■ 神奈川支部春の一日研修会報告
2006年5月
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 '06年5月27日、大倉山記念館にて、参加者:20名。

●実践報告(高校)

「高校3年生の英文法指導〜センター入試の出題傾向を教えます」

和田さつきさん(橘学苑高校) 「センター入試でよく出題されるのは何ですか?」と問われたら、「助動詞+have 過去分詞」「感情や体調を表わす-ingと-ed(例えばexcitingとexcited)」「SVO+過去分詞」だと答えます。語彙では「句動詞」(Phrasal Verbs)です。4月から12月までの短期間で高3生に何を伝えたかの報告でした。
■指導上の提案
  1. 中2〜3の不規則変化動詞に発音記号(カナふり)を
  2. 発音指導で「wonはウォンではなくてワン」という対比説明はしないこと。間違った音が耳に残らぬよう「wonはワン」と!
  3. 中1のThis is 〜.の導入を名詞を増やすチャンスにしよう。
  4. 絵や実物を用いる場合、具体的な数量を話題にしているので、【a /an / some】や【数詞】を用いる。

■参加者の感想

    時制とか助動詞とか、自分が使う立場から、こう言った方がいいと提案しているので、おもしろいと思った。上記の部分は高3の受験期によく出題されることが多い。和田さんのようにしっかり勉強して臨まなければならないと思った。

●実践報告(中学)

「“遅れがちな生徒”を生き生きとさせる英語指導の工夫〜脳科学・特別支援教育の視点に立った授業改善〜」

瀧沢広人さん(埼玉県小鹿野町立小鹿野中学)
 遅れがちな生徒を「できない」と決めつけずに、理解するために教員自身が「脳科学」を学び、記憶のメカニズムを知って、授業の最初の方で「元気な活動」「声の出る活動」を行うなどの工夫をするだけで違ってくる。当日の参加者は前半にカードを使った活動ですっかり元気になり、後半の瀧沢先生のお話に集中。身を持って体験できました。
(1)遅れがちな生徒
  • 遅れがちな生徒の特徴:正しく写せない/写すのが遅い/「先生、今なんて言ったの?」と聞き返す/「放課後、社会科の再テストが2Aの教室である」という4つぐらいの要素を含む情報が聞き取れない/ノートをつめて書いてしまう/教科書に名前が書いていない/教科書にしっかり開いた折り目がついていない/aやgを印刷の書体で書く
  • 遅れがちな生徒を生き生きとさせる方策:「字がうまいね」など、まずほめる/できたことを実感させる=英語通信に載せる+自己評価/授業の最初の方で「元気な活動」「声の出る活動」を行う/ここまでするかというくらい指示を明解にする/量を半分に/テストで点をとらせる/暗記/時間指定=「5分でやろうね」/机の上に必要な物だけ出させる
  • 教員の心構え:記憶のメカニズム(短期記憶など)を勉強する/このくらいできて当たり前、とは思わない/遅れがちな生徒は6〜7%いると言われるが実際は3倍はいると考える=クラスに6人ぐらい。
(2)活動1
  • Fox Hunting:Close your eyes.(目を閉じて)と指示して、
    Did you have rice this morning?
    (Do you have a cat? 、
    Do you have a dog? 、
    Have you ever been to America? など)
    質問を1つして、Yesの人に手をあげさせる。目を開けて、質問を確認した上で、教室で5人の該当者を探す活動。
  • カードを使った活動(その2):
    カードには表があり、縦にJiro / Emi / Paul / May / Tomの5人の名前があり、一人だけ太字で、それが自分の名前となる。横にはplay tennis / play soccer / eat sushi / ski / skateの項目があり、縦横の交差部分に○×がついている。このカードを持ってクラスの誰かとジャンケンする。勝ったら2回質問できる。Can you skate? やCan you ski?など。そこで表を見て相手が誰だか当てる。当てるときはYou are Tom.(またはYou must be Tom.)のように言う。当てたらカードがもらえる。
  • ゲームを楽しくする法則:
    1. 意外性=「目を閉じて」「これから配るカードにはみんなが飼っている動物が描いてあります」
    2. ジャンケンさせる=勉強できるできないに関係ない
    3. 得点を与える=地図に記入/コインをあげる
    4. カードの奪い合いになる仕掛けをつくっておく/斑やグループ対抗
(3)活動2
・ 松香フォニックスで習った「時計しりとり」:
チョークをリレーのバトンのように渡し、黒板に10人で一周するように
book→key→yes→send…
と、しりとりを書く=最後の単語は初めのbで終わるようにする。

●講演

「小学校英語に翻弄されないために考えよう」

大津由紀雄さん(慶應義塾大学教授)
 「必修化」というマスコミ報道に踊らされることなく、現状を知る。まさにタイムリーな講演。参加者は熱心に聞き入っていました。興味深い点のみ紹介します。
  • 消えてしまった「推進の根拠」+反証
    主張1
    「英語学習の早期開始は心理学の裏付けがある」
    反証1:
    津本忠治(2005:49)「早期教育や訓練を始める最適の年齢を、脳科学の観点から決めることは時期尚早でしょう。
    主張2
    「歌と踊りと日常会話、小学校英語三種の神器で子どもの目が輝く」
    反証2:
    この3つにはcreativityがない。大人の目を輝かせるのは難しいが、子どもの目を輝かせるのは簡単。問題はその輝きを維持させられるかどうか。→斉藤敦子『総合教育技術』2005.11月号「小学校で培った英語に対する意識が中学校での学習時に落ちてくる傾向がみられる」
    主張3
    「発音だけでも!」
    反証3:
    発音の独り歩きはできない。
    (途中を略して…)
    主張6
    「アジアの隣国に負けてはならない」
    反証6:
    小学校英語「先進国」での弊害
    主張7
    「議論はもういい。やろう! もう94%でやってるんだ。いまさら引き返せない」
    反証7:
    年に一回程度しているのが94%である。そんなにやっていない。
  • 「語学ビジネス徹底調査レポート2005年度版」矢野研究所によると、早期英語教育の市場910億円!(いい食い物になる可能性が…)成人向け外国語教室市場2690億円 学習参考書140億円 電子辞書728億円

(連絡先:中村康雄)
(2007年1月7日)