■ 神奈川新英研3月例会
2008年3月
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 2008年3月16日、大倉山記念館にて。参加者14名。

●近況、最近取り組んでいること、悩んでいることなど

  • New Horizonの2年教科書はかなり内容量が多く、それをどう扱うか考えがまとまらないで困っている。
  • 観点別評価の意味のなさ。自分の評価でつけたい! 学年でそろえると危険だと思う。
  • 以前勤務していた高校の校内などで写真を撮りました。
  • 新年度の準備、年間計画づくり、プリントづくり
  • ロシア語を大学で教えている参加者:中学・高校の英語で短いワンフレーズで習っているせいか、ロシア語のフルセンテンスを「長い」という学生がいる。また、中学・高校の英語で前置詞onを「接触」の意味で教えているかが知りたい(参加者からon the desk, on the wall, on the ceilingのように「接触」の意味で教えていますという発言があった)。英語で習っているならば、ロシア語で教えたいが、学生は分かっていないようだ。
  • 中学2年を担当している参加者:中2を担当して、4と5の割合が多いので減らすようにと言われ、難しいテストをした結果、平均点が43点になり、生徒が努力しても成績に反映しない状況でジレンマを感じている。

●神奈川支部例会への意見・感想

  • 先生方の意見交換が活発であり、英語が好きになる情熱が増えました。

●実践報告(高校)

「東横学園大倉山高校での30数年の英語指導」

森 延生さん(東横学園大倉山高校)
 勤務校や出身校が廃校になるというのは、誰にとっても大変寂しいことです。東横学園大倉山高校が廃校になるため、森先生は4月から系列校に異動され、胸中は複雑かと思いますが、空き教室を見つけ、「モーリー・ルーム」をぜひとも開設してください!

(1)森先生

  • レポーターから:教師としての30余年を振り返ります。教師としての資質とは何か、担任として努力してきたことは何か、英語の力をつけさせるために授業で努力してきたことは何かなど、日々、生徒との関わりの中で、紆余曲折しながら、取り組んできたことの一端をお話ししたいと思います。
  • 英語の部屋:2階予備室は森さん専用、通称「モーリー・ルーム」。DVDとコンピュータとプロジェクター(自前)がセットされている。スクリーンを利用してパワーポイントを使った授業を展開。教科書本文を映す以外にも、教科書で使われる表現を用いている映画の1場面の映像がパッと見られる(例えばNow that….は「ロード・オブ・ザ・リング3」)。壁にはアメリカ地図や世界地図がかけてある。
  • 持ち時間:廃校が決定した2年前から募集はしていないため、高3のみ8時間。
  • 英語教師として:73年に英語教師として着任(青春ドラマ『青春とはなんだ』の夏木陽介、『飛び出せ!青春』の村野武範にあこがれて教師になった。)、81年にロンドンに10日間し、その様子を授業で取り上げた(教科書に載っているロンドンの旅行記の写真が古いのを見て「イギリスに行こう!」と思い立ち、教科書の通りにテムズ川をたどっていった。帰国して授業でスライドを見せた。森さんの姿が映っているので生徒たちはよく見てくれた)。 同年ウィーン、84年スイス・オーストリア4週間、当地で授業見学、以後、夏期休暇中に通算11回のスイス・ドイツでのホームステイ+授業見学(ホームステイ先の子供たちの学校に行く方法。「英語の授業を日本語でやっているのは日本だけ」というのを聞いて、本当か確かめたかった。スイスとドイツのギムナジウムでは少し英語を入れる程度だったので安心した。ギムナジウムは進学校で誇りを持っている。)。「今思うと、渡航費もかかるが、やってみてよかった」そうです。
  • 海外との交流による変化:81年以降海外の授業を見学し、先生方との交流を通じて、生の話題を生徒に提供するようになった。例えば、文通している手紙を見せて「スイスやドイツの人にとっても英語は外国語だから、spelling mistakesがある。大切なのは度胸だ!」と話した。
  • 習熟度別だと「share」できない:以前、教科書でお茶の飲む話が出てきたら、実際に食物室でお茶を入れて飲んでいたが、習熟度別でクラスが2分割されると、shareしあえないので、そういう活動をしなくなってしまった。
  • エピソードその1:森さんは30歳の時にクラスで悩みごとがあって、ご自身が不登校気味になってしまったが(奥様に叱られ、掛け布団をはがされ…)学校に行き、どうにか教員を続けられた時期があったそうです。「情熱をなくしたら、先生は辞めた方が良い」と実感を込めておっしゃっていました。いつも明るく情熱を持って授業に臨まれている森さんから想像も出来ないお話でした。
  • エピソードその2:謝恩会で森さんが女子の制服を着て(当日、写真を見せていただいた)、他の先生が梅沢富美男のような女形のメイクでマツケンサンバを踊った。

