■ 多摩サークル 125回/8月例会
2003年8月
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1月2月8月10月
  8月24日(日)午後、国立市立公民館にて。13名参加。

第40回新英研全国大会報告会

 例年多摩サークルは8月に例会を開いて、全国大会に参加した分科会や大会で学ん だことを報告し合っています。参加できなかった人にとっても、した人にとっても自 分が出られなかった分科会の様子が聞けるので、たいへん好評です。今年も5つの分 科会の16編のレポートをみんなで「実況中継のようだ」と言いながら詳しく聞かせて もらうことができました。筑波山での全国大会の熱気と真剣さがよく伝わってくる報 告会になりました。

<報告>

第5分科会(土屋さん)
(1)「絶対評価元年を終えてー評価観をとりもどせ!」(平野寿美-東京・中)
(2)「どんな学力をめざし、どう評価するか」(糸山京子-福岡・中)
(3)「PENSTYY Systemについて」(田中栄司-大阪・高)
第7分科会(江口さん)
(4)「それでも明日学校に行こう」(安藤恵美-東京・中)
(5)「英語が苦手な生徒たちとの1年」(玉木志乃-埼玉・中高)
(6)「英語ギライの生徒たちとどう授業をつくるか」(萩原一郎-神奈川・高)
第4分科会(大越さん)
(7)「Let's Play "Harry Potter"!」(牧野美和子-熊本・中)
(8)「Birdland Iの実践」(海木幸登-富山・高)
(9)「音ー文字ー単語ー文」(森高省治-兵庫・中)
第3分科会(塚本さん)
(10)「英語の名詞をどう考え教えるか」(岡田功-京都・高)
(11)「コミュニケーションに役立つ文法指導」(菅野まちこ-福島・中)
(12)「冠詞と助動詞指導の提案」(和田さつき-東京・中高)
第6分科会(指田さん)
(13)「もっと英文が書きたくなる方法」(伊藤正浩-福島・中)
(14)「生徒の本物の学習意欲を引き出す」(田中渡-埼玉・高)
(15)「子どもたちをつなぐ授業・行事・選択授業」(関口守義-東京・中)
(16)「小先生の授業」(指田徹-東京・中)
大会全体について(田中さん)

レポートを聞いて感じたこと

評価問題での教師達の悩みは次の2点ー絶対評価と言いながら、3年2学期の評定が入試用にそのまま、使われる。教師も生徒も納得できる評価規準・観点は何か?励ましに結びつく評価とは何か?
 平野氏は「映画で学ぶ生きたシラバス」の紹介を中心に授業プリントやテストを紹介して教師が納得し、生徒もやる気の出る授業を報告。
 糸山氏は今年は比較的恵まれた教員数で実施している「興味関心別少人数授業」について報告。50分の中30分はクラスでまとめの一斉授業と班活動を行い、残りの20分を10-13人に分けた3コース(リーディング/ディクテーション/ビルディング)で行う。各コースの教材もきめ細かく作成して、自分の興味関心別に選べるようにしてある。
 田中氏は受験中心の授業から英語落語を見てから、生徒中心の授業に変革してきた様子を報告。"PENSTYY System"という名称の由来は結局不明。

 新任1年目と2年目の実践を報告した安藤氏はつねに今の授業と以前の授業の長所・短所を比較検討してよりよい授業を目指している。彼女の"I am important. Your are important."を生徒にも自覚させる姿勢は、私がカリフォルニアで30年前にで会った学校区のモットー、" Every student is important. Every student has ability."と同じである。
 玉木氏の「生徒の学び方、英語への関わり方の方法はいろいろあるのだということに気づいた」という言葉は教師が柔軟な心を持つ必要があることを示唆している。
 萩原氏が「英語ギライの生徒たち」とどう向き合い、何を発見し自分を変えつつあるかの報告は大きな希望を感じさせる。「生徒はつねに変化する。教師もそれとともに変化できなければならない」と私も考える。「この頃の生徒は...」と高みから眺めていては、教師としての進歩は止まっているのだから。

