is invisible, silent, and doesn't smell. Once it enters a human body, it destroys cells and DNA, and kills people in the worst case. It is dangerous because it persists in the air for many years.

メッセージ交換

  • 以下は,奈良さんが国連のESD行動の一環として行った支援活動を「3.11東日本大震災をめぐる被災校と海外との世代間交流プロジェクト~国境を越えて生徒間のきずなを求めて~」と題して報告された資料に基づいています。
  • メッセージ交換:2011年3月11日未曾有の地震と津波が岩手・宮城・福島を含む東日本地域に多大な被害をもたらした。福島では原子力発電所事故による放射能汚染問題も発生した。16,000人の死者、3,000人の行方不明者、同年11月中旬現在約60,000人の住民の避難という事態を生み出した。震災の直後から5月初旬までに海外8カ国(ルーマニア、ロシア、カナダ、トルコ、アメリカ合衆国、フランス、ケニア、カメルーン)の学校から送られてきたおよそ250通の「応援メッセージ」を、5月14日に石巻A高校へ、7月12日に大船渡B中学校と気仙沼C高校へ持参して手渡し、生徒200人に「感謝メッセージ」を書いてもらい、海外の学校に送った。
  • 新英語教育研究会(新英研)は、被災学校支援の募金運動を展開し、被災した学校の会員と連絡をとり学用品を送付した。
  • トルコ(小学校)
    I have watched the sad events that you have lived through. My country is also in earthquake zone, and I know disaster of earthquake. You need a long time for decreasing of your pains but if we believe in epithelizing, everything will be better.
  • カメルーン(高校)
    The economy of Japan cannot fall because they are good workers, and they have many human resources like factory workers.
  • ルーマニア(高校)
    I feel sorry about your problems caused by the earthquake and the damages you have suffered. I wish I could do something about that, but I don't have resources to help you. I wish you all the luck you need to pass through this disaster.
  • ケニア(高校)
    It is my sincere wish that you may regain your previous status and that together we may forge ahead as one, united not by distance but by our hearts. I wish you a quick recovery from the huge loss you incurred, and encourage you to do your best in whatever you are involved in so that together we can create a difference in the next generation to come.
  • アメリカ合衆国(小学校)
    I want to let you know, that I am thinking of, and I hope that you are all okay.
  • 海外への「感謝メッセージ」
    2012年5月12日にA高校、7月14日に大船渡の市立B中学校と気仙沼のC高校にこの応援メッセージを持参して訪問した。その学校で特別に組んでもらった授業の中で生徒が「感謝メッセージ」を書いた。後日そのメッセージを海外の学校に郵送した。
    B中学校
    We never give in to the disaster. We are sure to get back on our feet. I'm very happy to get your message. We will get over the hard times. Your messages gave me strength. I will hang on in spite of the tsunami. Thank you so much.
    C高校
    I was encouraged by your message. There was a big earthquake on March 11th. I lost a lot of things, but at the same time I got a lot of things such as a brave heart and great love. We never give up reviving my town. I'm from Fukushima City. The city is the most dangerous place in the world. We can't go outside and play sports, but we never give up! From this experience, I found that our tie is very strong. I hope for world peace. Thank you very much for your pretty card. I will get over the quake. Your message gave me strength.
  • ALTの中には津波で死亡するという悲劇に遭遇したもの者もいた。多数の外国人が福島の原発事故による放射能被害を恐れて帰国したが、ほとんどのALTは地域住民の人情が気に入り震災後も踏みとどまって教育活動に従事し交流を続けている。