(2)東横学園

  • 東横学園の再編:08年度から東横学園大倉山高校が廃校、2009年4月東横女子短期大学が「東京都市大学」(旧・武蔵工業大学。東京急行電鉄の実質的な創業者五島慶太の興した学校法人五島育英会が行っている。系列校は東急グループに属する)に組み込まれることになった。4月から森さんは東京都市大学附属等々力(とどろき)高校に勤務することになっている。
  • 東横学園の英語教育:1988年にネイティヴ教員採用開始、90年にホームステイプログラム開始し、カナダのバンクーバーやアメリカオレゴン州へ。94年に米国への留学制度(高2の初めから高3の1学期までで20単位を取ればそのまま戻れる)、97年に外国人留学生受け入れ開始(ドイツ、インドネシア、オーストラリアなどの留学生に、森ご夫妻のお手製の「通知表」を渡して喜ばれた)、97年から習熟度別授業を導入(森さんは導入に反対した)、2006年にブリティッシュヒルズへの国内留学(五島育英会の援助で無料)。08年に東横学園中高校(等々力)と統合。

(3)高3

  • 教科書:
    英語2(2単位)
    World Trek(桐原書店)
    新訂「口語表現の新演習(山口書店)
    Reading(3単位)
    Powwow(文英堂)
    グローバルイングリッシュ(1単位)
    英語特講(選択2単位)
    長文と文・作・語法の20章(山口書店)
    英語速読トレーニング(桐原書店)
  • ラポール(心の通い合い、信頼関係)をつくる:埼玉大学の仲本先生は「心の交流こそ授業づくりの原点だ」と言っている。森さんは担任は8回しているが、必ず生徒の名前が1回は出てくる「学級新聞」を発行していた。あるお母さんは「うちの子は学校のことを話さないが学級通信で様子がよくわかった」と言って喜んでくれた。またCDを貸してくれた生徒や水泳大会などの行事では「小さな感謝状」を渡している。
  • 英字新聞を取り上げる:デイリー読売の写真と英語のキャプション。またはインターネットで「写真+英語の記事」と「同じ写真+日本文」をB5の上下で提示。
  • 英語通信「Sometimes」:名言+森さんのメッセージ+東京新聞の英語コラム。  例1)While there is life, there is hope. by John Lennon
     例2)To go on and to go up! (継続は力なり)
     例3)Stand tall! Stand proud!(胸をはって、誇りをもって!)
     例4)We pay respect to each other!(お互いに敬意を払って)
  • 「3級絶対合格ノート」「森クリニック」:2月には英検の指導をしたり、「診察券」を発行し、英語クリニックを行っている。
  • パワーポイントで1区切りずつ、英文和訳し、最後に全訳を冒頭に提示。
  • 20問出して15点満点にする「単語テスト」を実施

(4)質疑応答と意見交換

  • :リーディングの授業で生徒が習ったことを使う機会はあるのか?
    :熟語をやったときに別の例文で学んだりする。『英字郎』の例文で応用英作文を個人やグループで競う。
  • :音読は?
    :CD、または自分がモデルになる。「スラッシュ読み」「訳すときに音読」「意味が分かったら音読」させている。昼休みに読めない生徒を指導している。
  • 意見:生徒がTrue or falseの問題を作っている。

(5)参加者の感想

  • 森先生の1つ1つのアイディアが全て、授業・生徒を思ったもので、先生自身が動いている長年の取り組み方が素晴らしいと思いました。ありがとうございました。
  • いろいろヒントを得ることができました。小道具を工夫してみようと思います。
  • この4月から初の中学1年生の担任、英語を教えるとのことですが、中学生相手の場合、手を変え品を変えた練習活動を準備するといいと思います。頑張ってください。
    1. 「15点満点で20コの単語を出す」のは良いアイディア。
    2. パワーポイントをうまく使っていたので、当日、実際に生徒にやるように発表してもらってもよかったか?
    3. 4月から中学1年担任で授業は高2生も受け持つとのこと、オーバーワークにならないようにくれぐれもお身体を大切に。「Sleep. Eat well. Act for a change.」をもちましょう。
  • 高校の評価の仕方を初めて知り、驚きでした。英語教室のようなところが、確保されているのが、いいなぁ!と思いました。たくさん資料をいただいたので、帰り道も楽しみです(前半、睡魔に負けてつらいときがあり、失礼いたしました)。
  • 森先生のお人柄そのまま、率直で明るい取り組みと態度に久しぶりに接して、貴重な例会でした。皆様も笑い声あり、ご自分の教室を語り始めたり、気持ちもほぐれておられるようで良かったです。
  • 丁寧につくられた生徒のノートから、先生に大切にされていることをきっと感じているんだろうなぁと思いました。一生懸命ノートをとっている姿が浮かんでくるようです。長い間、教員を続けてこられて、歴史がすごい!!と思いました。私も頑張らなきゃと思いました。どうもありがとうございました。

(文責:和田さつき)

(2008年10月26日)