 海木氏の"Birdland I"を使いながらのレポートは音声だけでなく、広い視野から授業を捉えていることがわかる。その大枠は「コミュニケーションの授業プラン」に示されている。海木氏も「チャンク読み」を取り入れて「同時通訳方式和訳」と名付けてやっている。多摩サークルでも『ミニ・ライブラリー』をこのやり方で作って、好評だった。オーラル・コミュニケーション導入以来「長文は大体の意味がつかめれば よい」とする学習指導要領の文言のために、子どもたちはかえって英語の基礎が分からなくなっている。チャンク読みは小さな意味単位ごとに理解していくので、英語の構造も理解できるし、一つ一つの語句の意味も理解できて、全体として英文の意味も明確になっていく。

 文法分科会のレポートと議論は子どもの視点とはかけ離れた「文法」そのものにのめり込み過ぎた議論に傾いていたようである。かつて林野氏や新潟支部が取り組んだような子どもの目線に合わせた「読解のための英文法」や「表現のための英文法」の実践を掘り起こしていく必要を感じる。英文法で扱う例文は、たとえ短い文でも内容もセンスももっと洗練したものを使いたい。Americans are friendly. Europeans are snobbish.というような例文を何の疑問も感じずに生徒に与えるのはどうだろうか?

 伊藤氏は「英語が嫌いな生徒ほど、英語が書けるようになりたいと願う」と述べている。「テストで書けない/綴りが難しい/綴りを間違えると減点される」と生徒は言う。教師は生徒が書いた英文にもっと真っ向から向き合ってコメントを書き、必要に応じて訂正し、生徒に寄り添う指導が必要だと述べている。
 関口氏は修学旅行で「外国人にインタビューをしてピース・メッセージを渡そう!」と「インタビュー・シミュレーション練習」を行ったり、「友だちにお守りを作ろう!」の実践をしたり、埼玉の田中渡氏の「恋の一行詩」の追実践実践を報告して、中学生の作品を紹介した。
 田中渡氏はグループライティング、ドラマ作り、キャンペーンビデオ作りなどの実践を中心に報告した。彼はいつも教科通信を作り、英字新聞や他の資料を使って、生徒たちに現代の問題を投げかけて考えさせる授業を行ったいる。そういう総合的な英語の授業の中での自己表現であり、学習集団である。指田氏は小先生の授業で、グループで予習をさせ、授業をさせて学習集団としての質的な向上を目指している実践を報告した。

 最後に大会全体の様子と特徴について田中から報告した。
 参加者は約400名に上り、40回大会にふさわしい密度の高い研究会になった。楽しく厳かでもあった「歌でつづる新英研大会の40年」を中心とする開会式、閉会式。前泊の夜の新英研講座でそれぞれの講師の持ち味を出したワークショップやお話、鳥飼玖美子氏の記念講演も今問題になっている英語教員の研修に関して、TOEFLやTOEICの点数を持ち込むことへのいい加減さを指摘し、研修とはそもそも個人の自由を保障したものであるべきだという主張に共感が得られた。
 最終日のテーマ別分科会ではワークショップも交えた様々な交流、研究が行われた。私は「聴覚障害者向け教材(アメリカ手話)の紹介」の世話人だったが講師の松藤みどり先生の熱心な準備とノート型パソコンを10数台揃えての会場で参加者が実際に自分で手話の動画を見ながら学ぶことができて、聴覚障害をもつ子どもたちの指導や今後のボランティア活動にもきっと役立つだろうと思った。
 おわりの集いでの山形の富樫和子さんのALTと地域を巻き込んでの実践報告のスケールの大きさには参加者一同、新英研の教師のエネルギーと実行力と創造性の高さに改めて感動した。

(文責:田中安行)
(連絡先:加藤千泉)
(2003年9月14日)