トルコとの交流

  • トルコへのメッセージ
    2011年10月23日トルコ南東部で発生した大地震は死者約600人、負傷者約4,000人の被害をもたらした。3.11東日本大震災ではトルコの小学校などから応援メッセージが届けられていることから、石巻、気仙沼、大船渡の会員に、生徒に応援メッセージを書くことを依頼した。さっそく11月中旬、B高校と気仙沼のC高校から応援メッセージが届いたのでトルコへ送った。
  • A高校
    Highslide JS I was so surprised to hear there was a big earthquake in your country. We also had an earthquake, and the tsunami in our country on March 11. Many houses were destroyed and there were heavy casualties. It was a sad disaster. You encouraged us then, and it was very helpful. Let's get over the difficulties. One for All, All for One!
  • C高校
    Dear friends in Turkey,
    I heard about the disaster happened in your country. I guess your electricity and water are cut off now, but I'm sure you can get them back soon. I know how you feel because I experienced the same situation. I couldn't take a bath for 10 days, and didn't have enough food after 3.11, but we could get over the difficulties. You may be suffering from the cold and a lack of food, but please never give up. We will help you as much as possible.

2012/04/02 (月)の奈良さんの新英研MLへの投稿

  • 3月23日から4月1日まで3人でトルコへ行きました。私はそのうち25日から27日まで、昨年の10月23日に起きた大地震でひどい被害を受けたトルコの東部のVANという都市の初等教育学校(8年制)を訪問しました。VANは人口約100万で、82の初等教育学校があり、生徒数は約30万人。クラスサイズは25~30人。その上にHigh School(日本の高校にあたる)が30校あるとのこと。
  • トルコの学校教育:初等教育学校(8年生で、日本で言えば小中)、高校4年生、その上が大学4年生。初等教育学校は義務制で、もちろん授業料は無料。高校へはほとんどの生徒が進学するとのこと。8年生に対しては「全国一斉学力テスト(国語(トルコ語)と数学」を実施している。
  • VANの概要と地震の被害:VANは、イスタンブールから約1,600キロ離れたイランとの国境に近い都市で、1日に1~2本のフライトしかない辺鄙な所。日本で言えば、東京から稚内という感じの街。10月23日の地震当日はちょうど日曜日だったので、学校での被害は免れ、自宅や買い物などで外出先のビルで犠牲になった人が多数。全体の死者は約400人、負傷者はおよそ6,000人。VANは冬で寒く、旅行客はほとんど見当たらない。私は25日(日)の早朝にイスタンブーを発ち2時間のフライトで、VAN着。その日の午後市内見学。あちこちがまだ地震の被害でビルが倒壊したそのままで、道路もデコボコ。
  • 被災校の授業見学:26日(月)ホテルに迎えの車が到着。ハイダロール校へ。 さいわい校舎は地震の被害はなかったのこと。ただ校長室で校長や英語科の先生と懇談中、突然校舎がグラグラ! 余震! "I'm scared!"と叫ぶと先生方が"Oh,no! don't be so scared! That happens here quite often!" と平然としたもの。 VANではいくつかの学校が校舎が倒壊し、教室が足りず現在二部授業(morning class & afternoon class)をやっているとのこと。とにかく授業を見せてくださいと申し出て、英語、理科、音楽の授業を見学。まず生徒に訪問目的を英語で説明(なお、トルコは英語教育は4年生から開始)し、日本の被災校(石巻、気仙沼、大船渡の中高)から送られたメッセージを紹介。生徒はキラキラした目で食いいるようにそれを眺めました。彼らはあらかじめ用意した"Welcome to Van!" "I Love Japan"などの文字を書いた横長を紙を見せてくれました。私が"Do you like English?"と問うと、驚いたことにほぼ全員がさっと挙手! 逆に生徒が "Why do you use (chop) sticks when you eat?" "Why don't you use a knife and a fork?"と質問してきたので、思いつくまま答えました。ハーモニカを取り出し、「日本のフクシマの生徒は放射能の影響で故郷に帰られません、今故郷を懐かしんでいます」と言って、「ふるさと」を演奏すると神妙な顔つきに。 "Do you know any English songs?"と問うと、少し考えて"ABC songs"と答えたので、演奏すると全員が大声で合唱。また音楽の授業では子どもたちがピアニカでトルコの歌を演奏してくれました。時間がないので次の授業へ、さらに次の学校へ。午前中で3校、午後1校回るというあわただしい旅。
  • 27日(火)にVANを発ち、イスタンブール経由で南部のANTALYAへ行き、夜坂本さんたちと合流する計画が、その日は猛吹雪の悪天候でフライトはすべて欠航! やむなくホテルに戻り部屋で「ふて寝」。
  • BASARI SCHOOL訪問: 28日(水)は快晴でVAN空港へ。すると何とANTALYA行きの直行便の標示が目に。急いで手続きをして離陸3分前の飛行機に飛び乗る。VANから2時間強のフライトでANTALYAへ。
  • 午後2時半ころ、私立BASARI SCHOOLの"ECO Festival"に間に合いました。もともとこの学校は坂本さんがインターネットの"E-Pal"で見つけてネット交流しているもの。講堂で生徒たちのプレゼン~Marine Dumping, Sewage and Wastewater, Global Warming, Oil Pollution, Japan's 3.11 Disaster, etc.~を見学。生徒の歌、楽器、スライド表示、ダンスはもちろん英語の運用能力も大したもの! これが5年生か…? 校長室で先生方と懇談すると、生徒たちの保護者はほとんどすべてがrich階層で、幼稚園から英語、歌、ダンスなどの英才教育をしつけているとのこと。7年前に創立された新しい学校だが、「全国一斉学力テスト」では1位、2位の生徒が続出だそうで、そのいくつもの「表彰状」が誇らしげにエントランスの壁に。
  • 翌29日(木)は私のたっての要望で午前8時に学校へ。エントランス前での「朝会」を見学。生徒がトルコ語でなにやらスピーチした後、坂本さんが英語であいさつ。英語の授業見学へ。「比較級」の文法の授業。「Men VS. Women」で "Men are ~ than Women". とその逆を言わせるもの。リズミカルに話させ、笑いもこぼれるおもしろい授業。 日本のように板書で説明でなく立体的な授業も。 
  • VANの学校の生徒から沢山のメッセージやカードを預かりました。これをまた日本の被災校やフクシマの生徒に近いうちに届けたい。

