■ 2002年北信越ブロック集会

2002年1月

 1月4(金)-5(土)に新潟県長岡市員互助会館「アトリウム長岡」で北信越ブロック集会を開催した。テーマは「真のコミュニケーションをめざして---教科書の創造的扱いを通して」で、新潟・富山・石川・長野県より16名(中学5名、高校6名、その他5名)の参加があった。

記念講演

 最初に神奈川からお呼びした棚谷孝子先生(神奈川県平塚市立山城中学校・新英研中央常任委員)から「みんなで作る元気の出る授業」という記念講演をしていただいた。

 「英語の授業で困っていること」に対する2年生のアンケート結果を紹介いただきながら、生徒の動きと変化が手にとるように分かる実践報告であった。授業で用いる教材や技術の多様さと同時に、生徒の心をがっちりと捉える棚谷先生の思い、生徒観・人間観が短時間の発表であったが描き出された。
自らを「クズばか」と呼ぶ生徒、グループになるのを拒む生徒などを受容した上で、ペアワークを組織し、生徒間に認め合う関係を構築する自己表現の授業を展開し、英語劇に取り組み、「奇跡の人」の感動教材を扱った。テストで記名しかしない女子生徒が歌の授業に心を動かし、問題に答えたと言ったエピソードなどなど生徒一人一人とコミュニケーションを成立させ人間関係を切り結ぶ様子が授業を通して見えてくる実践報告となった。
まさにテーマどおり、生徒がみんなで作る、元気のあるクラス・英語授業を作り出されている様子に参加者一同元気を頂戴できたように思う。

 以下その他のレポート発表。

レポート発表

(1)「真のコミュニケーションをめざして(日頃の取り組みより)
   中川馨先生(富山県高岡市立戸出中学校)
 ペア学習を主体とした授業実践。既習プログラムの復習(ウォーミングアップ)、歌、音読の工夫、クラスルームイングリッシュの多用、「一日1ページノート」などを取り入れた。ペアリーダーを中心として生徒の心の中のバリアーを取り除きながら発言の基礎作りを育てている。
 ペア学習を通じ、自分だけでなくペアに対しても責任を感じ、ペアリーダーがペアに対して丁寧に発音や単語の意味を教え、練習する姿が見られる。なかなか書くことができない生徒でもペアと共に生き生きと読む練習をする姿が見られ一歩一歩、コミュニケーション能力が高まっている。
 議論となったのは、ペアを組む期間を1年間と長期にすることはどうか、ペアを3,4人グループと発展させることはクラス内での人間関係を作り上げる上でどうかなどであった。

(2)「コミュニケーション活動」
   板谷外良先生(石川県門前町七浦中学校)
 七浦(ひつら)中学校は1年3名、2年6名、3年3名、全校で12名の中学で2003年に廃校になる。人口の過疎化に伴い、地域の7つの中学校を1校に統合する予定がある。
 地域の3中学校が英語交流会を毎年開催してきた。過去には生徒の英語スピーチ発表を中心に行ってきたが、現在は英語のスキットを作り発表している。教科書New Horizonの囲み教材のダイアログを発展させる形で生徒たちがスキットを完成させた。
 無味乾燥なダイアログが多い中で一つ味付けをする工夫を紹介された。Shoppingの場面では、買うものをリサイクルできるのか、1番欲しい物以外はどんな理由で買わないのか考えさせるなど基準の設定を生徒たちに投げかけると言うことであった。
 読み物教材が少ない中で、投げ込み教材としてHelen Kellerの教材の魅力を語られた。

(3)「VISAS THAT SAVED 6000 LIVES---読み取りをどう深めるか・・授業プリントの工夫」
   内堀 守(長野県中野実業高校)
 読み取りを深めるために、ビデオ、プリント教材を用いた授業実践。
 ビデオはReading Strategyとして授業の導入部で視聴し、教科書の読解に役立てようとした。授業プリントは教科書のパートごとに異なった形式で発問し生徒の読解の助けとなるように作成した。
 指摘を受けたのは、読解にかける時間が長く、読み取りの山場が見えず生徒の集中力が最後の場面まで続かなかったことに対する改善方法はどうあるべきか。読み取りのプリントは事実確認の問題が多く登場する人々の感情にかかわる語句の読み取りが弱い点がある。
 読み取り終了後の感想を日本語で書かせたが英語の力となっているのかどうか、英語での感想作りが必要だったかなど議論となった。
 また、補助プリントやビデオは資料として客観性を持つものか、提示する教員側の深い認識が必要になると言う指摘を受けた。
 今後この教材を扱うには「9・11テロ」との関連も触れる必要が出てきている、日本の果たすべき貢献はどうあるべきかを考えさせる必要もあると言った指摘も受けた。
と き: 2002年1月4日(金)13時〜5日(土)12時
ところ: 新潟県教職員互助会館「アトリウム長岡」
(長岡市弓町1丁目62番、JR長岡駅東口から徒歩10分)
電話0258-30-1250
テーマ: 真のコミュニケーションをめざして〜「実践的」コミュニケーションを越える
内 容: 記念実践報告:「創造的な教科書の取り扱い」
棚谷孝子先生(平塚市立山城中学校:新英研中央常任委員)
新潟・長野・富山・石川各県の中学・高校からレポートを持ち寄り研究・討論

(連絡先:内堀守 2002年2月16日)