■ 神奈川新英研4月例会
2007年4月
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2月4月5月6月7月10月11月12月
 4月21日、大倉山記念館にて、参加者9名。

●近況、最近取り組んでいること、悩んでいることなど

  • 社会人として働きながら教職を目指しているTさん:これからの(高校免許取得後)高校(私立)へのアプローチの仕方。
  • 悩んでいることは2人のALTとのTT。イギリス人とフィリピン人の個性をどう教材に取り込むか。
  • 週3のうちの1時間だけの(日本人教師2名での)TTをどのように有効にしていくかの工夫が、今年度の課題です。

●実践報告(中学)

「ハングルと英語の発音」

棚谷孝子さん(平塚市立神明中学校)
 ここ数年、韓国の英語教育団体KETGと交流されたり、ご自身のHPで韓国朝鮮語を翻訳され、全国から何万件もヒット数があるということは以前から伺っていました。「韓流ファン」という狭い枠組みではおさまらない棚谷先生のこれからの活躍を楽しみにしています。
(1)棚谷先生
レポーターから:韓国語のことを「ハングル語」という人がいるが、これは間違いである。正しくは「ハングゴ」(韓国語)、または「ハングンマー」(韓国のことば)という。北朝鮮(南の人は「北韓(ブッカン)」と呼ぶ)では、もちろん「チョソノ」(朝鮮語)と言っている。「ハングル」は「偉大な文字」という意味で、1446年に朝鮮王朝4代王のセジョンデーワン(世宗大王)が制定、公布した「フンミンジョン(訓民正音)」のことである。世界で最も新しい28個の表音字母であり、最近、世界文化遺産に登録された。ここでは韓国人が英語を話す時、母語に引きずられてどういう現象が起こるかをさまざまな例から考えてみたい。また、日本語のカタカナで英語を表記したらどうなるかも併せて考えてみる。
(2)英語との距離
英語  日本語の表記・発音 韓国朝鮮語の発音 
digital デジタル ディヂトル 
computer  コンピューター コムピュゥト 
world cup  ワールドカップ  ウォルドコォプ 

◎発音にまつわるエピソード:昨年夏にKETG(Korean English Teachers’Group)の夏期研修大会に出席、「棚谷さんはペ・ヨンジュンのファンでしょうか?」(Is Ms. Tanaya a Bae Yong Joon’s fan?)と○×クイズを出したところ、韓国の先生方が口々に「ペン、ペン」と言ったので、発音を直されたのかと思ったら、それは「fan」と言っていたのだったとわかってびっくり。韓国朝鮮語には/f/ /v/ がないので、ファンではなく「ペン」と発音したのだった。同様に、スポーツなどで応援するときに「ファイトー!」の意味でfightingを「パイティン」と言うそうです。
(3)会報担当(和田)の感想(韓国朝鮮語をなんと呼ぶかについて)
 毎朝NHK第2放送で語学番組を聴くことが多く、フランス語講座の前がちょうどハングル講座なのでよく耳にしている。「ひらがな語」と日本語を言わないように、表記する文字を指す「ハングル」に語をつけて「ハングル語」とは言えないわけだが、ある男性講師の方は韓国語、朝鮮語のどちらも言わず、「この言語では…」と言い続けていたことが心に残っている。そういうのを聞くたびに何とも言えない気持ちになった。この異様な状況は政治に影響されているわけだが、今回は「韓国朝鮮語」という言い方でこの会報を書いてみた。この異様な状況がいい方向で解消される日が来るのを願う。

●実践報告(高校)

「最後の授業とそれまでの授業」

黒丸栄子さん(横浜創英高)
 この3月で退職なさった黒丸先生にこれまでの授業を振り返っていただきました。1973年の生徒作品が生き生きしていたのが印象的でした。これからも新英研でご活躍を!
黒丸先生・ 昨年度は17時間担当。
英語科
  • 英語は少人数:高1〜2は3クラスを4クラスに分割。
  • 統一進度、教材:高3は16クラスを11人の英語教員が担当。
    「小テストをパートごと」「毎週、速読テスト」を実施し、大学進学率を上げようと努力している。統一教材、統一進度、成績がコースごとの基準をはみ出ないよう、周囲に気を遣いながら授業している。
日本語先渡し方式
  • 「日本語先渡し方式」:2003年に新任が多く入って様変わり。「今の授業は訳読中心だが、それでは英語の力がつかないので日本語は先に渡して、英語そのものの音読などを多くすべきだ」ということになった。
  • 今年の1〜3月の28時間のみ、この方式で行った。
  • 『Power On T』(東京書籍)
    Lesson 9 は宇宙飛行士の毛利衛さんが宇宙で考えたこと。
    (1) 単語調べは宿題。プリンとはノートに貼るように指示
    (2) 単語のワークシートでペアワーク
    (3) Oral Introduction(絵や写真を用いて英語で導入)
    (4) 日本語訳を渡して意味確認(+スラッシュリスニングや音読)
    (5) 英問英答(ペアワークまたは教員と)
    (6) 文法問題
    (7) 生徒に本文の要約を英語で発表させる(実際には生徒の意欲がなかったり、自分自身がこの方式に慣れていなくて未実施)
  • 反省と感想:確かに訳読式より生徒は飽きなかったが、本当に力がついたか疑問がわく。良い教材を使ってじっくり読み取ったり、ポイントになる発問で生徒に考えさせたり、議論させないと、本当に解ったということにならないのではないか。
思い出の教材
  • 生徒の自己表現:1973年の生徒作品は「時代」を感じさせるとともに内容が濃かったような気がする。例えば、当時は国鉄のストがあると学校が休みになったので高1の生徒は国鉄に宛てた以下のような手紙文を書いた。(原文ママ)
    Dear Japanese National Railway How do you do? We are ~ High School Students. You haven’t practiced strike of this September. Why do you avoid Yokohama? The whole school students waited. Even if half a day, we will like Japanese National Railway. If there were no strike, we could not live on. So every month you do strike and we will like you.
<参加者の感想>
  • 「本当に力がつく授業とは?」という問いかけが黒丸先生からありました。さまざまな活動をすること自体が目的化してしまって、作品そのものをゆっくり味わうことが減ってきているのではないかということだと思いました。
  • 黒丸さんの実践、今昔を聞き、今の「進路実績主義」がどこか間違っていることが明らかになりました。教師の個性を殺さないで授業をしたいですね。
  • 黒丸さんの悩みはすごくよく分かりました。クラス数が多いのを複数の教員で担当したとき、進度や教授内容を統一するため、必ずつきあたります。今後、少人数クラスが増えていくので、教科の打ち合わせがとても重要になると思いました。演劇をされてきただけに黒丸さんは話し方のイントネーションの変化、声のメリハリが武器になっているなと、レポートをきいていて感心しました。魅力ある元気な先生であったでしょう。


(連絡先:萩原一郎)
(2007年8月14日)