■ 神奈川支部春の一日研修会報告
(1)(高校)
「高校生の知的欲求に応えるオーラルコミュニケーションの授業」
(萩原一郎先生・白山高)
3月まで教えていた前任校・港北高校での10年間の集大成を発表していただきました。
前期数年は試行錯誤でしたが、後期4年は、生徒の授業の様子やアンケート結果などから、使える教材がいくつか固定化されてきて年間シラバスの作成ができるようになりました。
文化祭での英語劇上演(昨年11月例会で発表)に向けての取り組みが年間の授業の核になり、その他に、リスニングにビデオ(Only in America〔Oxford〕)を利用して、ペアワークやstory tellingに結びつけたり、AETの作った教材を投げ込みで入れていきました。年間の活動の柱をdrama/ speech/ discussion,debate/story telling/othersの5つに分類して、様々な活動で英語を話すことに慣れることを目標にしました。
dramaでは感情を込めた表現発表を通して声を出す楽しさを。
speechでは個人的な話題から自分の意見を言えるように。
discussion,
debateでは賛成/反対の表示と理由づけから意見交換、debateのまねごとへ。
story tellingではビデオテキストを使っての日常的練習から様々な写真を使ってのstory makingへ。
othersでは、「言えてから、書ける」が大切ということで、例えば、日本固有のものを英語で言う(言い換えの手法Circumlocution)+書いてまとめる活動へ繋げたり、AETだけが内容チェックする日誌のやりとり、TVコマーシャルを考えてビデオ撮りにも取り組みました。
具体的なプリントをいくつか用意して下さって、参加者でペアワークなど様々なactivitiesを楽しみました。参加者からは、"10年間積み上げた成果の豊かさを感じた。""順序立てた取り組みで生徒たちの達成感が得られていた。"という感想が聞かれました。
(2)(中学)「英語教育は人間教育だ」
―「実践的コミュニケーション」を乗り越える―
(玉木由美先生・江戸川区立瑞江第三中)
1月の関ブロでの感動的なレポートを是非もう一度ということで、東京から玉木先生をおよびしました。
昨年赴任先で2年の担任になったが、その学年は1年次に、ある教師の体罰がもとで信頼関係が崩れて以来、授業が不成立で、学年崩壊状態であったとのこと。教師への暴言・暴力、破壊行為が横行し、緊急保護者会、保護者による校内パトロール、授業参観などの取り組みもあったが、2年で担任は総入れ替え(全員新しく着任した先生)。
引継で会った前任者の言葉に生徒への心が感じられずショックを受けた玉木先生は、「生徒に愛情をかけなくては。生徒の心を大切にしたいな。」と実感したそうです。
玉木先生の考える「人間教育」を支える英語教育の3本柱とは、
- 相手を大切に、自分を大切にする心を養う:流されない自分を持つ/友人が何を考えているか聞く、尊重する。
- 考える力を持たせる:語る内容を大切にする。「言いたいことなんてない」という子は、実は何かを望んでいるはず。とことんつきあい、自分の心と対話させる。
- やはり基礎、基本を大切に:継続的に授業でおさえていく。
そこで、最初の授業のアンケートの中で、どんな授業をめざしているかをはっきりと生徒に知らせることから始めました。
日常の工夫としては、暗唱コンテストやゲームなどでのスペシャルスタンプ、Speaking Marathon(3分BGMをかけている間に練習、1分で暗記したところを言う)、Word Marathon(BGMをかけている間に単語5回ずつ練習)(marathonの取り組みは休み時間、放課後の再テストもOK)、英語の歌、ゲームなど。
更に教科書の内容に沿って毎月様々な活動を入れていきました。暗唱コンテスト(目標をはっきりと設定、和訳つき、発音カタカナ振りで取り組みやすく、達成感を持たせた。)・和英辞典を使って英文日記作り・映画『コロンブス1492』鑑賞・環境問題すごろく・スピーチコンテストMy Dream・5行詩・ALTとのスキットコンテストやスピーキングテスト・クラス全員で紙芝居作り。
1年生の時に全然できなかったガキ大将の生徒が2年の最後には94点もとり、「英語の授業中にいろいろな活動があって、遊べなくなってしまった。そんな先生に花マルをあげます。」とテストの感想に書いてくれたというお話を伺って、参加者一同、じーんときてしまいました。
「真実は必ず通じる」という信念を貫いて、愛情深く接していった玉木先生はまさにmiracle makerだという表現がぴったりだと思いました。
(連絡先:中村康雄)