参考資料

  • 奈良勝行「光ることば75 "Thank-you messages" from Ishinomaki」『新英語教育』2011年8月号(今回のレポートと内容が同じです)
  • 奈良勝行「光ることば76 "Encouraging messages" from Overseas Students」『新英語教育』2011年10月号(今回のレポートと内容が同じです)
  • 内橋克人(2011)『不安社会に生きる』、
  • 大江健三郎、内橋克人、なだいなだ、小森陽一(2011)、『とりかえしのつかないものを、取り返すために―― 大震災と井上ひさし』、岩波書店、p.23
  • 山口博史、田中京子(2010)、災害対応における多文化視点の導入に向けて、名古屋大学留学生センター紀要、v.8, pp.23-31
  • 吉武博通(2011)、東日本大震災に際しての危機対応と大学がこの経験から学ぶこと、リクルート カレッジマネージメント、168、pp.26-31

質疑応答+意見交換

  • Q:書かせるための手だては?
    A:事前に先生方に頼んで,和英辞書やペンを用意してもらう。事前にメッセージを半分送付しておく(半分は当日持参し,教室に掲示する)。
  • 奈良先生:2012年2月16日に双葉町中学校を訪問(52名が学んでいる。6900人の町民は埼玉県に移住)。200人の生徒が80カ所にバラバラになっている。 昨年,1000万円かかったが全員がそろうイベントがあった。今年は出来るだろうか…。
  • Yさん:会話の時間に,震災関連の新聞の切り抜きを読ませて,感想を書かせた。
    Tさん:Pray for Japanをツイッターで見せて,感想を書かせた。

