■ 長崎県高校教育研究集会報告
2003年11月
2003年
 長崎県の高校では以下のような研究集会が開かれました。主催は高校の教職員組合ですが教育基本法にかかわる内容、教科別分科会での実践報告を含んでいますので報告します。日時は11月8日(全体会・特別分科会)11月9日(教科別分科会)でした。

1日目

 まず11月8日には小森陽一東大教授による講演「教育基本法が変われば教育はどうなるか」を聞きました。
 今、目論まれている教育基本法改正の真のねらいをわかりやすく、豊富な実例と共に語っていただきました。巨大資本の利潤追求の鉾先が軍需産業に向いていること、そのため憲法第9条を「改正」したいのだが、国民的な思潮の改変が必要なので、教育現場をその「洗脳」の道具としようとしているということ等でした。

 背筋が寒くなると同時に、昨今のいろいろな現象が結び合わされて、目の前がパッと開けるような爽快感を感じました。講演終了と同時に質問した私に、ていねいに答えて下さいました。質問は、最近私の周辺で起こっている事例や、今後に向けての心構え等でしたが、答えの要点は2つありました。 「行政側の動きに対して、先手を打つ交渉の姿勢が必要。」
「一部が突出してはつぶされるので、連帯することが必要。」ということでした。

とても参考になりました。

2日目

 2日目、外国語分科会では共同研究者を含め11人の参加がありました。高教組外から、緒方先生(中学校)においでいただき、討論が深まりました。
レポートは5本。
  1. 緒方先生(川棚中学校)「中学校の現場で起こっていること」
     少人数授業の弊害と、「いわゆる絶対評価」による職場内の混乱、さらに小学校英語の影響が将来的に懸念されていること。

  2. 山賀先生(五島高校定時)「効果的な授業の方法」
     離島の定時制というハードな環境の中で、学力定着に向けた、地道な取り組み。「音読する(+自分の耳で聞く)」「書く(+自分で読む)」という作業を繰り返すことが、学力定着に有効だという学説に基づき、授業の中でできるだけ取り入れるようにして、少しずつ効果を上げている報告でした。

  3. 鈴木(長崎工業高校定時)「わかるから楽しいと言われる授業をめざして」
     2単位、2年間のみという少ない時間の中での取り組み。語彙力向上(+遊び心)のため、毎時間小テスト(賞品あり)を実施していること。教材に歌を使用していることなど。

  4. 小田先生(諫早商業高)「カウンセリングマインドを生かした英語の授業」
     ユングの学説や、インプット理論を生かした、生徒の心に働きかける多彩な実践。歌や映画をたくさん見せ、マラソンプリントにより、たくさん魅力的な読み物に接することで、生徒たちの学力向上にもつながったという報告です。

  5. 志水先生(九州大学助教授)「大学改変によるカリキュラムの変化」
     大学の独立法人化により、大学内部の教育内容など大幅に変更が見られること。教育改革の流れの中で、全て「数値化」という危険な兆候が進んでいることの報告。中・高も含め、この中で、いかに教育の質を維持し、内容のある教育を行うべきか、討論が進みました。
     また、長崎では来年から行われる英語教師の「全員研修」に向け、全員アンケートなどによる積極的な提言が必要と言う点では意見が一致しました。

(連絡先:鈴木奈尾子)
(2004年2月14日)