参加者の感想

  • 色々な国からのメッセージ、貴重なものを拝見できてよかったです。伝えたいと思う気持ちが大切だと思うので、こういう時に英語でのメッセージを書いてみるというのは良い機会だと思いました。ありがとうございました。
  • 海外から送られてきたメッセージに返信を送るという活動は被災した生徒にとって動機を得やすいのかなと思いました。このように内発的な動機に支えられた活動からは「こんな表現をしたい」「英語で何と言うのだろう」という新たな動機が生まれやすいのだと改めて感じました。Q&Aも授業に生かせるかなと思いました。津波を英語で説明するという問題はチャレンジングで楽しかったです。
  • ①状況を英文で読ませたり、リスニングさせて、その内容を簡単な(平易な)英語で説明させる表現力を伸ばす手法がよく分かりました。
    ②パワポを使った英語によるプレゼンは活字内容を画像や資料を添えて強調するのは効果的。
    ③1つのエピソードに必ず1つQ&Aを設けて、聞き手に簡潔な英語で説明させる形式がスムーズに考えさせるきっかけになると思いました。
    ④困っている相手に対して、どんな激励メッセージを送るかというタスク自体が、実は本当の実践演習になるんだということがよく分かりました。
    ⑤状況に合わせて臨機応変に英語でコミュニケーションを図るトレーニングとして使える。
    ⑥英語によるreadingの授業がどのように展開されるか分かるモデルプレゼンでした。
  • 有難うございました。気をつけて(トルコの)Vanに行って下さい。また、その時の様子をレポートして頂きたいと思います。
  • 奈良先生のご活動のお話を聞き、良い機会を与えていただきお礼申し上げます。
  • とても素晴らしい取り組みをされているのでこれからも続けて下さい。出来ることは応援したいと思います。お体に気をつけてトルコに行っていらして下さい。
  • とてもダイナミックなプロジェクトで、奈良先生の体を張った精力的な取り組みに感動しました。教科書の文の読解とは全く違って、自分たちに送られたメッセージを読み解いていく"わくわく感"、そして同じ思いを分かち合っているからこそ生まれる心のこもったメッセージの発信…、これぞまさに、authenticな教材と言えると思います。
  • 奈良先生の行動力に脱帽です。写真・メッセージのパワーポイントとてもよかったです。
  • 豊富な作品・作文紹介を有難うございました。他人事ではなく毎日大地震に備えてベッドの下には履物を置き、リビングにはリュック3個分の備蓄をしています。
  • 生徒のメッセージを書く時間をとることで福島への思いを自分の心にとめる時間を取りたいです。これからも続けていきたいです。


●日時: 2012年3月10日(土) 午後3:30~7:00

3:20 ~ 受付開始
3:30 ~ 5:00 中学実践報告 [担当:泉]
5:00 ~ 5:15 休憩
5:15 ~ 6:45 高校実践報告 [担当:萩原]
6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡
●会場: ★いつもの会場(大倉山記念館)と異なります!
横浜市港北区菊名6-18-10
 菊名地区センター 3階 小会議室 (Tel. 045-431-4101)
 (東急東横線「横浜線菊名駅」より徒歩5分
 港北図書館の建物の3階になります。)

より大きな地図で 菊名地区センター を表示
●会場費:500円(支部会員200円 学生200円)
[当日会員登録(年会費2000円)で割引適用]
●中学実践報告: 「中3,キング牧師"I Have a Dream"をビデオとプリント教材でどう扱ったか」
榎本美津子さん(横浜市立中和田中学校)
●報告: 報告:「3.11大震災をめぐる被災校と海外との交流プロジェクト
~国境を越える生徒間のきずなを求めて~」

奈良勝行さん(東京都市大学講師)
レポーターから:
 あの未曾有の大震災・原発事故からほぼ1年(3月10日の発表日)。 3.11災害に際し海外から 多くEncouraging messagesが届き,それに対し被災校の生 徒たちが "Thank-you messages"を書いた。10月23日にはトルコで大地震が発生,そ れに被災校の生徒が逆に"Encouraging messages"を送った。国境を越えてきずなは 深まっていった様子をレポートしたい。
●お問い合わせ: 萩原一郎 e-mail

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(2012年3月4日掲載/7月6日更新)